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憑かれた出張オムニバス版

長編24
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憑かれた出張オムニバス版

憑かれた出張①

北海道旭川在住です。

これは10年前のお盆時期の出来事です。

当時私は、2t箱車のトラックドライバーをしておりました。

道東担当で毎週1泊2日で決まったルートを走るルートセールスってやつです。

17時頃、帯広での仕事を終え、私は釧路の常宿に向かい車を走らせていました。

朝から重かった空がとうとう泣き出し霧雨に近い雨模様の中、

ちょうど帯広と釧路の中間地点辺りに差し掛かりました。

季節は夏ですから、夕方とはいえ普段は明るく走りやすい道路なのですが、この日はあいにくの雨・・・・

更に道東特有のジトっとした霧が立ち込めていました。

「そろそろアソコだな」

前の週に事故のあった場所です。

もう何年も同じルートを走っているので、知らず知らずの内にそういう場所が、頭にインプットされていました。

前の週にソコを通った時は、道路脇の草むらに車が突っ込んだ跡があり

道端には、缶ビールと花が手向けてありました。

正に当日、もしくは前日に事故った現場といった感じです。

私はそういう場所に出くわすと(花が手向けられている場所)運転しながら

無意識の内に軽く会釈をしてしまいます。

その行為がいけないのかもしれません。

その日も軽く会釈をして宿に向かったことを覚えています。

さて、前の週のこともあり、ついつい意識をしながらその場所を通り過ぎた

私は若干の違和感を感じました。

それは、供え物や花が散乱し親族の方々がその後顔を出していない感じがしたからです。

「かわいそうになぁ」

私はついつい思ったことを口に出してつぶやきました。

その瞬間、車内の空気がググっと重くなるのを感じます。

「あっ!この感じはまずい・・・・」

普段から霊感のある私は、何も起こらない事を心から願いましたが

何気に見たルームミラーに、初老のおじさんが映っていました。

勿論、車内には私しかいませんし、トラックは箱車ですから

ルームミラーに、私以外が映り込むことなど有り得ません。

「あちゃー!連れて来ちゃった…」

と一瞬思いましたが、そのおじさんは別段血が流れている訳でもなく、

全くオドロオドロしさを感じなかったので

「自分には何もしてあげられないから勘弁して」と告げて無視することにしました。

おじさんは「スっ」とミラーから消えましたが

肩にはズッシリと重たい感じが残っていました。

仕事の疲れと予想していなかった霊体験で

とにかく早く宿に着きたかった私は、釧路に向けて車を走らせます。

辺りもすっかり暗くなり、右側に太平洋を臨みながら釧路の街の灯りが見える頃には

車内の淀んだ空気も、肩の重みの無くなり

「やっと諦めて帰ったか」

と思っていました。

20時頃、釧路市内に入り宿に向かっていたのですが「おじさん」から開放された安堵感からか

気が大きくなり、スロットを閉店まで打ってから宿に向かいました。

7万程勝ったので、美味しいものでもと思ったのですが、時間も遅かったので

宿の隣のセイコーマートで、一番高いお弁当と

500のビールを2缶、おつまみバスケットを買って宿へ。

この宿は、市内にありながら建物も古く決して綺麗とは言えませんが

素泊まりの値段がべらぼうに安いので、常宿にしていました。

よく工事関係者が長期滞在で利用するような宿です。

夫婦で営んでいますが、大学生の綺麗な娘さんとおばあちゃんが1人同居していて

誰もいなくなった食堂で、娘さんが教科書を広げながらレポートをまとめている姿と

おばあちゃんが信心深いのか、常に線香の香りが漂う様な超アットホームな宿でした。

さて夜食も買い夕方の忌まわしい記憶も忘れ、宿の戸をガラガラっと開けます。

時間も遅かったので、宿の電気は全消灯で暗く外の街灯が若干玄関を照らしていました。

いつもよりキツイ線香の香りが鼻を突きます。

「お盆時期だし、おばあちゃんいる家はこんなもんだ」

などと勝手に解釈し、靴を脱ぎ頭を上げた瞬間!

目の前に、和服姿のおばあちゃんが立っていました。

(宿のおばあちゃんでは無いおばあちゃん)

正確には、格子のガラス引き戸の向こう側

食堂にあたる所で、身体の廻りを綿アメで縁取りした様なルックスは

一目でこの世の者では無いことが理解出来ます。

「おじさんの次はおばあさんかよ~」

当然そう思いましたが、ここは無視!

