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長編9
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幽霊の存在

あなたは幽霊の存在を信じるだろうか。

父に聞いてみた。

「なにを馬鹿なこと言ってんだ、いるわけないじゃないかそんなもの」

何を根拠に父は断言しているんだ?

そのあとに勉強云々言ってきたのでそそくさと退散。

母に聞いてみた。

「う~ん、どうかしらね?いたら怖いわねぇ~」

曖昧な返事だ。

でも父よりはだいぶマシか。

友人である岡田、西村、キンタに聞いてみた。

「いるよ、いるに決まってんだろ!怪奇現象とか実際に起きてるし」

「ああ、間違いない。幽霊は存在する!」

「お化けなんていないさ~そんなもの嘘さ~寝ぼけた人が~」

キンタは別として結構同年代には幽霊の存在を認めている者が多い。

中学生の言っていることなどで中二病と言ってしまえばおしまいなのだが。

現に頑なに信用してないものもいたりするわけだ。

そう言った人の多くは「堅物」と呼ばれ結構冗談とかでも通用しないんじゃないのだろうか。

うちの父がそうである。

母は多分信用してないんだろうがなんとかまあ信用している人の気持ちも考えてます的なのが感じられ、変に嫌な気分にはならない。

父のような真っ向から「自分の意見はこうだ!」と言うことも重要だろう。

だが、たわいもない話にそんなことは必要ない。

やんわりとできない、それが俺の父だ。

頑固親父ってセリフがぴったり合うな。

キンタの場合はあれはただの怖がりだ。

まあ信じてる信じてないって言えば・・・どっちなんだろ?

いないと思いつつもいたらいるような的な・・・

母に似たような感じかな?

前置きが長くなり申し訳ない。

本題に移ろう。

俺自身はどうか?と冒頭の質問を問われればこう答える。

「信じるよ。信じているさ。だって・・・」

ここから先は人には言えない。

言っても信じてもらえないし、信じてもらえる自身もない。

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きっかけは多分たまたまだったんだろう。

桐生峰治は中二の夏、岡田らと海水浴に来ていた海で溺れかけていた少女を助けようとした。

トイレから帰って来る途中に溺れている少女を見つけたのだ。

他の海水浴客は気づいていない。

ライフセーバーのお兄さんも気づいてないみたいだ。

今思えばかなり危険なことをしたと思う。

海で溺れている人を見かけたら泳ぎに自身があっても救助を呼ぶと保険体育で習った。

理由は救助に向かった人も帰らぬ人になってしまうからだと。

溺れた人はわらをもすがる勢いでもがいてくる。

その巻沿いを受けてしまうからと。

しかし実際そんなこと現場にいたら理性で動くっていうのだろうか。

体が反応していて気づいたら海の中に入っていた。

一直線に少女の下に向かう。

泳ぎに自身があったわけじゃない。

知っている少女だったわけでもない。

何かやましいことを考えていたわけでもなかった。

ー救う、助けてみせるー

これだけだった。

スイスイと泳ぎ、少女の下までたどり着いたは良かった。

そこからが問題だった。

情けないことにもがく少女をうまく落ち着かせることができなかった。

無理もない。

少女からしてみれば今、いつ何時死ぬか分からないのだ。

大の大人でも難しいと思う。

結果から言えば峰治自身も巻き込まれてしまった。

水を大量に飲んでしまいパニックになり意識を失った。

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気づくと病院だった。

寝かされていてうっすら目をあけた。

時刻は夕暮れ時なのか窓から夕日が顔を覗かせていた。

周りをみると父、母、岡田ら、ガタイのいい兄さん(多分ライフセーバー)がいた。

「よ、よかった~心配したんだから~」

母が抱きついてくる。

正直岡田らのまえでこういった真似はやめてほしい。

ほらみろ、何ニヤニヤしてんだ岡田!

