ぼく、アンパンヒーロー。
趣味は困っている人を助けたり、お腹がすいて動けない人に
自分の顔のあんぱんをあげたりして飢えをしのいでもらうこと。
ある日、ぼくはパン工場のおじいさんに、飢えている人がたくさんいる国へ
ボランティアに一緒に行ってくれないかと頼まれた。
もちろん、喜んでお供します。
その国ではお腹を空かせている人がたくさん居て、ぼくはたくさんのパンを運んだ。
ぼくはヒーローなので平気だけど、おじいさんは無理がたたって死んでしまった。
ぼくは、とても困った。
これでは、パンを焼く人が居ない。
ぼくの顔のスペアを焼いてくれる人も居なくなってしまった。
そこでぼくは、生まれ故郷の星に助けを求めたのだ。
たくさんのアンパンヒーローたちが飛来した。
「これからは自給自足で、まずは小麦から育ててパンを焼くことになるな。」
ぼくたちは一生懸命小麦を育て、パンを作り、なるべく多くの人にパンを食べてもらおうと
日々がんばった。
ところが、それも追いつかないほど、飢えは深刻だった。
ある日飢えた人々はパン工場を襲って略奪行為をし、パンや小麦、運営資金
挙句の果てには、抵抗できないアンパンヒーローたちも襲って食ってしまった。
顔だけでなく、肉までも。それは地獄絵図だった。
人々を傷つけるわけにも行かず、ぼくたちはわずか数人生き残った。
ぼくたちは空しくパン工場と農場を見つめた。
「なぁ、ぼくたちが今まで守って来たものって、何だったんだ?」
ぼくらはもう、この星には愛想が尽きた。
そこでぼくらは、同じ星に住む悪魔のような「ばいきん族」を呼び寄せたのだ。
「こんな星、君たちにあげるよ。」
ぼくらは、自分たちの星へ帰った。
ばいきん族の放ったウィルスで人類は滅亡したらしい。
地球は、ばいきん族の住みやすい環境になり、ぼくらの星からどんどん
地球に移住して行った。
「邪魔なばいきん族も出て行くし、いいこと尽くしだな。」
「ああ、所詮、正義など夢だ。」
ただ、パン工場のおじいさんと過ごした日々だけは
ぼくの胸の中に大切にしまってある。宝物だ。
作者よもつひらさか