私の家の近所に商店街がある。
その一角に、場所は悪くないが入る店入る店ことごとく潰れる建物があった。
そんなところに漫画喫茶ができたので、暇つぶしに行ってみた。
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雑誌置き場から週刊誌を、ドリンクコーナーからコーヒーを受け取って個室にある自席についた。
しばらくの間、週刊誌のゴシップ記事に目を通していた。
すると
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「・・・っ」
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何かが聞こえ、耳元に風を感じた。
しかしここは個室だ、誰もいるわけがない。
気のせいだろう。
気にせずゴシップ記事の続きを読んでいた。
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「・・・・・でっ」
??????
また何か聞こえた。
さっきよりはっきりと
しかも、また耳元に風を感じた。
「いやいやいや、だから誰もいるわけがないって」
おそらく空調か何かの関係で、たまに耳元に風が来る。
何か聞こえてくるのは、空気の流れかなにかのせいで気のせいだ。
そう無理やり言い聞かせた。
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「・・・でよ・・・ねぇ」
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絶対何か聞こえた。
女性の声で何か言ってる。
耳元の風もさっきより強く感じた
「ちょっとちょっとちょっと、だから気のせい!絶対気のせい!」
なぜか変な意地を張って、雑誌の記事を読み続けることにした。
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雑誌の記事も後半に差し掛かってきた。
「・・・でよ・・・ねぇ」
女性の声が聞こえた。
しかもさっきより声が大きくなってる。
耳元に温かい風を感じる
「・・・でよ」
「・・・ねぇ」
これはまずい・・・
そう思って、週刊誌を手に取って立ち上がり
個室を出ようとした。
その時、耳元に感じる息吹と共にはっきりと聞いた
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「ねぇ・・・死んでよ」
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ヤバイ!!
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急いで個室から飛び出て、週刊誌を雑誌コーナーに投げ捨てるように戻し、震える手で受付のお兄さんにお金を払って、逃げるように漫画喫茶から出た。
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外に出たら、夜遅いせいか人の通りはまばらなものの、いつも通りの商店街だった。
安堵感を覚えたものの、さっきの声が霊だったら・・・
もし今も自分についてきてたら・・・
と思うと、まっすぐ家に帰る気にはならなかった。
近所のコンビニやファーストフード店をウロウロしながら夜明けまで時間を潰し、明け方に眠気と疲労が限界に来たので仕方なく家に帰って寝た。
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その後、女の声は聞いていない。
漫画喫茶は閉店し、それから美容院、カフェ、マッサージ店などになったが、いずれも長続きすることなく閉店していった。次は居酒屋になるそうだ。
友人知人に聞いてみても、私以外に女性の声を聞いた者が確認できなかったため、女性の声とお店が長続きしないことの因果関係は不明である。
作者地獄中年