何も見なかったことにして、決まっている自分の部屋に向かいました。

飯の前に風呂に入りたかったので、食堂の前は通りたくなかったのですが風呂に向かいました。

その時には既におばあさんの姿は無く一安心。

部屋に戻りビールを飲みながら今日あったことを考えていましたが「おじさん」も「おばあさん」も全く知らない人だったし何も語ってくれない。

生きている他人の考えていることも判らないのに死んでいる者の思いなど判るはずも無い!

という結論に達し、布団に入り電気を消しました。

ちょっとウトウトし始めた頃、「ピキッ、ピキピキピキッ!」建物が軋む様な音がします。

「マジかよ~」

これは私の金縛り前の合図・・・・・

安の序、次の瞬間・・・・

いつも目だけは動くので、暗い部屋の中に目を凝らすと

足元の部屋の右角に夕方のおじさんが、座っていました。

暗いのにはっきり判るのが不思議です。

「だから・・・俺に憑いて来ても何もしてあげられないよ!」

私は心の中でそう言うと、眠気と普段からの金縛り慣れからかそのまま朝まで寝てしまいました。

翌朝、外は打って変わってのピーカン天気!

昨日のことは昨日のこととして気分も新たにトラックに乗り込み何事も無く

釧路の営業を終え後は、旭川に帰るだけです。

釧路を出たのは18時頃で22時には旭川に到着予定です。

帰り道は寄る所も無いので、いつも大雪山を横切る最短ルートで帰ります。

このルートでの逸話も多々あるのですが、それは追々・・・・

釧路を出て左側に太平洋を望みながら軽快に走っていると

何やらまた怪しげな胸騒ぎがジワジワと湧き出てきました。

海を背に山側に進路を取った辺りからまた車内の空気が淀み始めました。。。。。

「また来るな・・・・」

そう思った瞬間、またミラーにおじさんが現れ何かを喋っていますが聞き取れません。

「何を言ってるの?」

私は言葉に出して聞きました。

すると・・・・・

「・・・・・伝えて欲しい」

確かにそう聞こえました・・・・

私のすぐ耳元で・・・・

吐息すら感じます。。。。

その後運転しながら話を聞くと・・・・

事故の後、救急車で運ばれたおじさんは病院で家族と対面しそこで死亡が確認された為に

事故現場には、初回に職場の人が来てくれただけで、その後は誰も来てくれず悲しいこと。

そして、事故が直接の死因ではなく、心筋梗塞により意識を失い路外逸脱、そのまま病死し

自分はまだ事故現場にいること。

なるほど!

だからつい「かわいそうに」とつぶやいてしまった私に助けを求めてきたのか!

とは思いましたがそれは正直筋違いな話!

私は、今言ったことを私ではなく親族に直接伝えることを強く勧めました。

親族や生前の知り合いに一人くらいは「判る」方がいると考えたからです。

要は「俺のところじゃなくて知ってる人の所に出ろ!」とww

そんなやり取りをしている内に旭川に到着しました。

おじさんは、私に負ぶさる様な格好で憑いています。

あっという間の4時間弱でしたが、事情が事情だけに会社へ寄ることも出来ず、携帯で直帰することを伝え、

家で待つ嫁さんにも「玄関に塩」と酒を準備しておくように伝えました。

嫁さんも慣れたもので「ハイハイ」と言ってましたw

家にトラックを横付けし酒を一口含みました。

その瞬間、おじさんが私から離れていくのを感じます。

そしておじさんの気配が完全に消えてから自分に塩をふりかけ

一応家の四隅とトラックに盛り塩をして家に入りました。

「どーしたのそれ!」

嫁が私の首廻りを指差し言います。

Yシャツの首廻りと言いますか丁度人を負ぶった時に腕が廻る部分がべチャべチャに濡れていました。

嫁が一言!

