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中編4
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大学の話

music:1

僕は自称霊能者であった友人と高校卒業時から決別し、大阪の大学に進学した。

3ヶ月が経った夏、そこそこ連れができ、その中に牧下穣と言う男が居た。

これが中々癖のあるやつでオカルト趣味なのにリアリストという変な性格をしていた。

経験した話を語り合う、俺は友人であった自称霊能者と共に出会ってきた様々な怪異の話をし、牧下は自ら遭遇したというメリーさんの電話の話をした。

「メリーさんの電話って」

不覚にも笑ってしまった。

牧下は不機嫌な顔をする。

「牧下さーん!」

不意に僕の背後から声が聞こえた。

女の声だ

牧下は女におーうと返事をすると同時に手を挙げた。

走ってきた女を牧下は肩に抱き

「俺の彼女だ」

と言う

「やだー冗談きつーい」

と女は言い

「新山佳与って、言います」

と自己紹介してくれた。

少し僕よりはおぼこいなと思っていると、牧下が僕の考えを見透かしたように言う

「佳与はまだ高校2年や」

「酷い!もう高3ですよ!」

と、佳代が言い返し、僕の方を向き

「よろしくお願いしますね、先輩」

と挨拶してきたので

僕もとっさに

「ども…」

と返す、もっと、気の利いた返事ができないのだろうかと思い、下を向く。

そう言えば、と牧下が話し始める。

「この三人オカルト趣味やし、肝試しでも行くか!」

突拍子も無いやつだ。

佳与は良いねー!とはしゃいでいる。

僕も賛成し、今夜の12時に町外れの廃墟にて肝試しと言う予定になった。

講義が終わり、帰宅する

その日の夜、俺が15分前に現地に行くと、集合場所に真っ黒な人影が佇んでいた。

不意に人影が振り向く、見たくない!

とっさに目をそらす…

「先輩!」

女の声だ

顔を上げると、白色ベースの猫柄の半袖にホットパンツという格好の佳与がそこにはいた、さっきの人影はなんだったのだろうか、そう思いながら、佳代に声をかける。

「お前だけか?」

「今より15分まえからここにいましたけど、私以外は居ませんよ?」

続けて、どうかしましたか?

と尋ねてきたので煙に巻く。

「牧下は?」

と聞くと

「あ〜…先輩は時間にルーズですからね」

と言うのだ。

この子も大変だなぁと思いながら、改めてこの佳与という女の子の容姿をじっと眺める。

これがまた結構可愛いのだ。

そう言えば昼間あった時は制服だったなーと思っていると、背後から声が聞こえた。

「お待たせー」

牧下だ

時計を見ると5分遅刻

「おせぇ!」

牧下の頭にデコピンをする。

「ごめんちょ!」

デコを摩りながら、牧下は何か考え事をしていたが、吹っ切れようで

突入!

と叫んだ。

廃屋に突撃して10分

佳与は何故か僕の腕にしがみ付いている

怖いのだろうか?

先頭を行く牧下は

おばけなんか嘘さ

だとかなんとかと歌っていた。

佳代の体がビクッと反応したかと思うと、耳鳴りが鳴る、キイイイイ…ン

耳障りな音だ、佳与は心なしか震えているようだ。

集合場所で見た人影がフラッシュバックする。

ふと、後ろから足音が聞こえた

振り向く

五メートルほど後ろにに黒い塊があった。

塊から声が聞こえる

『ヴアアアァァア…』

みたいな感じの声だった。

逃げないとやばい、佳代に走れ!と叫ぶ

牧下もこちらを振り向き、不思議そうな顔をしていたので、走れ!と叫んだ

まださっきの声が聞こえる。

足が動かなくなる

「ッ!!?」

気配はすぐ後ろに

二人は走って行ってしまう。

取り残された…

そう思った瞬間

視界の上部に何かが見えた

黒い…球体のように見えたが、よく見ると違った…

塊ではない…

頭だ…これは…人間の…

真っ黒に焦げ、片目が陥没し、片目はダラリと垂れ下がっている、口はだらし無く開け放たれ、そこから生臭い吐息が吐き出される

気分が悪くなった。

見下ろされている、ヤバイ、ヤバイ

「目を閉じろ!」

声が聞こえたのでとっさに目を瞑る

右手が何かに握られ、足が動き出す

目を開けると、牧下が俺の手を握り先を走っていた。

あっという間に門をくぐり、牧下の愛車に乗り込む。

sound:23

ブロロロロ…

sound:25

軽四のエンジン音が闇夜にこだまし、車発進した。

俺の横には走り疲れたのか、息を上げている佳与が心配そうに僕を見ていた。

「大丈夫だ」

と言ってやると、安心したように微笑み

「良かったです」

と口にした。

後日そこの背景を探ってみた。

戦時中の戦火で、あの廃屋のあった土地の家は住人ごと全焼し、それは後に埋め立てられ、一軒家が建てられた、しかし、その一軒家も謎の火事で全焼したのだそうだ。

その事を牧下に話すと一言

「魅入られたんだな」

と呟いた。

あれからはあの廃屋に近づいてはいなかったのだが、今は埋め立てられてしまったのだそうだ。

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