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中編7
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遺体の行き先

ちょうど今位の朝は肌寒く、昼は少し暖かく、夜が冷え込む季節であろうか。

地元に小さい居酒屋をオープンしてから

5年が経った頃だった…深夜3時に看板をしまう為に外に出た。外は風が強いせいか

気温よりも寒く感じた。

「あぁ〜、寒いね〜」手を擦りながら看板に手をかけた。

前方の方から、ヨロヨロとこちらに向かいながら歩いて来る。

千鳥足で今にも躓きそうな歩き方だった。

「お兄さん!しっかり歩かないと転んで頭でも打ったら死んじゃうよ!」冗談交じりに言った。

「何だと、この若僧が!」笑いながらこちらに向かってきた。

「ドン」こちらに向かってきたが看板に突進してきた。

「おじさん!平気かよ?頭、打ってないか?」

「…スー、モグモグ」口元モグモグ動かして寝息を立てている。

「参ったな〜」時計を見たら3時半に差し掛かろうとしていた。

交番に預けるか迷ったが自分の店は明日、休みな事もあったし片付けも残っている。

「仕方ねーなー、ヨイッショ」痩せているので軽々と持ち上げ店の畳に寝かせながら片付けをしていた。

看板をしまい、洗い物をした後に寝ているおじさんの隣でタバコを吸っていた。

すると、おじさんが寝返りをうった…

左のポケットから紙が出ている。

見ては行けないのは分かるが、興味が湧いてきた。

少しづつ引っ張り出して紙を開いた…

サトウ ナオキ…1995年8月 死

タナカ テツジ…1999年2月 死

イトウ タカシ…

紙には名前と日付…後は、死って書いてあった。

何故だかイトウタカシだけ名前しか書いていない。

何だこの人は、警察なのか?

友人が亡くなったのか?色々考えたが

人柄的に警察は違うだろうと思った。

相変わらずおじさんは、寝息を立てながら

ヨダレまで垂らしている…

起きそうもないが起こさない様に紙をポケットにしまい込んだ。

しばらくして眠気がしてきた…

ウトウトしていると、おじさんがムクって起き出した。

「あ〜、ここ何処だ…頭いて〜な」呑気に喋り出した。

「おじさん、起きたかよ?水でも飲むか?」

「いや、酒がいい!」懲りない親父である。

「あのな、散々呑んでまた、呑むのかよ」

おじさんに出来事を説明した。

「これは、悪かった…ついつい逃してしまって深酒…いや、間違えたなんでもない」

何か意味深な発言をして途中で話すのをやめた。

「おじさんは、家近いの?1人で平気かな?」

「俺はな、家なんかねーんだよ。フラフラして今まで生きてきたんだよ」

家が無い?家がない割には身なりから

清潔感は出ていた。

「家ないって?意味わかんねーし、何処で寝てるの?」聞いて見た。

「ホテルとか泊まってんだよ…こう見えても金はそこそこあるんだぞ」笑いながら

言ってきた。

おじさんはタバコをポケットから取り出した。一緒にさっき俺が勝手に見た紙が落ちた。おじさんは紙の存在を忘れていたのか紙を開いた…

俺は、おじさんの顔を見ていた。

一瞬、睨みを聞かせながら紙を閉じた。

「その、紙なんなの?」

「この紙か?」しばらく沈黙が続いた…

時計の針は6時を回っていた。

タバコに火をつけながらおじさんが口を開いた。

「実はな…話しても信じねーと思うけどよ」しまいこんだ紙を開きながら話し始めた。凄く興味が湧いてきていつの間にか眠気も吹っ飛んでいた。

「俺はな、14歳の時に学校の帰り道に

行っては行けないと小さい頃から言われてる場所に興味が湧いて行ったんだ…」

その年頃になると行きたくなる理由は分かるような気がした。

「民家の横を通って、誰にも見つからないように向かったんだ。」

「誰にも見つからないように?」聞き返した。

「そうだ、俺が住んでいた場所はみんなが

あそこに近づいては行けないって小さい頃から言われてるからな…見つかったらみんなから呪いの子供って言われ続けて住めなくなるからな…」

俺は、真面目に話しているおじさんの横でクスクス笑っていた。

おじさんは、気にもせず話しを続けた。

「俺も興味本意で近づいてしまったんだが、小さな祭壇と両端に石が綺麗にたてに並べられているんだ。」

両端に縦に並べられている石は人工的に並べた訳でもなくて、自然に縦になってるらしい。

祭壇には、小さなお皿50cm程の黒髪が束でおいてあって

髪が風とかで飛ばないように壁が作られているそうだ。

「俺はなその髪を気持ち悪いけど持ち上げて匂いを嗅いだりして振り回したりしてたんだ…」

何も変わったこともないし帰ろうとしたら

祭壇の方から「ジャリ、ジャリ」って音がか聞こえたらしい振り向くと…

顔、手、足、肌が露出している部分は真っ青になり白い着物を着ているがボロボロに

破れている。

おじさんは、早く逃げようとしたが中々、足が動かず目の前まで近づいて来るのを

目をつぶりながら待つしかなかった…

足音がならなくなった。

そっと、目を開けた途端…

女がおじさんの顔を覗き込んでジロジロと

見ている。

女はしばらく、おじさんの顔を見ながら

口を開いたらしい…

おじさんは、尋常じゃない汗をかきながら

女の話した事に耳を傾けた。

「キ…タナ…キサマガノロイヲ…トイ…タ」それだけを言い放ち祭壇の方に消えていった。

おじさんは、急いで走って家に帰った。

それから、毎晩の様に女が夢に出てきて

手招きをしてきて行こうとすると目が覚める。その繰り返しをするうちに夜が怖くなるらしい…寝ないように頑張るらしいんだが学校も行かないと行けないし親にも話せなかったらしい。

俺は聞いたんだ…その後どうしたんですかって。

おじさんは笑みを浮かべながら

「まだまだ…終わらない話だからな

続き聞きたいか?」

「そこまで、話したなら全部聞きたい!