「これって他のモノと一緒に洗ってもイイの?」

私は笑いながら「ああw」と答えた。

次の週、私はおじさんの死んだ現場に車を停めた。

沢山の花やお供え物が綺麗に並んでいる。

「やれば出来るしょ!おじさん」

私はまた独り言を言いながら線香に火を点ける。

お盆をチョット過ぎた晩夏の夕方・・・

事故現場とは思えないほど澄んだ空気と

清々しい風が流れていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

憑かれた出張②

これは10年前の11月雪がちらほらと降り始めた頃の話です。

当時私は2t箱車のトラックドライバーをしておりました。

道東担当で毎週1泊2日で決まったルートを走るルートセールスってやつです。

1日目の帯広、2日目の釧路と何事も無くルート営業を終えて夕方、旭川に向け走り出しました。

道東の帯広・釧路は北海道では雪が少ない方で初冬の11月は殆ど雪に当ることはありませんが

私の住む旭川は道内でも有数の豪雪地帯・・・

出張の帰りは最短ルートの大雪山を越える道で帰っていたので来た道とは違い

山に近づくにつれ雪が降り出し走るほどにその降り方も激しさを増していきました。

これでも道産子のはしくれトラッカーです。

多少の吹雪位は何てこと無いのですがシーズン初めの雪と言うこともあり慎重に車を走らせていました。

デフロスターを効かせていたせいか車内が暖かく眠気が襲います。

窓を開けて換気をしたり一人なのをイイことに大声で歌ってみたりして眠気と戦いましたが

結局勝つことは出来ず仮眠を取る事にした私は2Km程先にある○又という地区にある

「青少年研修センター」(正式名称は不明)みたいな所の駐車場を目指しました。

良く小中高生が宿泊研修等で使うアレです。

駐車場にはコカ・コーラの赤い自動販売機と緑色に怪しく浮かぶ電話BOXがあることを

毎週走る私は知っていたので「とりあえず着いたらエメマンと仮眠取るから

直帰するって会社に電話だな」などと考えていました。

携帯は持っていましたが何せ当時の北海道では人里離れた山の中はすぐ圏外だったので・・・・

その「○又」っていう所はその昔は炭鉱で栄えていましたが閉山後は

一気に過疎化が進み住民は数える程、実際に研修センターの前後3Km位は民家も無い地区です。

更に裏道的な要素満開の山道ですので夜になると車も殆ど走りません。

駐車場に着き会社に電話をして温かい缶コーヒーを買った私は寒くて走って車に戻りました。

車内はデフロスターのお陰で暖かく缶コーヒーの温かさが何故か更なる眠気を誘いました。

横になりどれ位の時間が経ったのでしょう。

多分、10~15分位の仮眠だったと思いますが

大型トラックが走り抜けた音で「ビクッ」となって目が覚めました。

トラック乗りなら理解してくれると思いますが車内での仮眠中って外の車の音に

過敏に反応してあたかも居眠り運転をしていたかの様な

錯覚に陥り慌ててブレーキを踏む右足に力が入ることがありますよねw

正にアレですw

ところが「ビクッ」と力が入った瞬間に目は覚めているのに身体が動きません!

