久しぶりに会う級友達と盛り上がり、3次会のカラオケをこっそりと抜け出した輝之達は、野郎3人で夜の風俗街へと繰り出していた。
そこは、関西では有名なチョンの間、函南通り…昭和初期からありそうな2階建ての古い建屋がズラリと並ぶ異彩を放つ一角、所謂「売春宿」である。
軽く30戸はある各店先には、呼び込みのおばちゃんが一人づつ立っている。
店内には左右から淫靡な照明で照らされた美しいお姉様方が、ちょこんと正座をして、笑顔を振りまきながらゆらゆらと手招きしている。
いい感じに酒が回っている3人はニコニコしながら…いや、ニヤニヤしながら…いや、ニタニタしながら歩いていた。
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!どやウチの娘?可愛いやろ〜♪♪サービス抜群やでどない?!」
早速、内◯裕也似のおばちゃんが輝之に声をかけて来た。
「…ん~ 」
「悪い事は言わん!絶対満足さすさかい、騙された思うてこの娘にしとき!」
うむ、婆さんゴリ押しの女の子は確かに可愛い… 目を細めて見ればあの堀北◯希に見えない事もない。
見ると友人2人は、既に違う店の婆さん達に捕まり、別々の店へと入っていった様だ。
迷っている時間は無い。
「分かったおばちゃん!俺この子に決めるわー♪♪」
「よっしゃよっしゃ!兄ちゃん男前やから千円負けたるさかい九千円でええわ♪♪ 」
…
店に入ると若い女の子が3人並んで座っていた。タイプは違うがどの子も中々の美人である。
「あんたどの娘がタイプやの?」
輝之は迷わず堀北真◯を指名した。
金を渡すと2階で待つように言われ、幅60センチ程の狭くて急な階段を昇る。
歩く度にミシミシと鳴る踏み板が、建物のその古さを物語っており、もし足を踏み外そうものなら大怪我必至の急階段である。
2階には3つ部屋があったが、言われた通り真ん中の部屋へ入った。
薄い壁で囲った広さ3畳程の部屋には、ピンク色の薄暗いライトがボンヤリと灯っている。
そのど真ん中にシングルの布団が1枚敷いてあり、小さなテーブルの横にはこれでもかと積み重ねられたティッシュ箱と、コン◯ームの箱が高い山を作っていた。
それにしてもこのやかましい音楽はどうにかならんもんかな?
小さなカゴがあったので、その中に上着を脱ぎ入れた。
時間は30分、延長無しの本番1発勝負である。
…
…
久し振りのこの感覚に、輝之はドキドキしていた。
煙草で気持ちを落ち着かせながらも、この後のお楽しみを想像すると期待と股間がモコリと膨らんでくる。
「………!」
ふと入り口に、強烈な視線と気配を感じて振り返った。
女が立っていた。
がしかし、指名した堀◯真希ではない。
さっき下にいた3人のどの女の子でも無いようだ。
ただ、目が会うと微笑んで来たその娘は抜群の美人だった。
例えるならアナウンサーのカ◯パン似のスレンダーで、ぼんやり照らされた薄暗い照明でも分かる程に綺麗だ。
すらりと長い手足、形の良いバスト、キュッと締まった腰のくびれ、それに透き通る様なその白い肌は、正に文句の付けようが無い抜群のプロポーションであった。
というのも、その娘は何故か既に純白の下着姿だったのだ。
冷静に考えれば少しおかしいのだが、 酒に酔っている上に興奮度がMAXに達している輝之には、ただ目の前の「獲物」をどうしてやろうかという考えしか浮かんで来なかった。
その娘は軽く笑みを浮かべながらスゥーと近寄って来たかと思うと、一言も言葉を交わす事なく、輝之の服を優しく脱がせ始めた。
「 ………/// 」
そして全ての衣服を剥ぎ取り、それらを籠に集めると、輝之の体をゆっくりと倒しながら自分の体をピタリと密着させて来た。
若い娘特有の吸い付く様な肌の密着感、触らずとも分かる豊満で柔らかなバスト、仄かに香る甘いシャンプーの香り…
正直、輝之はすぐにでも襲いかかりたかったが、一先ずそこは我慢してカトパ◯に身を委ねる事にした…
柔らかな唇。
何度も繰り返される優しいキスは徐々に濃厚なものに変わり、首元から胸へ、更に輝之の体の隅々にまで丹念に愛撫していく。
喧しい音楽とは別に聞こえる唾液を絡めた破裂音が、輝之の中に少しだけ残っていた理性を徐々に狂わせていった。
…ご、極楽じゃ
もう俺、このまま死んでも良いかもしれない…
あの婆さんの言った事は本当だった。
今までに味わった事の無い程の快楽。
極上の舌使い。
まぁ、◯北真希では無かったもののそれ以上の女が今、必死になって俺の体を貪っている。
なんて激しく、優しく、情熱的なんだろうか…
俺と目が会う度に顔を赤らめ、上目使いで微笑みかけてくる。
か、可愛い!!