逆に気になって寝れないよ」

おじさんはタバコに火をつけながら話をした…

毎晩の様に夢に出てきてわ手招きをするらしいんだが、いつもと違う夢になったらしい…

女が次は近寄ってきて人の名前を言っては、消えていくらしい。

「サ…トウ…ナオキ」

「タナカ…テ…ツジ」

「イトウ…タカシ…」

おじさんは、目が覚めるとすぐにノートに

書き込んだらしい。考えても謎が深まるばかりらしい…おじさんは、子供ながら勇気を振り絞ってお父さんにその晩に言ったらしい。

行ってはいけない場所に行ったこと

女が現れたこと

夢に毎晩の様に出てくる事

お父さんはおじさんに言ったらしい…

「この事は、誰にも話すな!分かったか?」おじさんは、頷いた。

お父さんが軽く頭をポンポン叩いて来たらしい。

翌日の晩にお父さんから釣りに行こうと

誘われ夜釣りに行く事になった。

お母さんも気をつけてと言って2人は車に乗り込んだらしい。

実は、釣りではなくてお寺の住職さんに

話を聞いてもらう為に嘘をついたらしく寺に向かった。

車内でお父さんが「いいか、あった事を覚えてる限り話すんだぞ!あの祭壇に詳しい住職さんに会うからな!」

「分かった…」

車を走らせる事、1時間だろうか寺に着いた。

2人で降りて一緒に向かったらしい

夜の寺は静けさが増し怖くて震えてるのを

覚えてるらしい…

チャイムを鳴らした…

静かな足音を立ててニッコリと笑って

住職さんは出迎えてくれた。

「早速なんだが、話を聞きたいんだが話せるかな?少しはお父さんから聞いたんだが

自分の口から言えるか?」住職さんはおじさんに向かって話しかけてきた。

「はい。」

住職さんは、話を聞く前にお経を読み上げ

線香に火をつけた。

包み隠さず起こった事を泣きそうになりながら話したらしい…

住職さんは、話を聞いた後にお父さんの方に向かって首を横に振った。

その時、お父さんは頭を抱えたらしい…

おじさんは、訳も分からないがその姿を見て泣いてしまったらしい。

住職さんは、話を聞いた後にその祭壇の話をした。

今から、10年前だろうか女性1人で畑仕事をしていると背後から3人組の男が近寄って来た。女性は力に及ばず強姦された上、殺害された。

3人組の男は祭壇がある場所まで女性を運び

遺体を捨てたらしい。

当時は近寄っても良い場所ではあったが

中々近寄る人は居なくて遺体が発見されたのは、死後1ヶ月は経ってらしい。

肌の色は青白く、服はボロボロ。

カラスに突つかれて両目が食べられていたらしく見るも無残な姿だった。

遺体の引き取りも居なくて、無縁仏になった。

供養をする為に住職さんが若かった頃に

祭壇の準備をし皿に髪を乗っけてお経を唱えたらしい。

それからか近づく者が居なく行っては行けない場所になったらしい。

住職の話を聞き終えるとおじさんは名前が書いた紙を渡した。

住職は紙を見て驚いていた…当時の犯人の名前らしい。犯人は捕まり刑を終え出所をしてるらしいが…

おじさんが祭壇に近づいて髪の毛を振り回したりしたせいで女が怒ったらしい。

住職は女に犯人の髪の毛を取って祭壇に祀れば終えると言った。

祀れなければとお父さんが聞き返した。

「目の前にして言うのは、辛いが祀れなければ死が待っている…」

話を聞き終えお礼を言って寺を後にした。

お父さんに思いっきりビンタをされたらしい…泣いていたそうだ。

おじさんも泣いていた。死ぬのが怖いとかじゃなく家族に会えなくなるのが寂しかったらしい。

車に乗り込み無言のまま帰宅をした。

母親は寝ていたお陰でビンタをされた後を見られずに朝を迎える事が出来た。

住職のお経のお陰か毎晩の夢が1週間に1回のペースになったらしい。

おじさんは、1週間に1回の女の夢に耐え続け高校は諦め犯人探しの為に家を持たず転々と今を生き抜いてきたらしい。

何10年…犯人を探し歩き転々としながら

1人目の犯人に接触出来たらしい…

殺すつもりはないが暴れていたため首を絞め殺害…

2人目…パチンコ屋に出入りをするのを見かけ帰りに殺害…

遺体は車に運び井戸に投げ込むらしい…

俺は正直、本当の話なのか疑いを始めた。

「おじさん…本当の話なの?逆に俺に話して平気?」

「信じない奴に話すのが好きだからな…

髪の毛祀るからな、帰るわ」

おじさんは、店を後にした。

Concrete
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