いきなりの金縛りです。

いつも目だけは動くので辺りを見渡しました。

3方の窓が全て真っ黒で街灯の光も降っている筈の雪も見えません。

何だか寒いと思ったら、掛けていた筈のエンジンも止まっています。

「これはちょっとヤバくないかぁ」

そう思った瞬間、真っ黒なフロントガラス

に肩から上の人の姿が一つ・・・また一つ・・・ドンドン増えていきます。

老若男女様々な人たち・・・

正確に数えてはいませんがフロントと左右の視界に入るガラスには20体以上の姿が見て取れました。

そして皆、無言無表情のまま右手で手招きをしているのです。

全ての目線と目が合い逃げ場も無い私は目を閉じ心の中で必死にお経を唱えました。

お経といってもただ「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」

と・・・

暫くするとセルも回らず突然エンジンが掛かりました。

それと同時に金縛りも解け「助かったぁ~~~」と思い身体を起しました。

しかし彼らはまだソコにいて私を悲しそうな目で見ています。

手招きはもうしていませんでした。

「一体何なんだよぉ~~~」と硬直していると・・・・

「ごおぉぉぉぉ~~~」「ガラガラガラガラガラ」「ゴトンゴトンゴトンゴトン」

地響きのような何かが崩れるようなそんな大きな音が頭の中で響き渡り

それとほぼ同時に彼らの悲鳴やうめき声が耳や頭の中、体中に響き渡りました。

しかしそれは一瞬の出来事で声は徐々に小さくなっていきそれにリンクして

彼らもまた小さくなって雪の中へ消えていきました。

私は速攻で車を駐車場から出し旭川に向けて走り出しました。

もう眠気など微塵もありませんでした。

私は毎週その場所を通ってはいましたがその地で過去に何が起きたのかなんて判りません。

そんな私に彼らは何を言いたかったのかは今となっては知る術もありませんが・・・・

私の色んな霊体験の中で「恐怖」を一番感じた出来事でした。

やっと携帯の圏内に入り嫁に電話を入れました。

私「玄関に塩なぁ」

嫁「はいは~い」

こんな会話をもう25年やっております。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

憑かれた出張③

これは9年前の8月中旬頃の話です。

当時私は2t箱車のトラックドライバーをしておりました。

道東担当で毎週1泊2日の決まったルートを走るルートセールスってやつです。

いつもの様に営業を終え旭川に向けて帰っている途中の話なのですが・・・・

釧路から旭川に抜ける大雪山越えの最短ルートの途中に糠○という寂れた温泉街がありまして

すぐ側に糠○湖というダム湖があります。

この一帯は道内でも有数のマニアックな場所として一部の同胞たちの間では聖地の様な地区なのです。

ダムや古い温泉街にまつわる心霊話、廃墟、廃鉄道などなど話題は尽きません。

その日も時刻は21時頃、温泉街を抜け○国峠に向かう三叉路を右折します。

駆け込みのお盆参りなのか20代の若い男女5人がその三叉路で

花やジュース・缶ビール・お菓子などを手向けている姿がヘッドライトに写り見えます。

多分友達でも事故で亡くなったのでしょう。

8月中頃とはいえココは大雪山の上り口なので夜になれば息が白くなるほど気温が下がります。

若者たちもパーカーや薄手のジャンパーなどを身に着けておりました。

「なんもこんな時間にやんなくてもいいの

になぁ~」

私はそう思いながら峠に向けて走ります。

若者たちに会ってから丁度2Kmほど走った直線道路で100m位先に人影を見つけました。

夜の山道ですからHiビームにしていた私はその人影に何故か釘付けです。

近づくにつれてその人影は白いランニングに光沢のある白いパンツを身に着け

ランニングをしている男性であることが判りました。

私と同じ進行方向で街灯一つ無い暗闇の中を温泉街から走ってきたのでしょう。

一見、場違いのように思うかもしれませんがこの温泉街は

夏冬通してスポーツ系の学生達の合宿地として

利用されていたのでその時は不思議には思いませんでしたし走っている後姿は

変な話ですが人間そのものでした。

トラックなどの大きな車に乗る人は判って頂けると思いますが歩道も無い道で

歩行者を追い抜く時ってサイドミラーで一応確認しますよね。

私も抜いた瞬間サイドミラーで確認をしたんです。

・・・・・・・・いないんです。

今抜いた筈の彼が・・・・・・

100mも先から目視している人が消えたんです。

私は「あれ?巻き込んだ?」と思いすぐに車を停めて後方に向かいます。

「大丈夫か~~~い?」

返事はありません。

追い抜いた地点まで確認に戻り道路脇まで探しましたがいません。

一応、車の下まで探しましたがいないんです。

わき道などもある筈も無く・・・・・・

「くっくっくっくっくっ」(笑いを堪えているような声)

山の冷え込みも手伝ってか急に鳥肌が体中

に「ブヮ~~~!」と走りました。

「くはっはっはっはっはっ」

どこからと言う訳でもなく山全体から聞こえて来る笑い声が響きます。

私が走って車に乗り込む時には

「はひ~ひっひっひっひっひっひっ」

狂った様な叫び声に変わっていました。

逃げるように其の場を立ち去りましたが曰く憑きの峠道をひたすら走り

層雲峡の灯りが見えるまで生きた心地がしませんでした。

携帯を取り出し嫁に電話しました。

「玄関に塩なぁ~」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

憑かれた出張④

北海道旭川在住です。

これは10年前秋口の出来事です。

当時私は2t箱車のトラックドライバーをしておりました。

道東担当で毎週1泊2日で決まったルートを走るルートセールスってやつです。

道央の日帰りコースを担当していた同僚が退社した為に私が担当することになりました。

この路線は毎週土曜日の定期便で次の日は休みだし荷物も少ないのでハイエースで廻る楽なコースなんです。

毎回朝から日高吾郎ショーを聞きながらドライブ気分での営業でした。

毎回同じルートで走っていたのですが、その日はいつもの道が通行止めになり大渋滞!

