俺は夢を見ていた......
眩しく光輝くその先から聞こえてくる声に聞き覚えがあった。
小5の頃、初めてユウと出会ってからユウだけを想ってきた。
ユウと気持ちが通じ合った時、あの時に見た夢と同じ声。
愛する妻と娘を斬られた光景は焼きついて離れない。
斬ったのは俺だ......
なぜ斬らなければならなかった、なぜこんな光景を見せられなければならないのか?
ずっと考え続けていた問いに答えるように、声の主は語りだした......
「私との約束を覚えているか?」
「はい、思い出しました」
「この場所はお前たちが愛し合った地、私との約束の地だ。ユウを助け守るために私が授けた力を理解し使いこなせ、誓いを果たすために」
「はい、必ず」
俺は処刑された後、この守護神に会った。
守護神とは守護霊の上司といったところか。
通常、守護神は姿を現さない、たまたま俺たちの愛の誓いを悪戯に見ただけだった。
幸い興味を持ってくれた、そして力を貸してくれた。
生まれ変わり愛し合う約束を、永遠に誓うと....
人間の嘘、偽り、裏切り....全ての黒い感情を守護神は知っている。
それでも終わらない愛があるなら見てみたいと言った。
霊媒体質のユウの本来の役目は道に迷ったモノを進むべき道に案内する水先案内人。
危険を承知で自らの身体に憑依させ導くための力。
それを助け守るのが俺の役目。
何度も、何度も、新たに生まれ変わり悠久の果てしない時をめぐり逢い愛し合うと誓った。
やっとわかった、俺たちの本来の役目。
こんなことすら守護神にとってはただの戯れなのかもしれないが、俺たちは試されてる。
翌朝、ユウが見た夢の話を聞いて思い出した事がある。
「あっ、あの時の?」
「うん、死神(?)が言っていた悪い縁ってのはその主人なんじゃないかって思う」
「そうかも......」
「必ず断ち切れと言っていた、どうすればいいかなんて検討もつかないけどな」
「うん....邪魔、されるのかな?」
「きっとね、でも大丈夫だと思えるんだ」
「そっか、そうだね」
ずっと怖くてユウに触れる事を躊躇してきた。
俺が触れたら不幸にしてしまう気がしてた。
この場所に近づくにつれ、自分で斬った妻と娘が鮮明に甦っていた。
最大の恐怖、俺はユウに話さなければならないこの時が来る事が怖かった。
俺たちの人生はあの守護神の掌で弄ばれているような気さえした。
でも仕方ない、ユウと愛し合うために俺が選んだ道、俺の人生と引き換えにもらった力だ。
「あいつらにはしばらく内緒にしとこう、またからかわれるからね」
「だね、特にミズホ」
この出来事がきっかけでユウは自分の力を理解し始めた。
そして俺も力の使い方を知った。
心のモヤは霧が晴れるように視界が拓け、俺とユウは少し成長し変化しつつあると感じた。
その変化が俺にある決意をさせた。
人生でたった一度だけ言わなければならない言葉を口にする決意を......
作者伽羅
少し小出しですみません。
この件は思い入れが強くて一気に執筆することが困難でして......
お時間があれば、もう暫くお付き合いください。