叔母が亡くなった。まだ四十代の若さで急死したのだ。まあ、急死と言っても自殺だったのだけれど。
傍目には温厚な叔母だったが、実はかなり陰湿的な性格だったらしい。というのも、身寄りがなかった叔母の遺品を私が整理することになったことがそもそもの始まりだった。
叔母の寝室の整理をしていた時だ。押し入れの中から大学ノートが大量に見つかった。それぞれ年代別に分かれており、最初は日記だと思ってそんなに気にもとれなかったのだけれど……出るわ出るわ。全部合わせると、五十冊近くにもなった。
「叔母さんてマメな人だったのねぇ」
そんなことを呟き、私は手元にあったノートを一冊捲った。年代から見て、亡くなる一週間前までの日付が書かれた、一番新しい物だ。深い意味はなく、ただの暇潰し。ごったくを整理するのに疲れたから、何かにかこつけて手を休めたかったという理由からかもしれない。
「うわっ……」
読んで気が付いた。それは日記ではなく、叔母の恨み言がつらつらと書き綴られた「恨み帳」だった。近所の○○から、燃えるゴミの日は火曜日ではなく金曜日だと指図された、職場で年下の○○から身嗜みがきちんとしていないと言われた、親戚の○○から暴言を吐かれた……などなど。その日に起きた出来事ではなく、その日に起きた恨み言を几帳面にも書き続けていたのだ。
思わず苦笑してしまう。全く、人当たりが良さそうな顔をしていた癖に。人間は腹の中で何を考えているのか分からないものだ。
パラパラと頁を捲り、最後の頁まできた。その頁を読んだ私は、背筋がぞっとした。
・私の葬式の時、姪の○○が親戚らに「叔母さんは外面だけは良かったよね」と話していた。
・姪の○○が遺品の整理だと言って、私の家に来た。もうすぐ取り壊される家だからと土足で上がり込んだ。
・姪の○○は口先だけは遺品の整理などと嘯いているけれど、実際は私の隠し財産が目的だ。その証拠に冷蔵庫で保管していた通帳と判子を胸元に隠し持っている。
・姪の○○が私のノートを盗み見した。絶対に許さない。
作者まめのすけ。-3