どうやら事故の様で遥か前方に煙が上がり消防車・救急車・パトカーが見えます。

「これはしばらく動かないなぁ~」と思いUターンをして違う道から向かうことにしましたが考えることは皆同じで回り道も動いてはいますが渋滞しており抜けるまでに大変な時間が掛かってしまいました。

いつもより遅くなりお客さんも皆心配しておりましたが事故のことで良い話題が出来て各得意先で話してまわりました。

とりあえず営業を終えいつもよりかなり遅れて旭川に戻っておりました。

カーラジオはAMからFMに変えサントリーサタディウェイティングバーAVANTIが流れており

「もうこんな時間かぁ~」

などと思いながら走っておりましたが朝の事故が気になっていたので野次馬根性丸出しで事故現場に向かっておりました。

事故現場に近づくにつれ「この路線事故発!!」の看板が!!

最近廻り始めたルートなので

「あ~やっぱり事故多いんだなぁ~」

なんて考えていたら急に右肩が重くなって来ました。

右腕もしびれてきて右手は異常に冷たくなっているのが判り「何か嫌な感じだなぁ~」と思いながら事故現場に差し掛かり車両の炎上により焼け焦げたガードレールに目をやると・・・・・

焼け爛れた3体の人影が立っていました。

男性と女性それに子供とおぼしき人影・・・・・

「ああ・・・家族だな」と想像出来る光景です。

周りに車がいなかったこともあってたっぷりと徐行していた為にはっきりと目に焼きついてしまった私は「憑いて来ないでぇ~~~~」と思いながら車のスピードを上げました。

緩やかなカーブに差し掛かった時

「ズン」

と車内の空気が重くなりハンドルが動かなくなりました。

慌ててブレーキを踏もうとしても足が動きまん

目をやるとそこにはよく心霊体験の再現ドラマにある様な光景が・・・・・

ハンドルは焼け爛れた母と子の手に握られ私の両足は父親にしっかりと握られ膝の辺りに半透明の親子の顔が3つ・・・・

車はどんどん反対車線のガードレールに向かっています。ハンドルも足も全く動かず

「これはシャレにならん!」

と諦めかけていたら今度は車内に

「お前も死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね・・・・」と男性の声

それに混じって「あついあついあつい」と女性の声と「いたいいたいいたいよ~」と子供の声が聞こえます。

本当に再現ドラマとリンクした現実に

「駄目かも・・・」と思った時急に目の前が明るくなりました。

「はっ!」と我に返ると対向車がパッシングしながら走ってきます。

その瞬間ハンドルも足も動くようになり急ブレーキ&急ハンドルでガードレールに擦る様に止まりました。

多分3~4秒位の出来事だったと思います。

対向車は怒り半分、心配半分で降りてきましたが何かが見えたのでしょう!

私の車に手を掛けようとした所で血相を変えて車に戻り走り去っていきました。

私は少しの間、呆然としていましたが

「こういう時はこの後に死ねば良かったのにって聞こえるんだよなぁ~」なんて考えていましたがそれは聞こえませんでした。

気を取り直しそこからは安全運転で旭川に帰り次の週から営業ルートを大幅に変更し二度とその事故現場は通っていません。

その後もその現場では事故が多発しており地元の者は殆ど通りません。

そんなこともあり事故で亡くなるのは観光で訪れる様な何も知らない方々が多いんです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

憑かれた出張⑤

北海道旭川在住です。

これは11年前の夏の出来事です。

当時私は2t箱車のトラックドライバーをしておりました。

道東担当で毎週1泊2日の決まったルートを走るルートセールスってやつです。

その時の出張は帯広~釧路の他に中標津~根室を経由する為に2泊3日のルートでした。

このルートも月に2回廻ることになっていて2日目の常宿は中標津の温泉です。

肌がツルツルになる中標津の温泉は私にとって月に2回の楽しみでもありました。

料理も美味しく味気無いバイキングなどではなく、お膳で出てくる豪華版です。

私が入社する前からの常宿でしたので

毎回瓶ビールを2本サービスで出してくれるのが何とも嬉しかったです。

まあ、結局2本では足りないので追加してしまうのですが・・・・・

さて、いつもは中標津~根室を廻り15時には旭川に向けて走り出すのですが、

この時から新規の顧客が1件増えた為に中標津~別海経由で根室に向かいました。

新規先は皆さん良くご存知の「王国」で、

最近めっきり見かけなくなりましたが

動物と「よーしよしよし」と言いながら過剰に触れ合うおじさんの所です。

そのおかげで大分遠回りになってしまい根室の営業が終わったのは18時過ぎ・・・・

「今日中に帰れるべか・・・」などと考えながら旭川に向けて走り出しました。

実はこの時点で、あることに気づいていれば何の問題も無かったのですが・・・・

帰り道はいつもと同じルート

(憑かれた出張①~④参照)