先生がまもなく来た。

父が呼びにいったらしい。

先生は聴診器で体のあちこちを触った。

「特に異常はないようですな。よくまあ無事で・・・運が良かったですね。溺れているところライフセイバーの西崎さんが見つけて救助してくらなかったら危なかったんですよ?」

西崎さんにお礼を言おうとしたが、その時何か違和感に気づいた。

「いいですよ。ほら・・・元気になってくれてることですし・・・」

母が「ありがとう、ございました」と涙ながらにお辞儀している。

お礼を言うタイミングを完全に母に取られてしまった。

なんともいたたまれない気持ちになった。

「そうだ!女の子、あの女の子は?」

違和感の正体に気付き思わず口にしてしまった。

俺がこうして救助されたんだ。あの女の子も・・・

俺のいきなり喋ったことに周りは驚いていた。

「女の子・・・?さて?救助されたのは君だけだよ。いったい何を?」

岡田らもキョトンとしている。

西崎さんは顔が固まっていた。

意味が・・・わからなかった。

俺は溺れている女の子を助けようとして海に飛び込んだのに。

混乱している俺に告げられたのはあまりにも現実感がわかなかった。

あの時、俺は岡田らと離れトイレに向かった。

ここまではあっている。

その後、海に入りどんどん深いところまで泳いでいく俺を西崎さんが発見。

誰も周りにいないのにどんどん深いところまで泳いでいく俺をメガホンを使って何回も注意したらしい。

でも全然戻って来る気配はなかったので心配になり泳いで向かったんだそうだ。

俺の下につく数十メートル手前で急に溺れだし救助。

幸いにも少量の水を飲んだ程度で大事にはいたらなかった。

そして今現在に至るという。

「女、の子は・・・」

「だから、お前さっきから何言ってんだ?」

「多分、悪い夢でも見たんだろ。ちょっとは気遣ってやれよ」

これ以上何を言っても同じ答えが返って来るだろう。

結論から言えば俺は夢を見ていた、というのが解釈らしい。

釈然としないまま、岡田らは帰り先生はもう大丈夫だろうということで後にした。

母は明日家のこともあるので帰った。

ライフセーバーの西崎さんは報告があるらしく本部に戻った。

静かになった病室に一人…

特にすることもないのでそのまま目を閉じた。

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どのくらい寝ていたのだろう。

気がつくと夜中になっていた。

体を起こそうとした時、横目に人影が写った。

ビクッとしたがすぐにため息に変わった。

横に立っていたのはキンタだった。

「なんだよ、脅かすんじゃ…」

なんでキンタがここにいる?

「お、おい…なんで、キンタここに?忘れもんでもしたのか?」

忘れものなんてないはずだ。

しかしそうでもなければここにキンタがいる意味、辻褄が合わない。

キンタは何も答えず突っ立ってるまま微動だにしていない。心ここにあらずといった感じだ。

しかし目は確実に俺を捉えていた。

睨むでもなく、見つめるでもない。その瞳には感情といったものが一切感じられない。

言うなら「見る」それだけ。

「・・・た・・・んと・・・」

目を見開いたまま瞬きをせず何かブツブツと言っている。

かろうじて聞こえるものの何を言っているかまでは聞き取れない。

「おい!キンタ!どうしちまったんだ?おい!」

立ち上がり揺さぶりをかけてみるもキンタには何も変化は現れない。

その時だった。

「よかったほんとによかったほんとによかったほんとによかったほんとに・・・」

しかも棒読みの感情の欠片もない。

永遠とこれをくりかえしていた。

「ひぃぃぃぃ!き、キンタ!おい!」

揺さぶりを強くするもキンタは止まらない。

その時、後ろから生暖かい風が吹いた。

否、風など吹くはずがない。

窓は完全に戸締りされているし、ドアだってしまっている。

風の出入りなどありえない。

じゃあこの生暖かい風は・・・?

全身の毛穴から汗が出てくるのを感じた。

何かが俺の後ろにいる。そんな気配。

しかし後ろを振り向いては・・・

どのくらい経ったのか分からない。

時間にすれば数秒だったかもしれないが何分と感じた。

キンタの感情のない声を聞きながら後ろの気配を感じるのも辛くなってきた。

「もういいか?私もそんなに気の長い方ではないのだが」

後ろからの声に思わず振り向いてしまった。

そこには黒い布を全身に見にまとった長身の女性がいた。

誰だと聞こうにもうまく言葉が出てこない。

その女性はキッとキンタをみた。

「この死にぞこないの霊がやっと見つけた・・・ふふ」

ペロリを唇を舐めた。

よく見てみるとかなりの美人なのだがその、何と言うんだろう。

そう多分この人、嫌われそうなオーラが出てる。

「よかったほんとによかったほんとによかったほんとによかったほんとに・・・」

キンタは相変わらず同じことをずっと言っている。

いや、キンタ?キンタなのか?

