俺は友達6人と一緒に肝試しをすることになった。
この辺りではとても有名な『笹ノ原マンション』だ。
マンションは5階建てでそこそこ大きい。
気付けば人数が増えているとか、鏡に血みどろの女が映るだとか、噂は多々ある。
噂が気になった俺達は肝試しという形で真偽を確かめることにした。
念の為ビデオカメラとデジカメも用意した。
何も映らなければそれでいいが、万が一カメラが何かを捉えたらすごい土産になる。
「よし、じゃあ入るぞ」
マンションの中は真っ暗で、懐中電灯の明かりだけが頼りだ。
最初は怖かったけど、暗闇にも慣れてきて2階に上がる頃には普通に雑談をしていた。
その後も順調に3階4階と上がって行ったが変わった物は無かった。
そして5階。
「な、なんか雰囲気変わってね?」
A吾が呟いた。
「ちょっと寒くなった気がする」
R華も小さな声で言った。
声が震えている。
階段を上ったばかりでもうこんなんだ。
正直、みんな先に進みたくなかったと思う。
でもT奈がわざとらしい強気な声で言った。
「大丈夫だよ、気のせいだって!お化けなんているわけないよ」
I輔がそれに続いて
「じゃあ帰りにどっか食べに行こうぜ!これから1番怖がった奴のおごりなー」
二人のおかげでさっきまでの陰気な感じが吹き飛んだ。
気味悪く感じた5階も結局何も出ず、大きな鏡に女が映ることもなかった。
階段を下りて外に出ると、みんな口々に
「なんてことなかったな」「幽霊なんてやっぱりいないんだよ」「あー、怖がって損した」
ということを口にしていた。
その時、G次とS羅があることに気付いた。
「あれ、なんか…」
「T奈いなくないか?」
確認すると、確かに居ない。
すぐにT奈のケータイに電話すると、コールが10回鳴ったところで出た。
「もしもし…」
「T奈!大丈夫か!?」
「わかんない…気付けば誰も居なくて…なんか、声が聞こえるの。足音も…」
「今すぐ探しに行くから。自分が何階にいるか分かるか?」
「ううん。音、近付いてるから…なるべく急いで」
プツッ ツーッツーッ
電話が切れてすぐに俺たちはマンションの中に戻った。
階は5階まであるが、全部を一気に回ると時間がかかるため3つのグループに分けた。
A吾とR華とI輔。G次とS羅。そして俺1人。
2人ずつに分けようと思ったがR華の顔色が明らかに悪かったのでそこは3人にした。
「1人で大丈夫…?」
R華は心配そうに俺を見た。
「大丈夫だよ。俺は5階見るから、R華達は3階、G次達は1階を先に見てくれ。見つけたら即連絡、外で合流な」
そう言うと俺は先に階段を上った。
トントントン…
暗闇に足音が響く。
5階に着くと俺はビデオカメラを構えながら部屋を見て回った。
どこにもT奈はいない。
カメラもちょくちょく確認してたけど何も写っていなかった。
ここには居ないと階段を降りようとしたとき、微かに奥から声が聞こえた。
「……れ…か…だれ、か…」
「T奈!」
声の聞こえる方に走る。
一番奥の部屋から声は聞こえていた。
「T奈、どこだ?」
「ここ、ここだよ!」
T奈は部屋にあったタンスの陰に隠れていた。
「大丈夫か?」
「うん、なんとか」
「よかった…今、他の奴に連絡するからそしたら降りよう」
俺はケータイを取り出してG次に電話をかけようとした。
するとI輔から電話がかかってきた。
「もしもし」
『あ、もしもし!こっちT奈見つけた』
I輔の言ってることが分からなかった。
だってT奈はここにいるんだから。
「は?お前何言ってんの?」
『マジだって。ほら、T奈変わってよ。』
『もしもし、心配かけてごめんね。もう降りてきていいよ』
それは紛れもないT奈の声だった。
『ほら、言ったろ!』
そこから先は聞こえなかった。
ケータイが手から滑り落ちる。
I輔達と一緒にT奈がいるなら、ここで俺と一緒にいるのは…
「逃ガサナイカラ」
後ろから、不気味な声が聞こえた。
ビデオカメラで静かに後ろを写すと、画面にはT奈とはまったくの別人が血みどろで立っていた。
顔の判別ができないくらい、ぐちゃぐちゃになっていた。
そいつが、カメラに近付いてくる。
俺の後ろに、俺の、か、肩に、手、が…
「捕マエタ」
作者楼らむ
私の友達も「幽霊マンション」とか言われるところでビデオを撮ってきました。
私は見ていませんが、友人は「友達の首から上が無くなってる場面があった」と言っていました。
肝試しするのはいいですけど、くれぐれも何かに捕まっちゃわないように…。