ですので北海道の屋根と言われる大雪山越えです。

そして・・・・

三国峠を登り中腹に差し掛かった時に、想像もしていなかった、とんでもない事が起きてしまったのです。

時刻は23時頃だったと思います。

日中でも殆ど車の往来も無く峠を越える間は、

すれ違う車両の数よりも、出会う鹿の数の方が遥かに多い様な場所です。

夜中ともなれば1台の車両にも出会うことの無い事もあります。

辺りは真っ暗・・・・

常にベタ踏みで登っていたのですが、

突然の失速・・・

「プスン、プスン、プスン・・・」

「ガス欠」でした。

とりあえず道路の端にトラックを着け、10分程思案。

「近くに民家は無い」

「携帯は圏外」

「公衆電話は峠の登り口と頂上」

「最寄のスタンドは旭川まで無い」

そして決断しました。

峠の頂上まで歩くことを!

夜中となれば車も通らず、ましてや人など居る筈も無いのでハザードも挙げず歩き出しました。

真夏とはいえ標高1000mオーバーの峠道

夜ともなれば、気温はせいぜい15℃前後・・

会社のジャンバーを着込み、集金カバンを持って頂上を目指します。

頂上には、チョットした「道の駅」の様な設備があり

日中は喫茶店的なお店が開いていますが

(今も営業しているかは判りません)

夕方から車通りが、ほぼゼロになる為にトイレと公衆電話のみが使用出来ます。

どれだけの時間が掛かるのか見当も付かず歩いているのですが、当然のことながら真っ暗です。

深い谷になっている所が何箇所かあり、橋が架かっているのですが、

その部分だけに黄色い光を放つ水銀灯が設置されていて、

遠くに見えるその光を唯一の希望として進むのです。

幸い天気が良く雲ひとつ無い満天の星空でしたので

目が慣れてくるにつれ月の光だけでも十分明るく感じました。

30分ほど歩いた頃でしょうか?

上から1台の車が降りてきました。

「やった!ラッキー!助かった!」

私は喜び勇んで大きく手を振りアピールしましたが…

一度減速したにもかかわらず再加速し走り去ってしまいました。

「冷たい奴め!!!」

車が通ること自体が奇跡的な出来事だったのに・・・・・

多分チャンスはもう無いなぁ~と考えていると、何とまた1台の車が降りてきました。

今度こそ確実に停めなければなりません。

私は大きく手を振りながら道路の中央まで出ました。

運転手は相当びっくりしたのでしょう。

タイヤがロックするほどの急ブレーキで

「キキキィーーーーー!!」

というブレーキ音が夜の大雪山にこだましました。

そして、私を見るなりフル加速で逃げていきました。

正直なところ当然といえば当然の反応です。

こんな夜中に人が歩いている筈の無い場所で、

ヘッドライトに照らされたその場所に

大きく手を振った人が突然現れたらどう思うでしょう。

多分その運転手は家に帰り奥さんに話したと思います。

「実はさぁ~さっき見ちゃったんだよ」と・・・・・

なぜかこの日は奇跡が続きその後、もう1台の車が来たんです。

でもヤメておきました。

自力で登り切ることに決めたのです。

半分以上イジケ根性が入ってヤケクソでした。

20分程の間に3台もの車が通ったのにその後は1台の車も通りません。

「しーん」という音が聞こえるくらい静かな暗闇から時折「ガサッ!」と音がします。

目を凝らすと幾つもの目が「ギラギラ」とこちらを見ているのです。

さすがは北海道!

エゾ鹿達が珍客に対して興味深々の様です。

そして出発から約1時間が経過し、やっと一つ目の橋までやって来ました。

黄色い水銀灯は目に痛い位明るく文明の利器を感じずにはいられませんが

100m程の橋の向こうは、まるで黒い壁の様な闇の世界が待っています。

しかし、頂上付近に目をやれば黒い空間に黄色く浮かんだ様な橋が後2つ見えます。

既に1時間歩いてきた私にとっては気が遠くなるような距離ではありましたが・・・・

約40分後・・・・

2つ目の橋に到着!

