それはある日曜日のこと。近所のマンションに住むユリからメールが来た。
「すぐきて ちゃいむならして」
文面はこれだけ。全て平仮名で表記されていたのも何やら違和感を感じた。すぐきて、とあったので、急な用件かもしれない。私はコートを引っ掛けると、ユリのマンションに向かった。
ピンポーン。
チャイムを鳴らす。だが、応答はない。留守かと思ったが、中からゴソゴソと音が聞こえた。在宅は間違いないようだ。
ピンポーン。ピンポーン。
続けてチャイムを鳴らす。だが、やはり応答なし。
「おかしいわねえ……」
ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン……
何度チャイムを鳴らしても、ユリは出て来なかった。からかわれたのだと思い、その日はそのまま帰宅した。
翌日。会社に出社するために家を出た。ユリのマンションの前を通りかかると、人集りが出来ていた。パトカーや救急車も駆け付けており、何やら騒然としている。
ふと胸騒ぎを覚えた私は、人集りの中に割って入った。近くにいたおばさんに「何かあったんですか」と問うと、「殺人だって」と返ってきた。
「ここのマンションに住んでる女が殺されたらしいの。何でも○○会社に勤めてる女でね……変な男にストーカーされてたみたいなんだけど」
○○会社といえば、ユリの勤め先だ。全身の血液がさざ波のように引いていく。そんな私に気付いていないのか、おばさんはペラペラ喋り出した。
「犯人の男がさっき捕まったんだけど、そいつ、妙なことをしでかしたらしいのよ。女の部屋に侵入して、女をイスに拘束して身動き取れなくしてさ。で、配線を変な風に弄くってチャイムと繋いだんだって。チャイムが鳴ると、女が感電する仕組みになってたらしいのよー。運が悪いことに、昨日、誰かが女の部屋に訪ねてきたらしくてさ。チャイムを押すじゃない?それで結局、感電死……。やだわねえ、怖いわよねえ。犯人も賢いというか、自分の手は汚さないやり方を選んだわけでしょ。でも、知らずにチャイムを押した人も可哀想よね。知らないうちに殺人の片棒担いじゃってんだから。今、警察が捜査してるみたいよーーー」
チャイムを押したのは、一体誰なのか。
作者まめのすけ。-3