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一人の女が無人島に流れ着いた。
生きていくことに疲れ未来に希望が持てないからと海に飛び込んだが、願い叶わず死ぬことはできなかった。
「どうして殺してくれなかったの……?」
黒い雲で覆われた空を見上げて一言つぶやく。
濡れた髪も服も何も気にせず、女は深い森へ入って行った。
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駆け落ちした男女の間に一人の女の子が生まれる。
名前は加奈子。
これから三人で幸せになろうね、と母親は加奈子を優しく抱きしめる。
しかし、母親のこの想いは崩されていった。
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加奈子が生まれてすぐ、父親が家を出ていった。
『自分には子供を育てる自信がない』
と置き手紙を残して。
母親は女手ひとつで加奈子を育てると決めたが、子育てをしながらのパートや内職で十分な生活費が稼げるわけもなく、実家に助けを求めた。
しかし、親の言うことも聞かず勝手に出ていって何なんだ今更!と見離されてしまう。
加奈子が小学生になる頃には、母親は全くの別人になっていた。
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煙草、酒、ギャンブルは当たり前。
加奈子を学校に通わせる為だったはずの金は、全て自分に使って借金までしてしまっていた。
若い男と付き合いはじめ、とうとう家に帰って来なくなった。
「アンタなんか生まなきゃよかった」
それが最後の言葉だった。
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加奈子は生きていくためなら何でもすると一人で生きはじめる。
空腹に堪えられないときは万引きをしたり、ゴミ捨て場のゴミをあさったり。
金に困ったときは人の家から金を盗んだり、知らない男に体を売ったり……。
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自分が生きていくためにできることは何でもした。
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そんな加奈子がある男と恋に落ちる。
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友達からでもいいから付き合ってください!
と男からの言葉をきっかけに、加奈子は始めて恋愛をする。
こんな私でもいいの?と自分の過去を話しても、嫌な顔一つせず接してくれる相手に加奈子は人を信じる気持ちを持ちはじめた。
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一年がたち、今度は加奈子から気持ちを伝えた。
「貴方と生きていきたい!
これからもずっと一緒にいてほしい!」と。
素直な気持ちを伝えた加奈子だったが……。
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「アハハハハハハハ!!」
突然相手が笑いだす。
え?と驚きを隠せないでいる加奈子に男は言う。
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「お前バカじゃねぇの?
本気で俺と付き合ってたのか?
お前みたいな女、好きなわけねぇだろ?
遊びとはいえ一年も付き合ってやったんだから感謝しろよ!」
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男は加奈子の頭を強引に押さえつけ、地面にひざまづかせる。
男の高笑いが聞こえてくる。
耳を塞いでも聞こえてくる。
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今まで幸せだと感じていたはずの思い出が、忘れたかった過去で塗り潰されていく。
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やめて……! やめて……!
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やめて……! やめて……!
やめて……やめて……やめて……やめて……
やめてやめてやめてやめてやめて
やめてやめてやめてやめてやめて!!
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「あぁぁあぁあぁ!!」
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我にかえると男が倒れていた。
首の右側がパックリと割れ、血がドクドクと流れている。
加奈子の手には、男から以前もらった万年筆が握られていた。
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ポツ…… ポツ……
ポツ…… ポツポツ……
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雨が降りはじめ、辺りが暗くなる。
雷が鳴りはじめ、滝のような雨に変わる。
加奈子は一人さまよいつづけた。
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荒れた海が見える場所に加奈子はいた。
あと少し進めば間違いなく足を踏み外す、高い崖がある場所に。
ゴロゴロと鳴りひびく雷や荒れた海に誘われるように、加奈子は歩きはじめる。
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「私なんかが天国に行けるわけないよね……」
加奈子は空を見上げて微笑むと、その場から姿を消した。
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深い森をさまよう加奈子。
右も左も、前も後ろも分からないまま。
黒い雲で覆われた空を、カラス達が飛んでいる。
獣でもいるのだろうか?
荒い息づかいや木々が揺れる音が聞こえる。
加奈子は深い森へ姿を消した。
作者退会会員
話をいくつかに分けてるので、このお話だけじゃ意味が分からないかも?(笑)
ごめんなさい(^_^;)