砂漠のオアシスの様な光の下で、

少しだけ元気を貰い遠くに見える最後の黄色い光に向かい歩みも少し早くなります。

その橋を越えれば200m程で頂上なのです。

約30分後・・・・

やっと最後の橋が目の前に現れました。

しかし・・・・

何かおかしいのです。

はじめは標高が高い為だと思っていたのですが

最後の橋に近付くほどに、霧が立ち込め始め

気温が急激に下がったような感覚です。

そして極めつけは空間が歪んだ様に見えるのです。

対外そんな時は良くないことが起こります。

しかし目の前は黄色く光る明るい世界です。

私はエスケープする様に黄色い世界へ飛び込みました。

やはり明るく安心感が湧き出てきました。

橋のちょうど真ん中辺りに来たとき、何かが視界の隅に映りました。

無意識の内に目をやると橋の柵に

しっかりと掴まった「左手」がそこにありました。

背筋が「ゾクッ」として全身鳥肌です。

頂上に向かい急ごうとする気持ちとは裏腹に、

体はその「左手」の方へ引き寄せられていきます。

そして・・・・

柵から橋の下を覗き込む体勢になり

目が合ってしまったのです。

必死な形相で柵にしがみつく作業服姿の男性と・・・・・

更に男性は

「た・た・たすけてくれ!」

と私に懇願し右手を伸ばしてきます。

私はソレに吸い寄せられる様に手を伸ばし

右手をもとうとしました。

もう少しで掴める所で男性は力尽きたのか

小さな声で

「しにたくない・・・」

と言い残し暗闇の中へ落ちていきました。

三国峠の開通には大変長い年月と、多くの人命が犠牲になりました。

特に幾つもの谷を繋ぐ橋を架ける工事は

難所中の難所で高さ30m以上もある高所での工事が多く

何人かの工事関係者が落下し、命を落としたのでした。

正気に戻った私は頂上の公衆電話に走りました。

誰に電話しようか考えましたが…

同僚はもう寝ていると思い確実に起きている弟に電話しました。

私「もしもし、寝てた?」

弟「いや、起きてたよ!なした?」

私「ちょっと頼みあるんだけど・・・」

弟「金か?」

私「…違う!酒呑んでる?」

弟「いや」

私「迎えに来て」

弟「どこに?」

私「三国峠!」

弟「…はぁ⁉???何で???」

私「ガス欠」

弟「・・・・・・・・。」

私「ポリタンクに軽油入れて持ってきて」

弟「…しゃ~ね~なぁ~」「2時間位は掛かるぞ!」

私「いいよ・・・待ってるから・・・」

弟「なした⁉」

私「やばい・・・追っかけてきたみたいだわ」

弟「何が?熊⁉」

私「あほか!お前には見えないモノだよ!」

弟「まじか⁉」

私「頂上のトイレにいるから頼むぞ!」

と言って電話を切りトイレに駆け込みました。

電話の最中、ずっと

「たすけて・・・・」「たすけて・・・・」

と聞こえていたので間違いなく憑いて来ています。

その声は、ドンドンと近付いてきたので

私は急いでトイレの周りに結界を張り経を唱えます。

外が急に静かになりました。

経が効いたかな?と思った瞬間

「コンコン」

とトイレの外扉をノックする音が!

「あの~すみません・・・・・開けてください」

外扉には鍵などは付いていません。

ただ結界を張っただけなので、普通に入ることが出来るのです。

人間ならば・・・・・

「あの~すみません・・・・・開けてください」

「・・・・・・・。」

「開けてください」

「・・・・・・。」

「開けてよ」

「・・・・。」

「開けろよ」

「・・・・。」

「開けろ!」

「・・・・。」

「開けろ!開けろ!開けろ!開けろ!開けろ!」

いいかげん頭にきた私は

「うっせーよ!お前!黙って死んどけ!!!」

と叫びました!

「たすけてくれよ・・・」

私「無理だよ!」

「頼むよ・・・たすけてくれよ・・・・」

私「もう死んでんだって!助かんねーよ!」

「・・・・・・・それじゃ・・・・・代わってくれよ!」

思いもよらない言葉に凍りつきました!

「代われよ・・・・・代われぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

どの位、時間が経ったでしょう。

空が薄明かるくなり始めた頃

外で車も音がします。

「やっと来たかな?」と思った瞬間

「ちくしょう!・・・・・・帰りたい」

と泣き声が聞こえ、その数秒後、

弟がトイレのドアを開けて入ってきました。

「おまた~」

「遅いわ!」

弟の車に乗り込みトラックへ急ぎます。

ポリタンク2本分40Lの軽油を入れ

エンジンが掛かるのを見届けると

「んじゃ俺先帰るわ!」

と弟が帰って行きました。

早朝4時30分のことです。

帰り道・・・・

日が昇り安心したのか眠気が襲いましたが

一発で目が覚めました。

3つ目の橋を通ったときに見てしまったんです。

「左手」を!

