ブーン
バアル・ゼブル
ベルぜブル
ベルゼブブ
ブーン
ベルゼバブ、ベールゼブブ
ブーン
うるせいよ!
でっかいハエが家に舞い込んで来やがった。
羽音が悪魔の名前のように聞こえる。
そう、今やアニメに出てきて馬鹿やってる。
彼奴の名前に聞こえてならねえ。
くっそぉ……!
あっいけねー。そりゃ彼奴の好物だ。
殺虫剤入れてる引き出しを開けたが、ハエ用は切らしていた。
で、ゴキブリ用をぶっ掛けてやろうと思ったが……。
スプレーがやけに軽い。そうだ、オカンが三日前に、台所でヤマトゴキブリが一匹、窓から飛び込んできたと言って、シュウシュウシュウシュウやってたけど、あの時、買ってきたばっかの一缶使い切ったのかよ。
缶ぐらい捨てとけよ。
医薬品の殺虫剤で、高いのに……。
あとはムカデ用という、かなり危険なやつしか残ってない。
使うか?使いたくない!
でも、これしかない。
なんでこれしかねーんだ?
安全の為ゴーグルつけて、顔にタオル巻いて、強盗か何かと間違われそうなもう逃げたかと思いつつ部屋にもどると、
ブーン
バアル・ゼブル
ベルぜブル
ベルゼブブ
ブーン
ベルゼバブ、ベールゼブブ
ブーン
ちょっと迷った。此奴マジ悪魔だったらやばくね?
まあエクソシストに知り合いおらんし……。
ハエだよハエ、単なる。
目の前に飛んできたところに、おもいきってシューっと吹きかけると呆気なく、床に落ちた。
よく見るとかなりでっかいハエである。
そして、その至近距離にあるものを見て、俺は凍りついた。
金色の小さい王冠。
俺は、ハエの死骸と王冠をノートをちぎって包み、慌てて近所の教会に駆け込んだ。幸い牧師さんがおられたが、俺を見て一歩後ろに退いた。明らかに怖がっておられた。
でも、執務室らしきところに通されて、一応話は聞いてくれたがずっと渋面、まくしたてるように話す俺に、ずっと傾聴の姿勢を崩さない。
そしてノートの切れ端に包んだハエと王冠を牧師さんに見せると一言、
「珍しいですね。これアブですね。
噛まれなくて良かった」
俺は一瞬、え?と思った。
「でもこの王冠は?」
牧師さんは、仕様がないという表情で、黙ってデスクの引き出しから、大きな虫眼鏡を取り出して、俺に手渡し、
「よくご覧なさい」
というのでみて見ると、
潰れたよくわからんが鳩目パンチとかの玉、金色の……。
「アニメとかの影響なんでしょうか?
最近たまにあなたのような方が来られます。」
でもさっき牧師さんが、俺を見て引いておられたのはなぜです?と聞くと、
「タオルとゴーグル、外していただけませんか?
その格好でコンビニに行かれたら通報されますよ。
それから、ご存知ないのは仕方ないですが」
それから?
「うちは新教系でないので、牧師ではなく私は神父です。
今まともにお顔を見て思い出しましたが、
クリスマスのミサに来られてましたよね」
俺はタオルで冷や汗拭き拭き平身低頭、
帰り際、神父さんは、
「ではお大事に、貴方に神のご加護がありますように」
そう言って十字を切っておられた。
慌てて帰ろうとすると、神父さんが私を引き止めて、
「虫は捨てておきますが、このノートの切れ端は持ってかえってください」
そういうので、
「なぜです?」
と聞き返すと、
「これってひょっとしてテスト範囲だったら困るでしょう?」
俺慌てて、授業で筆記したところを破いちゃってた。
以上
作者純賢庵
ホラーとは別の意味で怖いかも……。