小学校入る前可愛がっていた人形がいた
特にお気に入りだったのはチャーリー○ラウンのお人形
僕は男だがとてもお人形やぬいぐるみが好きだった
好きなセリフを喋らせ、一人で何役もやる
いったいいくつやっただろうか?
姉もはじめは付き合って一緒に遊んでくれていたが小学校に上がりその機会もなくなっていった
でもひとりでも遊んでいた
それにひとりじゃない
だって僕にはチャーリー達がいるから…
恥ずかしい話だが小学校上がってからもお人形遊びから離れられなかった
この他に面白い遊びなどあるものか、そう思っていた
ある日お父さんとお母さんに車でお寺にお出かけをした
いつもはおうちでお留守番のチャーリー達も一緒だ
でも外には連れて一緒にいけないんだって
残念…
寺の外では縁日で賑わっていた
お母さんに手を引かれていろいろ回った
いろいろなもの買ってもらったり、いろんなものをもらっり、美味しいものたくさん食べた
あれ?お父さんは?
車を降りてからお父さんの姿が見えない
お母さんに聞くと用事を済ましてきているらしい
一通り周り終えるとお父さんと合流した
となりにはお坊さんもいる
お坊さんが寺の中を案内してくれるみたい
寺の中は初めてで興味深々だった
「こちらです」
お坊さんが部屋の前で止まった
お父さん、お母さんと入っていくから僕も続いた
「チャーリー!!?」
一目散にチャーりのもとに駆け寄る
ほほのところに少し傷のあるチャーリーの人形
間違いなく僕のだ!
それに他の僕のお人形さんもいる
僕のお人形達だけじゃない
部屋一面中に人形、ぬいぐるみがあった
千はいかないかもだけど百はある
「さ、お別れをしなさい」
「えっ?」
チャーリーを抱えたまま僕は硬直した
お父さんに言われた意味が分からない
お別れ?なんで?
僕はチャーリーの事好きなのに…
お父さんもお母さんも知ってるでしょ!!??
じわじわと涙が出てくる
それは止められようがなかった
わんわん泣いた
ぎゃーぎゃー騒ぎ暴れた
ついには寺のお坊さんの手も借りる始末
チャーリーを無理やり取られてその部屋から出された
寺から出て車までの道のりもずっと「チャーリー…うぅ、チャーリー…」とぐずっていた
「チャーリーは、ど、どうなるの…?」
車に乗る直前お父さんに聞いてみた
「チャーリーは今頃焼かれとるわ」
shake
「うわあああああああああああああん、チャーぁぁぁぁぁリーぃぃぃぃぃぃぃっぃぃぃいいい!!!!」
その言葉にまた泣き出し来た道を全力で戻ろうとするが、お母さんに抱きかかえられ車に乗せられた
家に帰ってからと言うもの僕は放心状態で布団に突っ伏していた
「チャーリー…、うううぅぅ、チャーリーぃぃぃ…」
他の人形たちも一緒にあの部屋にいたのだがどうしてもチャーリーが忘れられなかった
僕の友達、かけがえのない僕の友達…
もう騒ぐ元気はなく人形たちのいなくなった部屋で、ただただ悲嘆に暮れるしかなかった
どのくらい時間が経ったのだろう…
気づけばもう日は完全に沈み暗闇が広がっていた
どうやら寝てしまったらしい
下の階でトントンと音が聞こえる…
まだ夜ご飯前か…
目線を枕元に戻すと…
「チャーリー!!」
そこにはチャーリーがいた
そうこのほほの傷…僕のチャーリーだ!!
手を触れようと伸ばす
「ダメだよ、今はもう触れないんだ…」
男とも女ともつかない声が聞こえる
この声…
「そう…僕、チャーリーだよ…」
泣き腫らした目を見られたくなくてゴシゴシとこする
でもチャーリーはそこにいる
それでまた涙が出てくる
「も、もう会えないと思ってた…」
「心配だから見に来たんだ…でも長くはここにいられない…」
「なんで!?僕のことてん嫌いに…なっちゃった?」
答えを聞くのが怖い…嫌いだなんて答えたらどうしよう…
「そんな事あるわけないよ!僕をこんなにも長く使って遊んでくれて…」
「じゃあ…」
「君が大人になるため……かな?お父さんお母さんも辛かったと思うよ」
そんな事あるわけない!
僕を騙したんだ!
縁日なんかで…僕は…釣られて…
「じゃあ君は素直に僕との別れにうんと素直に言えたのかな?」
「それは……」
口ごもってしまった
理由は説明されようがされまいが僕は結局別れを拒むだろう
「ああするしかなかったんだよ、わかってあげて……ね?」
チャーリーの諭すような声を僕は素直に聞き入れる事ができなかった
大好きなチャーリーの言葉でも
「でも僕まだ子供でいい!大人になるためにチャーリーと分かれるくらいなら子供のままでいい!」
僕の言葉にチャーリーはしばらく沈黙した
「そう…思ってもらって嬉しいよ…」
すうっとチャーリーの姿が透け始めた
「!!チャー…リー?」
「もう、時間みたい…最後に…君と…一緒にす、ごせて…ぼ、くは」
それにつれて声も聞き取りにくくなる
でも消えていなくなってしまう寸前の最後の言葉ははっきりと聞こえた
「しあわせだったよ」
「ちゃああああああありーぃぃぃぃぃっぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!」
「人形供養に小さい頃行ったの覚えてる?」
「ん?何のこと?」
「あんたあの時大泣きしたんだよ?」
「へっ?俺が?」
「特に気に入っていたチャーリーの人形…覚えてない?」
「チャーリーの人形ねぇ………知らん」
「変ねぇ~あんなに毎日遊んでたのに…」
今俺は高校三年生になって野球部のエースを任されている
小学校から始めた野球だ
将来野球で飯を食っていきたいとも思っている
「あっ、でもあんたが野球をやり始めたの人形供養して直ぐなんだよ」
そうだっけ?覚えてないや
「あれだけインドアだったあんたがいきなり『野球やりたい!』って、私も父さんも驚いたわ」
「………ふうん」
我ながらそっけない返事だと思う
朝ごはんを食べ終え身支度を整える
今日から県予選の始まりだ
家を出る前カバンに入っているお守りを確認する
「よし、今日も頑張るか」
誰にも内緒だがそのお守りは小学校の野球をやり始めた日、見知らぬ男の子にもらった
「おにいちゃん、これあげる」
そう言ってもらったものだ
それ以来ずっとカバンを変えてもずっとある不思議なお守り
他の『必勝祈願』や『無病息災』のお守りはなくしてもこれだけはなくさなかった
そのお守りには何やら英語が筆記体で書かれてあるのだが…
残念ながら英語が万年赤点スレスレ回避の俺には読めるはずもない
意味などさらにわからない
今度英語の得意なやつにでも聞いてみるか…
作者酢物
子供の頃は人形遊びに夢中でした。
人と関わるのが嫌いなくせに今の仕事は接客業というから世の中わからないものです…