私はアクセルを突き破る位おもいっきり踏んづけて走り続けました。

家に着いたのは朝7時・・・・・

下の子供が「おかあさんといっしょ」を見ていました。

私は既に玄関に出ていた「塩」を手に取り

全身に振り掛けながら「ただいま」と一言。

そしてそのまま一睡もせずに「いってきます」と出社したのでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

憑かれた出張⑥

バブルの頃の話です。

当時勤めていたデパートで新規オープン店舗を立ち上げる為に同僚10人で岩見沢に行きました。

その日は会社で準備した岩見沢市街の某ビジネスホテルに宿泊予定。

商品の搬入などで、クタクタになった私達は居酒屋で一杯やってからホテルへ。

ホテルに着いた瞬間!!

元々霊媒体質の私と霊感の強い同僚の女の子が顔を見合わせた。

「何かやばくない?」と彼女。

「うん・・・・・たくさん居るね・・・・」と私・・・

とりあえずチェックインを済ませた私達は部屋に向かうためエレベーターへ・・・・

そのエレベーター・・・縦長なんです。

そう・・・

元病院の証!!

そこからが大変!

私達は団体扱いで他に宿泊客の居ない階に泊まったのだが、まだ夜10時過ぎだというのに始まりました。。。。

建物がギシギシ鳴ったり廊下をパタパタ走る音、ドアをノックする音、笑い声、泣き声、うめき声ets・・・・

廊下をパタパタ走る音は霊感などまったく無い同僚達にも聞こえたらしく

注意しようとドアを開けてもそこには誰も居ないという定番的な霊現象を体験した奴も数人いて

みんな怖くなり私の部屋に集まってきた。

何だかんだと部屋の前で話していると・・・

斜め向かいの部屋のドアが静かに開き・・・

パジャマ姿の知らないオジサンが「何時だと思ってるの?静かにしなさい」と・・・

とっさに「あっ!すみません!」とは言ったものの私達しか居ない筈のフロアで知らないオジサンって???

更にパニックになった同僚達をとりあえず私の部屋に入れ、あまり言いたくはなかったが状況を説明した。

私の感じでは邪悪なモノは感じなかったので悪戯はあるかもしれないけれど

それも良い経験?だからと説明し、もしも怖かったら何人かづつ一緒の部屋で寝たらいいと

強制的に納得させて、一応各部屋を廻り結界を張って自分の部屋に戻った。

しかし・・・

霊感の強い女の子の部屋だけはかなり異様な感じで(たくさんの霊が既に棲みついてる感じ)仕方ないので「部屋代わろうか?」と言ったが大丈夫とのこと。

でもやっぱり駄目で・・・・

その女の子は5分もしないうちに荷物を持って私の部屋にやってきた。

「やっぱり駄目かい。」「んじゃ部屋代わってあげるよ」私が言うと、怖いので一緒にいてほしいとのこと。

・・・・・・・断る理由は無いよね!

そんなこんなで様々な現象は明け方まで続き・・・・

みんな一睡も出来ずに寝不足気味。

私も違う理由で寝不足気味だったことは言うまでも無いのだが・・・・

翌日の宿泊先はホテルをキャンセルして健康ランドで雑魚寝となりました。

                --以上--

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最後は微笑んでしまいましたね。何もないわけがない‼︎
同じ道産子なので何処かわかるから余計に怖い。ガス欠なんて本当に洒落にならんとです。霊もですが動物が怖い‼︎

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面白いです~ いろいろ聞かせて下さい。

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Andy兄 様
このシリーズ・・・
何だか懐かしさすら感じてしまいます。
憑かれた出張シリーズは私のなかでも特別な想いがありまして、このサイトに登録したのも憑かれた出張1を読んで面白いと感じたからでした。
繁忙期が終わった様なので更なる体験談に期待しております。

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「兄」が抜けてました(・_・; 失礼しました。

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andy様の投稿待ってましたぁ〜

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andy兄様 なまら怖かったですよ。 私は現役の運ちゃん(大型)で道内回ってるから、場所はピンとくるし、andy兄様の情景模写が上手く私の『恐い』スイッチを連打し続け、何度読んでもいいもんですね。andy兄様なら廃墟化した○○の円形校舎や○○炭鉱等の廃墟のお話をお聞かせ頂ければと・・・

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