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中編5
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夏の夜の夢。

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「明日のデート、楽しみにしてるからね♡」

彩花からのラインに、思わず顔がほころぶ。

僕と彩花は明日の日曜日で付きあって1年になる。

その日曜日に、大きな花火大会が予定されている。

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僕は前々から1年の記念に、彩花と一万発の花火を見に行こうと決めていた。

まだ彩花には、どこにデートに行くのか言ってないが、色んなイベント事に敏感な彼女だ。

きっともうなんとなく予測は付いているはずだ。

だけど僕の用意したメインイベントは、花火大会の後だ。

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先日購入しておいたプレゼントの入った小さな箱を、そっと撫でる。

以前一緒にペアリングを購入した事もあり、サイズも間違いない。

僕ははやる気持ちを抑えるように、早めに寝る事にした。

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〜♫

早朝、着信音で目が醒めた。

枕元の時計を見ると、まだ午前6時半。

今日は1日デートを予定してはいるが、約束の時間にはまだ全然早い。

「誰だ?こんな時間に。。。」

僕は見慣れぬ番号からの電話を取った。

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「もしもし。。。」

『もしもし、浩明さんの電話でしょうか?』

「はい。。そうですが。。。」

『朝早くごめんなさいね。彩花の母です。実は。。。』

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僕は真っ白になった頭のまま、病院へと車を走らせていた。

そんな。。。なんで。。。

彩花のお母さんは、電話口で震える声で

『今朝早く、病院から電話があって。。。

彩花のアパートの下の階で、火事が起きたらしくて。。。っ』

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そこまで言うと、声を殺して泣いていた。

泣いていて話のできないお母さんから、かろうじて病院の名前を聞き出すと、

僕は部屋から飛び出していた。

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病院へ着き、受付で彼女の名前を告げると、集中治療室にいると告げられた。

急ぎ足で向かいながら、嫌な予感が拭えない。

集中治療室の前の通路に着くと、彩花のお母さんとお父さんが僕の足音にこちらを向いた。

どちらも憔悴しきった顔をしている。

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『浩明君、来てくれてありがとう。。。』

お父さんがゆっくりと頭を下げる。

「彩花さんは。。。」

僕の言葉に、二人とも無言のまま集中治療室の方を向いた。

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窓ガラスの向こうに、体中に包帯を巻かれ、あちこち管で繋がれた彩花がいた。

「彩花。。。」

僕やご両親の前を、慌ただしく看護士が行き来する。

医師や看護士の様子を見れば、かなり危険な状態なのは容易に予想がついた。

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時折、お母さんの啜り泣く声や、お父さんの押し殺した嗚咽が聞こえてくる。

僕は、泣いていなかった。

ただ、現実味がなかった。

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ゆうべラインで話したじゃないか。

明日のデート楽しみにしてるねって、言ってたじゃないか。

一昨日は電話で話したよな?

僕にはわからないよ。

なんで。。。なんでキミがこんな。。。

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どれだけの時間を、そこでそうしていただろうか。

集中治療室から出てきた医師が、お父さんに何かを言っている。

手を、尽くしましたが。。。?

なんだよそれ。

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お母さんがその場に泣き崩れた。お父さんはお母さんの肩を抱きしめている。

僕は、フラフラと彩花のそばへと近づいていった。

体中包帯と管だらけで、可愛かった僕の彩花は、そこに眠っていた。

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そう。

眠っているようだった。

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僕は放心状態で、その後、ご両親とどんな会話をして、どうやって帰ったのかもわからない状態で、気付くと自分の部屋にいた。

