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短編2
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接触

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俺は彼のいない生活に慣れ始めてしまっていた。

彼というのは、高校卒業まで苦楽を共にした自称霊能者を語る親友のことだ。

その頃には、牧下という友人や、その妹である美嘉、美嘉の友人で、大学の後輩の新山佳代といった友人達に囲まれ、何不自由ない大学生生活を送っていた。

その友人達も、また彼と同じようなオカルト好きという妙な共通点のある変人達だったのだが。

そして、山下に出会った。

大学二回生の秋頃の話。

不意に肩を叩かれ、後ろを振り向くと、女性が立っていた。

大学の敷地内で何度か顔を合わすことはあっても、彼女との接点はなかった俺は

「どなたですか?」

と尋ねた。

女性は山下と名乗った。

正直、彼女の印象はあまり良くなく、喋っていると、首筋がゾクゾクとした。

「あなたに興味があったんだけど、いつもお友達と一緒だから声を掛けずらかったのよ」

悪びれずにそういうが、内心はどうだろうか。

できるだけ目を合わせずに話す。

目を合わせていると、心の中を覗かれているようで…。

「先輩!」

また背後から声を掛けられる。

佳代だ。

今日はデートの予定でしょー

といつもの調子で半ば無理やり連行される。

「あら、残念」

山下がそう残念そうな顔もせず、能面のような無表情でそう呟いた。

物陰に隠れると、さっきまでのテンションでなく、静かに佳代が囁いてきた。

「あの人、この大学でも危険人物なんですよ」

なんでも、一人で深夜徘徊をしたりしているせいで、変な噂が流行っているのだそうだ。

「あの人にはあまり、関わらないほうがいいですよ」

佳代が静かに言った。

その帰りの話、俺が帰路に付くと、前方に見覚えのある後ろ姿が目に付いた。

山下が、道の端っこで屈んでいた。

思わず声をかけてしまった。

今思えば、あの時声をかけなければ、と後悔している。

「どうしたんですか?」

山下が振り向き

「お喋りしてるのよ」

と言う、能面のような無表情でそう言うのだ、何故かゾクゾクする。

「誰とですか?」

好奇心が猫を殺すとはつまりこういうことなのだろう。

「お友達と」

彼女がそう言った瞬間に、耳元でアラート音が鳴り響く、耳鳴りだ…。

そして見える。

彼女の正面に頭の原型をとどめておらず、苦しそうに呻く少女が。

《見たな》

そんな声が聞こえた気がした、いつかどこかで聞いたあの声を。

俺は駆け出した。

マンションの階段を駆け上がり、自分の部屋に逃げ込む。

これが山下との初接触だった。

この時にはもう始まっていたことを、後で知ることになる。

あの夏の日の怪異の続きが…。

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