私の小さい頃、我が家には、常に猫がいました。
理由は、ネズミ除けのため。
どの代の猫も、立派に役目を果たしてくれているのか、家の中でネズミを見かけたことはありませんでした。
私が覚えている最初の猫は三毛猫で、
私が赤ちゃんの頃には、すでに家の守り猫をしていたそうです。
私が泣くと、ベビーベットの中が覗けるタンスの上から、
ニャーニャーと鳴き、あやしてくれてるようだったと言います。
次の猫は、その三毛猫が生んだトラキジの猫でした。
その猫は、私の通う小学校によく来ては、
うまく先生たちの目を盗み、私の教室に現れました。
いつも、授業中に現れ、足元にすり寄ってきます。
先生は、
「連れてきたのですか?」と、
私を疑っていたようでした。
先生に怒られるから、来てはいけないよ、
お家で待ってて、と、
追い返したのですが、
次からは、靴箱の上で座って待ってるようになりました。
必ず、帰りの時間には、靴箱の上にいて、
ひとしきり、私の友達に愛想を振り、
帰るよ?と、私が声をかけると、
わかりましたよと言ってるかとように、
ニャァ〜ん
と、返事をして、
トトトトト…、足元に走ってきます。
家に帰っても、常に私の横に陣取り、
宿題をしている時には、
机の上に乗ってきて、
まるで、見守るかのようにその姿を目を細めて見ていました。
その次の代の子は、キジトラの産んだオス猫でした。
この子が、家猫の代を継いだ頃、私は高校生でした。
山の中のど田舎から、街の方の高校に通って、クラブ生だった私は、始発で行って、帰りは夜10時頃に駅に着くという毎日を過ごしていました。
家から駅までは
自転車で20分かかります。
急ぎ足で30分…。
しかし、これもまた、毎日毎日、
オス猫が駅まで、見送りに現れます。
駅までの道では見かけないのですが、
駅に着き、電車の来るのを待っていると
、どこからともなく、
ニャァ〜ん
オス猫が現れるのです。
雨が降ろうが、雪であろうが…。
土砂降りで、ビッシャビシャになろうが…、
必ず、あらわれます。
そして、帰りには、
電車が駅について改札に向かうと、
ベンチに置いてる座布団の上に、
ゴロンっと寝そべり、顔だけ起こして目を閉じて待っています。
名前を呼ぶと、スーッと目を開け、
おかえり、待ってたよと言うかのように、
ニャァ〜ん…。
帰りは、私の自転車のカゴに乗せて、家まで一緒に帰っていました。
家に着いてからも、私の行く先行く先に着いてきて、
ねこまんまを食べてる間に、私が自室に先に入ってしまったときには、
カリカリ、カリカリ
扉を爪で引っ掛けて、ふすまを開けて入ってきて、
なぜか、ラジオの上にもたれるように寝そべり、
私を見ながら、うたた寝をしていました。
妹や弟にも、そうしているのだろうと思っていた私でしたが、
「いやいや、お姉だけだから。
うちの子達、お姉以外、興味ないから。」と
言われました。
確かに言われてみれば、家にいて家族みんなでリビングにいてても、
猫達がいるのは、いつも父か私の横でした。
私が就職を機に、実家を出て1ヶ月した頃、
夜勤明けで、寮に帰ってきた私の元に、
母から電話がかかってきて、
オス猫が、事故で死んでしまったと聞かされました。
単車にはねられ、畑に横たわっていたところを、うちの猫だと気付いてくれた畑の持ち主さんが、毛布に包んで、職場に連れてきてくれたと言うのです。
かわいそうに、衝突の勢いでしょうか、目玉が片方は飛び出している状態だったと言います。それでも、虫の息ではありますが、まだその時は生きていたのだそうです。
父も母も、仕事そっちのけで、病院に走りましたが、間に合わず、道中で永眠したと…。
その姿があまりにかわいそうだったから、
見てもいられず、私に連絡する前に埋葬したのだと…。
「にゃにゃみには、見せたくないはずだ。
こいつは、にゃにゃみの兄ちゃんのつもりでいてたから。」と、
父が言ったそうです。
何も言えず、大声で泣きました。
私も、そう感じていましたから。
まるで、お兄ちゃんがいるような、
暖かくて、優しくて、強くて、頼れる、
自慢のお兄ちゃんのように想っていましたから。
そのあと、しばらくしてまた、新しい猫が我が家に仲間入りしていましたが、
その子達は、父と母に懐いていました。
しかし、私が今までの子にしてもらったようなことは無かったと言います。
…普通の、飼い猫だよと。
私はきっと、三毛の猫一家に、代々、お守りをしてもらっていたんだなぁと思います。
なぜ、私だけなのかは、不明ですが、
振り返ると、
ミケは私のバァちゃん、
次のトラキジは私の姉ちゃん、
その次のトラキジは私の兄ちゃん。
私の大きくなる過程でのとても大切なところを、あの子達も一緒に、
見守って育ててくれてたんだろうなぁと、
思っています。
また、縁があって、家族になれる事があったら、
今度は私が、その子の姉ちゃんに、なってあげれればいいなぁ。
…と、思ったりします。
作者にゃにゃみ
常に家にいて、私の周りに居てた猫は、
私にとても大きなものを残してくれました。
今回は、そのさわりだけになりますが、
追々、猫達と過ごした日々のお話もしていきますねぇ〜。