これは、私が実際に体験した話です。
私は子供の頃小さなアパートの3階の一番端に住んでいて、おばあちゃんは隣の部屋にすんでいました。
両親共に働いていたので、どちらも家にいない日はよくおばあちゃんに預けられていました。
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そんなある日、私はおばあちゃんの家のリビングでお絵かきをしていました。
アパートの部屋は風があまり入ってこないので、ベランダの窓と玄関を開けて換気をしていました。
リビングからは玄関がよく見えるので、私はちょくちょく玄関の方を見ました。
隣の私の部屋は一番端なので、そこを通る人は両親しかいません。
両親の帰りが待ち遠しい私は午後になるといつもそわそわしていました。
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玄関の前に誰かが来ました。
その人は髪が長く、全身真っ黒な服を着た女性でした。
(お母さんかな)
と思ったけどすぐに違うと思いました。
その人の髪は黒髪でしたが、私のお母さんは茶髪です。
それに、仕事に行く時も真っ黒な服なんか着ていませんでした。
(誰だろう)
女性を見ていると、ふいに目が合いました。
もしかしたら2,3秒かもしれないけど、私にはすごく長い時間に感じました。
女性は目をそらすと、私の部屋の方に進みました。
姿が見えなくなっても私は玄関から目が離せませんでした。
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10分経っても女性は戻ってこなくて、私は部屋の前を見ることにしました。
玄関から恐る恐る部屋の方を覗くと
「あれ?」
誰も居ませんでした。
そんなわけあるはずないと思ったけど、現に女性はそこには居ません。
不思議に思いながら部屋に戻ろうと振り返りました。
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shake
すぐそこに女性が立っていました。
そして、私の顔に自分の顔を近づけて言ったのです。
「内緒」
気付けばもう女性はいませんでした。
泣く子も黙るとはまさにこの事で、私はあまりの恐怖に泣く事もできずおばあちゃんの部屋に戻りました。
しばらくは体が震えたままでした。
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あの顔と声は一生忘れられません。
家族には、まだこの話をできずにいます。
作者楼らむ