ポケットピカチュウというものをご存知だろうか?
簡単に言うと万歩計とたまごっちを合体させた感じかな?
歩いた歩数、時間帯によって画面に映っているピカチュウがいろいろ違うアクションを起こす。
ミニゲームみたいなものもできて、今からすれば何をそんなはまってたのか分からない。
そのポケットピカチュウに関する不思議な体験の話。
これは僕が小学校低学年の時に実際に起きた不思議な出来事である。
確か夏休みだったと思う。
昼ごはんを祖母に呼ばれニ階にいた僕は階段を急いで下りていた。
我が家の階段は普通の階段と違い裏手にある。
なんでも昔酒屋だったとかでそんな作りになったらしい。
鉄筋で作られており、年季のためか滑りやすくなっていた。
「駆けて下りてこないこと」
「スリッパで降りてこないこと」
母親、祖母から口酸っぱく言われてた。
このことを当時の僕は両方守ってなかった。
もちろん守っていた日もあるが、正直靴で階段を登り下りするよりスリッパの方が断然楽。
まあその度に注意を受けて怒られていたんだけど…
その日も腹を空かした僕はスリッパに履き、当時、姉ちゃんから預かっていたポケットピカチュウ(初期)を首から下げ階段を駆け下りた。
ポケットピカチュウを操作しながら駆け下りたせいか、階段で滑ってしまった。
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shake
ガン、ガン、ガン、ガン
何段か頭を階段にぶつけ、一番下まで落ちてしまった。
この時、意識はあり手で後頭部を触るとねちょっとした。
手のひらをみた時、初めて死を恐怖したと思う。
それくらいの血の量が手のひらいっぱいに広がっていた。
不思議なことだが痛みはなかったように思う。
不意にポケットピカチュウが気になった。
ポケットピカチュウは落ちた時に首から取れてしまったらしく少し離れたところに転がっていた。
血のついていない方の手で拾い上げ見てみると、ピカチュウが天使の輪をつけて上に下にというアクションをしていた。
操作しながら降りていたときはミニゲームをしていたのに…
本当ならミニゲームの途中のはず…
それに…こんなアクションあったっけ…?
薄れてゆく意識の中、祖母が何事かと駆けつけてくれて、近くの病院に連れていかれた。
急患で運ばれ多分麻酔はしていたと思うんだけどかなり痛かった。
五針縫っただけらしいが相当暴れたらしい。
病院から帰って来てポケットピカチュウのことを思い出しポケットを探るとそこにあった。
でも画面は真っ黒。
おかしいなあ、電池切れたか?
そう思い電池を入れ替えてみたが結果は同じでした。
もう二度とそのポケットピカチュウが起動することはなかった。
そのあと当然ですが、姉ちゃんからはひどく怒られました。
その話を家族にしても「はいはい」と流されてしまい誰も相手にしてくれませんでした。
月日は流れてブームはさりいつの間にかそのポケットピカチュウもゴミに出されてしまい今はもう残ってないです。
あの時見たピカチュウは、僕の身代わりになってくれたのかと思うとなんとも胸にこみ上げて来る時があります。
完
作者酢物