ある大学生4人が夏休みの思い出にと肝試しに行くことになった。
場所はS県の某国道、心霊スポットとしては比較的有名なトンネルである。
山深い所にあるトンネルで、噂ではトンネルを出た先の道端にある祠に、女の幽霊が出るという至ってシンプルなものである。
さすが老舗の心霊スポットだけあって、webサイトにばっちり道案内が載っており、迷う事もなく順調にその四人はそのトンネル入り口まで辿り着いた。
サイトの情報によるとトンネル自体は100mちょっとの短めのものだが、途中で大きくカーブを描いている。
実際トンネル内での事故も多発しているらしい。
4人はトンネルの入り口の路肩に車を止めると、「さてどうしようか?」と相談を始めた。肝試しの内容である。
有名スポットで夏休みのくせに、夜中と言う時間帯もあるだろうが、道路規制でもかかってるかのように車の一台も通りかからない。
いよいよもって雰囲気満点だ。
色々な協議の結果、一人づつトンネルを徒歩で反対側まで行き、出た先にあるという祠の前で、祠が背後に写るように自撮りしてくる。
というものになった。
そして4人全員終わったところでその写真を見せ合う、そこで何か写っていればそれもよし写って無くてもよし、まぁ証拠写真のようなものである。
◇
とまぁ、こういう事やると必ず卑怯なことをやるクソヤローが居るもんで、つまりそれが俺なのだが。
俺は肝試しの場所が決まるや否や、行き先の事をつぶさに調べた。
因みに俺はこの夏休み、画像のデジタル加工のバイトをしており、ペイント系ソフトの使いこなし具合が素人の域を一歩抜きんでていた。
その手のサイトを探し、例の祠が写っている写真を探す、またそこで撮れたと言われる女性の霊の写真を探す、あとは暗めの場所で自撮りする。
もう分かるだろううか?
素材①祠の写真、素材②女性の霊の写真、素材③自撮りした写真
これらに卓越した画像加工技術によって生み出されるものとは?
はい、正解、心霊写真のねつ造である。
それらの準備全てが泡とならずに良かったと思っていたら。
順番決めのジャンケンが始まっていた。
その結果、俺は4番目、つまり最後に決まった。
肝試し自体は、何の滞りもなくスムーズに進みあっという間に俺の番になった。
小心者でびびりな俺は、本当に心の底から仕掛けを用意しておいてよかったと思った。
俺はトンネルの中を皆から見えなくなる程度の所まで行くと、そこで煙草を一本吸ってしばらく時間を潰す。
そして頃合いと見計らって、皆の居る場所に戻った。
何も知らない可哀そうな彼らは、ビビりな癖によく頑張ったなどと言い褒めてくれた。
そして、この肝試し最大のクライマックスである、みな自分の携帯に先程撮った写真を用意する。
『せぇ~の』
の掛け声で一斉に携帯の写真を見せ合う。
その瞬間、俺も含めて全員が絶句した。
全ての写真に写ってはイケナイ者が写っていたのだ。
各写真には撮影者自身が写っており、その背後には件の祠を入れている。
そしてすべての撮影者の背後に、薄ぼんやりとだが女性の顔が写りこんで居たのだ。
暫く、互いの写真を見せ合っていた俺たちだったが、ふと一人がある事実に気付いた。
「あれ??お前のだけちょっと表情ちがくね?」
見比べてみると、それはちょっとどころではなかった。
俺の写真以外ではその女性の顔は笑っているのだが、俺の写真だけ怒っているような怨嗟に満ちた目で恨めしそうにこちらを睨んでいた。
まぁ、この場合ソース元(と言っていいのか?)が違うので、皆のと表情が違うこと自体は当たり前といえばそうなのだが、この時少し俺は違和感を感じた。
(あれ?元画像ってこんな感じだったっけ?)
とにかく無事に?心霊写真も撮れたことだし、帰ろうかという事になった。
俺たちは記念にと最後に、トンネル入り口でセルフタイマー機能を使い集合写真を撮った。
残念ながらその写真には何も写ってなかった。
しかし、見た目上は4人全員が心霊写真を撮るという超大収穫のまま、俺たちの肝試しは終わった……かのように思えたが実は事件はこの後に起きたのである。
俺たちはその帰り道、交通事故に遭った。
その時のことについて詳述するつもりはない。
なぜなら、あの運転中に起こったことをうまく説明する自信がない。
いや、そもそも何が起こったかすら把握できていないと言った方が正しい。
ただ、警察は現場の状況から、明らかにこちらの不注意によるものと判断した、とだけ言っておく。
俺以外の3人は全員死んだ。
俺が奇跡的に助かったというより、他の3人が極端に運が悪いという状況だった。
気になっていたので、自宅に残っている筈の女の霊の元画像探してみたら、なぜか削除されていてゴミ箱にも残っていなかった。
その写真が載っていたサイトも記憶を頼りに探してみたが、どうしても見つけることが出来なかった。
だが、うろ覚えだがあんな怨嗟に満ちた目ではなかった気がする。
しかし、なぜ俺だけ助かったのだろう?
やはりあの証拠写真が原因なのだろうか?
だが……だとしたら、むしろ俺の方が状況的には危なかったのではないのか?
俺は携帯をとり出し、あの時撮ってシェアした集合写真を開いた。
そこに異変を見つけた時、俺はある事実に気付いた。
俺だけあの祠に近づいていない!
他の3人は皆、祠に近づいて写真を撮った……だから憑りつかれた
憑りつくことが出来たから……女の顔は笑顔だったのか?
俺は予めでっち上げの写真を用意したので祠に近づかなかった……だから憑りつくことが出来なかった
憑りつくことが出来なかったから……あの怒りに満ちた表情だったのか?
俺は再びあの時撮った、集合写真を見た。
そこには楽しそうにしている俺たち4人のはっきりした姿と、薄ぼんやりと中空に漂う3人の笑顔がまるであの女の心霊写真の様に写っていた。
作者園長
意外とSFホラーでない普通の怖い話も書けますけど?
って感じで書いてみました。
でもやっぱりなんか理屈っぽいですね。