友達の家に遊びに行った時だ。
当時小学四年生だった俺は外で友達数人とドッジボールなどをして遊んでいた。
遊んでいたといっても道路でやっていたから注意しながら遊んでた。
たまにしか通らない道路だったからあまり気にしてなかったけど・・・
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あるときボールが結構遠くまで転がって行ってしまったので取りに行った。
すると道路の片隅に人がたっていた。
背の高い人で、髪が長く帽子を深くかぶっていて手にはなぜか電話帳を持っていた。
顔はわからないが髪型からして女の人だろう。
ーなんだこの人、きもちわりぃー
素直にそう思った。
ボールを取って友達に話すと
「ああ、『のっぽさん』だな。そりゃ」
なんにも気にすることなく答えた。
結構有名みたいだ。
この辺に住んでいるらしくいつも電話帳片手にウロウロしているんだそうだ。
もちろん目的不明
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それからというもの、時々ではあるが『のっぽさん』を見かけた。
俺のグループは大体無視してボールで遊んでいた。
あるグループはちょっかいがてら「のっぽさ~ん」と呼んだり、ボールをわざと『のっぽさん』のところに投げ、ジャンケンで負けた奴が取りに行くなどしてからかっていたけど・・・
子供心というのは怖いものだ。
悪いことにどんどんこのことが広まり言い方が悪いが、『のっぽさん』は子供たちの遊びの道具みたいになっていた。
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数年たちもう小学六年生
のっぽさんで遊ぶのもあきていたころだった。
「のっぽさんに追いかけられた」
そう言う噂を耳にするようになった。
あ~ついにキレたかと思った
が、遅すぎないか?
約二年も我慢していたのか、『のっぽさん』?
その噂を聞いてまもない頃、いつものように遊ぼうとした。
いつもと同じ場所・・・いた
二十メートル位先
いつもはいつの間にかいるのに今日に限って最初からいた。
まるで俺らが来るのを待っているかのように・・・
「のっぽさ~ん!」
隣にいた友人が大声で呼んだ。
なっ、と思ったのも束の間
ダダダダダダダダダダダダダダッ
ものすごい速さで『のっぽさん』はこっちに向かってきた。
無言で走ってくるので恐怖も倍増しだ。
「ぎやぁぁあああああああ」
一目散に俺たちは逃げ出した。
なんとか撒くことに成功し胸をなでおろす。
「ん?Kどうした?」
Kというのはさっき『のっぽさん』を呼んだやつだ。
「お、おれみ、見たんだ!あいつ!俺らを追っかけているとき、笑ってたんだ・・・」
涙ながらに言うKの姿に俺らはしばらくなにも言えなかった。
作者酢物