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「彩花、今日は、大切な日だったんだ。。。彩花。。。」

僕はうわ言のように彩花の名前を呼んでいたが、

ふと、あのプレゼントの箱を見るといても立ってもいられなくなり、

箱を握りしめ、車に乗り込んだ。

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時刻は午後6時半。

もうすぐ、花火大会が始まる時間だ。

僕は花火大会の会場へと車を走らせた。

会場に着き、受付でチケットを2枚渡す。

チケットに書かれていた指定席へと向かい、その1つに腰をおろした。

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午後7時。

アナウンスと共に、最初の花火がうち上がる。

流れるように、次々とうち上がる花火。

「彩花、綺麗だな。。。」

僕は自然に声に出していた。

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『ホントだね』

僕は弾かれたように、彩花が座るはずの席を見た。

そこには、浴衣に身を包み、髪の毛を綺麗に結った彩花が、

うっとりと花火を見上げていた。

僕は、それから何も言わず、いないはずの彩花と、一万発の花火を眺めていた。

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3尺玉や2尺玉、1尺玉の大きな花が夜空を飾るたび、

『わぁー!!綺麗!!』

『浩明!見て見て!すごいね!』

と、変わらぬ様子ではしゃぐ彩花。

本当に、生きているように。。。

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「彩花」

僕は意を決して彩花を呼んだ。

『。。。なぁに?』

「彩花に、渡したいものがあるんだ」

『ふふ、どうしたの?改まって』

「今日は、僕達付き合ってちょうど1年だ。覚えてる?」

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『もちろんよ!忘れるわけないじゃない。ふふ、でも浩明、覚えててくれたんだね。ありがとう』

「もちろんさ。花火は、僕達1年の記念。

そしてこれは、これからも、僕達がずっと一緒にいる為の、記念。

受け取ってくれるよね?」

僕は持ってきていた小さな箱を彩花の目の前に差し出した。

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『っ!!』

彩花の大きな瞳が、ひときわ大きく見開かれ、僕を見つめる。

ああ。。。

これが現実ではないなんて。

こんなにも、キミは何も変わらないのに。

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「受け取ってくれるよね?」

僕はもう一度聞いた。

しばらくの沈黙の後、彩花は震える声で絞りだすように話し始めた。

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『浩明、ありがとう。。。

すごく嬉しい。今日の花火も、この指輪も。

もっともっと生きていたかった。浩明のそばにいたかった。

でも。。。

ごめんね浩明、私はもういないの。わかるでしょ?』

彩花の瞳は濡れていた。

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「わかってる。でも、僕の嫁になる人は、彩花しかいないんだ。これを、受け取ってくれ。受け取ってくれるだけで、それだけでいいんだ。」

僕も泣いていた。

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『浩明。。。私浩明に出逢えてよかった。

こんな形でお別れするなんて思ってもみなかったけど、

でも、私幸せだよ?幸せだったよ。

だからね、浩明。。。』

彩花がそっと僕の手に手を重ねる。

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キラキラと花火の火の粉のような光が、彩花を包んでいる。

彩花の体が、薄くなり始めている。

「っ!彩花!僕はっ。。。!」

『。。。浩明。。。』

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『私はもうじゅうぶん幸せだった。

今度は、浩明が幸せになる番。

私祈ってるから。浩明。。。

浩明が幸せになってくれないと、私成仏できないよ?』

「彩花!まだもう少し!もう少しだけ!!」

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一万発の花火のフィナーレなのか、ラストスパートのように次々と連続で花火がうち上がる。

彩花はその最後の打ち上げ花火と一緒に輝きながら、もう、その姿を消そうとしていた。

shake

[[ドンッ!!]]

ひときわ大きな花火が、そのラストを飾りながら消えていく。

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彩花の姿も、その花火と共に、スゥッと消えていった。

ただ、最後にメッセージを残して。

『浩明。。。私の分まで。。。幸せになって。。。』

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FIN

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ともすけさん、お久しぶりです。
コメントありがとうございます。
そしてお返事が遅くなりごめんなさい┏○ペコッ

そんなに褒めて頂いちゃうと恐縮してしまいます(照)
後追い、きっとしたくなっちゃいますよね。

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まりかさん、おはようございます(^^)
このお話し凄く好きです。短編小説にしたら売れますよ確実に!
まりかさんの作品は相変わらず引き込まれます(o^^o)
俺が同じ立場なら… 後追いしてると思います(泣)

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風邪のせいの鼻水が悪化しました。ティシュが足りません。

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あぅ〜…
ちょっと私も沙羅お姉様を追いかけて、向こうで泣いてきます〜…

花火のように消えていく彼女が想像しただけで…号泣
ちょ、お姉様
沙羅お姉様の場所がわからないくらい視界が歪んでいるのでハンカチ貸してください…w

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