私はベンチに座っていた。
「ミノ!ミノ、聞いてる?」
隣に座る親友は、私の名前を呼んだりして話を聞いてもらおうとする。
「…うん。聞いてるよ」
「ほんとに~?あ、そういえばこの前…」
私が返事をすると、嬉しそうに身の回りにあった楽しいことを話すのだ。
その声を聞きながらも、私はなるべく親友を見ないようにした。
あとどのくらい話せば、彼女は満足するんだろう。
きっと満足したら呆気なくいなくなるんだろうな。
ふいに涙がこぼれた。
「え?どうしたのミノ!?」
親友は私の顔を見ていたのだろう。
私は見ようとしなかったのに、彼女はずっと私を見て心配までしてくれた。
あの時もそうだった。
私がいじめを受けていた時、それに気付いて助けてくれたのが親友だった。
私を助けたせいで次にいじめにあった親友を、私は助けられなかった。
親友が自殺する瞬間、私はそこに居合わせた。
校舎の屋上でフェンスの向こう側に居た親友を、私は止めなかった。
『ばいばい、ミノ』
親友は笑って飛び降りた。
「ごめん、ミノ。助けられなくて」
俯いて呟く。
こんな時まで見られないなんて、私はどんな神経してるんだろ。
申し訳なさと後悔で胸がいっぱいになった時、親友は言った。
「…そんなこと、気にしないでよ」
「私はミノに笑ってほしくて話してたのに、ミノが泣いたら意味ないよ。
私、ミノが泣いてると悲しいよ」
親友の声は、泣いていた。
思わず隣を見ると、涙を流しながら親友は笑っていた。
「ほら、ミノも笑って!」
その笑顔は、涙が無ければ生きていた頃の笑顔そのままだった。
「…はい」
笑顔に応えようと、私も精一杯の笑顔を顔に張り付けた。
「うん、ミノはこの顔が一番いいよ。最後に見れてよかった」
「今度こそ、さよなら」
その声とともに、親友は消えた。
残ったのは、親友が座っていた所に置かれた花瓶が一つだけ。
花瓶に挿してある一本の小さな花は、太陽の光を浴びて小さな輝きを放っていた。
「…さよなら」
涙を拭いて、そのベンチから離れた。
もう、そのベンチには座りに行くことはなかった。
作者楼らむ
怖くない怖話です
感動する話を目指したけど、かなりぐだぐだです