そして巧い!!
見た所、20前後に見えるが一体何年こういう場所で働けばこんな「匠の技」が身に付くのだろうか?
輝之は今まで味わった事の無いこの快楽に、男に生まれた事を神に感謝しつつ…心も体も完全にカトパ◯の魅力に蕩けてしまっていたのだった。
…
…
ミシミシ、ミシミシ、
階段を上がって来るその足音に輝之は目を開けた。
カトパ◯を見ると、頭を激しく動かしながら、輝之の大事な息子を喉の奥で締め付けている。
そして次の瞬間、目の前のドアがガタリ!と開いた。
「ごめんね、お待たせ~♪♪」
そこに立っていたのは、堀◯真希だった。
「………!!」
「あっどうも!」と照れながら堀北に笑顔を送る輝之。
堀北はカトパ◯の後ろ姿を見て、固まっている。
「…な、なんで?」
するとカトパ◯は首の動きをピタリと止めて、ゆっくりと堀北の方へと振り返った。
「えっミカさん?き、キャああ!!」
堀北は叫びながらステンと後ろへ尻餅を付いた。
カトパ◯は暫く堀北を凝視した後、肩を縦に揺らしながら輝之へと視線を戻した。
笑っていた。
間近で見たその笑顔は左右の口角が有り得ない程に持ち上がり、酷く気持ちの悪いものだった。
「グけ!!」
突然それが苦悶の表情に変わり、首を抑えながら苦しみ出した。
「グけ!!…グ…ケケケ!!」
バタバタと苦しそうに手足を振り回している。
まるで、見えない何かに引っ張られるかの様に、カ◯パンの体はジリジリと天井へ持ち上げられて行った。
「………!」
そして、堀北と輝之が見上げるその先には、電気コードの様なもので天井から首を吊るされたカトパ◯の無惨な姿だった。
「ギャああああああ!!!」×2
慌てて立ち上がった堀北が、階段を転がる様に駆け降りた。
続いて輝之も部屋を飛び出す!
スッポンポンだがこの際仕方がない!逃げるが先だ! !
しかし、カトパ◯はそれを許さなかった。
輝之が部屋を飛び出そうとしたその時、後頭部を鷲掴みにされ、体ごとぐりん!と部屋へ返き戻されてしまった。
「ぎゃあ!痛ってぇ!!!」
天井から吊されたカ◯パンが、鬼の形相で輝之を睨み付けている。
その顔に、先程までの美しさは微塵も残っていなかった。鼻、口、耳、なんと両の目からも大量の血が流れ出ている。
そして何よりこの凄い臭気…
「…いかないでよお、いかないでよお、いかないでヨお…」
「……… 」
輝之は、血の涙を流すカトパ◯から目を離す事が出来なかった。
…
…
数秒後、呼び込みの婆さんが慌てて掛け上がって来た時には、既にカ◯パンの姿は消えていた。
しかし、布団の上で放心する輝之の周りには、それが幻覚では無い事を裏付けるかの様に、異臭を放つドス黒い液体が染み付いていた。
「…兄ちゃんすまなんだなあ、はいこれ返すさかい堪忍してな!」
婆さんはすまなそうに、金を返しながらそう言った。
部屋を出る時に気づいたのは、盛り塩された小さな器が部屋の四隅に置いてあり、見た事も無い程に大きな凧状のお札が、天井の四隅にも貼られていたそうだ。
輝之は帰り際に、堀北に耳打ちして聞いた。
ミカさんとは誰かと。
堀北は「…ああ、私がここに来てすぐぐらいにあの部屋で首を吊った子だよ、みんなアレ見てるよ、私は初めて見たんだけどねー♪♪」と笑ったそうだ。
そこは今でも法の目を掻い潜りながら営業を続けていると聞くが、輝之はもう二度と、この一角には近寄らないとその時誓ったそうである。
【了】
作者ロビンⓂ︎
やあ男性諸君待たせたな!少し手直しして復活させてもらったよ…ひひ…
そして女性諸君は絶対に読まないでくれたまえ…ひ…(特例*番長はOK)