外観は間違いなくキンタだ。

でも、中は?

「ち、ちょっとまて!」

ようやく声が出たがなんともカッコ悪い裏返ってしまった。

足はガクガク震えているしなんともカッコがつかない。

女性はそのことには触れずちらりと見やった。

「ああ、桐生峰治か、なんのようだ」

俺のことを知っている?

「なんだ?私が自分のことを知っているのがそんなに不思議か?」

そりゃそうだ、なんせ俺とお前は

「初対面、だからか?」

!!?

こいつ俺の言おうとしていることを

「読んでやがるって?そりゃそうさ何を今更。お前には私が人間にみえるのか?」

答えを言おうとしたがやめた。

こいつはどうやら俺の考え、心を読んでいるらしい。

今この思っていることも・・・

にやりと女性は笑いこちらの様子を伺っている。

姿、格好うーんこりゃ死神か?

「あたりだ。よかったよ、たまに現実目の前に起こっていることを理解できずにただただ否定する奴もいるからな」

なんでここに・・・

死神は顔をしかめ、キンタと交互に見比べた。

「お前には真実というものを知る権利がある。現にあれをみてこの状態に置かれているのだからな。周りに理解されず辛いだろう」

「一つ聞きたい」

「なんだ?つまらないことなら聞くなよ」

「お前は・・・何しにここに来た?」

虚を疲れたようでまゆを動かし目を見張っている。

「それも含め真実を話そう、というよりまずは」

どこから取り出したのかでかい鎌をひとふりキンタに振り下ろす。

「う、うわああぁぁぁぁぁ!!」

キンタは真っ二つに斬られそのまま力なく横に倒れた。

死神はなんともないように鎌を回し背中にかける。

まるでこういうことは慣れっこですよというように。

俺は、俺は、俺は!

「何キョドっている。うるさい雑音を処理したというのに」

処理。そう答えた死神はため息をつきキンタの亡骸を手にとった。

「これがお前には人間に見えるのか?」

キンタの無残な亡骸は血一滴、中の内蔵すらなかった。

これは・・・一体・・・?

「こいつ、昔っからとりつかれやすい体質だったんだろうな。斬る前に見た時には何十という霊にとりつかれていた。もう人としての感情すらない操り人形状態だったよ。斬った時お前は見れなかったかもしれないが中から入っていた霊が一斉に出て行ったよ」

キンタ・・・じゃあ俺らが今まで

「それはキンタ?本人に違いない。ただ・・・こういった言い方したら悪いが変だったろ?」

確かに思えば・・・キンタの言動は普通とは違っていた・・・?

なんだ?キンタ?キンタってどういう人、だっけ?

「悪い、金倉キンタの存在を消したんだった。もう覚えていないか・・・」

存在を消した?

「いいや・・・なんでもない。それよりもこいつだ」

キンタのあたまの中をほじくり出しひとつの光の玉を取り出した。

「お前らなりに言えば人魂。これが媒体金倉キンタを最後に使ってしゃべていた。まあ完全にコントロールすることはできなかったみたいだがな」

人魂を宙に放るとそれは人の形を型どりうっすらとではあるが十歳くらいの少女を映し出した。

立体映像みたいと言えば聞こえはいいが、トリックもなにもない状態からはさすがにコワイ。

少女はうつむき俺をチラチラと見ている。

この少女、もしかして!

「そうだ、お前が助けようとした少女だ。そして同時に殺そうともした」

その言葉に少女はきゅっと口を噤んだ。

続きます。

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赤煉瓦様 怖い&コメありがとうございます。
死神は確かにたんたんと仕事をなさてる。
まるでそこに感情などないように…

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酢物様 淡々と仕事をし、事務的作業をする死神・・・
「抹消」する為なら何の躊躇も無い死神・・・
抹消登録者にはなりたく無い・・・
でも、近くに居る様で恐い・・・

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