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中編4
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友達ちょうだい

ゆかりちゃんは幼い頃からいじめられっ子だった。小柄で内気な性格はいじめっ子の格好の的だ。ともだちも出来なかった。

ゆかりちゃんはいつも手にスケッチブックを抱えていて、暇さえあれば絵を描いていた。そんな時、クラスのいじめっ子たちがゆかりちゃんをからかうのだ。

両親はだいぶ心配していたが、本人はそこまで感情を表に出すことをしなかったため、改善されることもなく、ゆかりちゃんは小学2年生になった。

今回も、いじめっ子何人かとクラスが一緒だった。内気なゆかりちゃんでも、自分がいじめられていて、友達がいないことは充分わかっていたし、寂しかった。

その頃から彼女は、家にいるときは、いつもスケッチブックにこどもの絵を描くようになった。

髪の長い女の子、サッカーボールを蹴る男の子、本を持った男の子、とにかくたくさんのこどもをゆかりちゃんは描いた。

こんな人と仲良くなりたい、友達になりたい。と願いながら。

しかし、いじめはやまなかった。新しいクラスで、新しいいじめっ子が増えた。みんなはこぞってゆかりちゃんの物を隠したり、仲間はずれにした。

ゆかりちゃんはそれでも、泣き言ひとつ言わずに、急いで家に帰ってスケッチブックの友達と過ごした。

スケッチブックに、「友達をちょうだい」と願っているように。

それから1ヶ月ほど経った頃だろうか。

ゆかりちゃんの通う小学校に、警察から連絡が入った。

在籍する2年生の女の子が行方不明になっている、というものだった。

このご時世、身代金目的である可能性が低いことを警察に言われ、校長を代表する教師全員が、最悪の事態を恐れていた。

しかし、翌朝になってその女の子の遺体が排水溝から見つかった。彼女には両腕がなかった。切断されて、その場にはなかったのである。

このニュースは全国で取り上げられた。ゆかりちゃんの両親も、自分の娘のクラスメイトの訃報を嘆き、恐れた。

小学校は臨時休校になり、町中を警察がパトロールするようになった。

ゆかりちゃんは、相変わらずスケッチブックで絵を描いて過ごした。

翌日、さらに大きな衝撃が町を襲う。

昨日の女の子と同じクラスの男の子が、遺体で発見されたのである。排水溝とは少し離れた、公衆トイレでであった。

彼は両足を切断されていた。彼の場合も、両足はその場に置かれていなかった。

世間は連続殺人と謳い、町中をこどもがひとりで出歩かないようにとかなり警戒された。

一方、警察は彼らの四肢を見つけることが出来ずにいた。鋭利な刃物のようでバッサリを切り落とされていることが辛うじて分かる程度で、血痕が付着した衣類や刃物もない。そして目撃者もいなかった。

しかも、2人目の男の子は前夜の就寝を両親が確認しているのである。男の子はひとりで夜中に出掛け、四肢を切られて朝発見されたのであろうか。

警察は第3の犯行を恐れ、深夜もパトロールを実施すると決定した。事件発生から2日目のかなりハイスピードな決定であった。

しかし、それを防ぐことは出来なかった。翌日の昼、またまた小学2年生の女の子の遺体が発見された。母親と買い物中にふと目を離した隙に逸れたようだ。しかしそれは30分ほどの出来事だった。彼女には、胴体がなかった。バラバラの四肢と、頭部がスーパーの駐車場の脇に転がっていた。わずか30分でここまで残忍な殺し方が出来るのか?警察は疑問に思った。

その頃、ゆかりちゃんは鼻歌交じりで歌を歌っていた。世間の恐怖も知らずに呑気な娘だと、両親がゆかりちゃんに近づくと、ゆかりちゃんは絵を見ていた。

しかし、様子がおかしい。頭がないのだ。いつもゆかりちゃんは頭から絵を描いてるのに‥

不思議がった両親はゆかりちゃんに問うた。

「ゆかり、なんでこの子は頭がないの?」

ゆかりちゃんは嬉しそうに言った。

「ゆかりが描いてるんじゃないよ!スケッチブックでこのページを開くたびに絵が仕上がっていくの!」

両親はゆかりちゃんが疲れているのかと思い、彼女を昼寝させることにした。

スケッチブックに描かれているのは、サッカーのスパイクを履いた男の子の足のようだったが、着ている服は女の子の物のようだった。

ゆかりが目を覚まし、スケッチブックを開いた頃、4人目の犠牲者のニュースが世間を賑わせていた。今度は頭のない小学2年生の女の子が犠牲になった。彼女は腰まである長い髪ごと丸々と切り取られて、公園のベンチで倒れていた。

ゆかりちゃんは嬉しそうにスケッチブックを開いた。

「あ、出来てる!ゆかりが欲しかった髪の長い女の子だっっ!」

目をキラキラさせるゆかりちゃん。

彼女がスケッチブックをうっとりと眺めていると、スケッチブックの中の女の子が言った。

「やっとともだちになれたね」

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