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妹の希沙が来ていた。テレビを楽しそうに観ている。希沙はいつも薄いピンクのティシャツに白のデニムを履いていた。
「希沙、寒くないか?」
「平気」
「親父は?」
「普通」
時折笑う希沙。
「希沙」
「ん?」
「お前、死んでんだって」
希沙は笑う顔を俺に向けた。
「知ってた? お母さんだけは、兄貴が本物だって信じてた」
「知らないな」
「だから、アタシたちは生きていられなかったの。仕方ないわ」
「死んだのは俺のせいか?」
「違うわ、死んだから生きていられるの」
希沙はまたテレビに向いた。
「この人、面白い」
希沙はいつも裸足だった。足の裏が汚れている。
「楠木さんって知ってるか? 自殺したよ」
「あの人は兄貴と関係ない。仲良くなりたかったみたいだけど、お父さんがダメだって言ってた。それなのに、わざわざ一緒に住んで。お塩盛ったり、お祓いしたり。バカみたい」
希沙は肩にかかるくらいの髪の毛を耳にかけた。赤い小さな石が光った。
「母さんって、死んだのいつだったかな」
希沙は立ち上がって俺の前に立った。ライトの逆光で表情が見えなかった。
「忘れた」
希沙は、帰るねと出ていく。
どこへ帰るのかは聞いたこともない。
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作者退会会員