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これは怖い体験ってわけではありません。
結婚していた時に家族で住んでいたアパートで、夜ごと悪夢に悩まされていた時に見た夢のひとつ。
ただアタシ的には、とてもとても恐怖に苛まれ、今でもトラウマになっている内容なのです。
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ふと気がつくと、アタシは壁も天井も床もない空間にいた。
足元には、拡大されたかのようなレゴブロックを重ねて作られた柱のようなものが、まるで螺旋階段のように並べられている。
その柱が立っているであろう床は、どこにも見えない。
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真っ黒な空間から、アタシの足元に向かって伸びているように組み立てられた、「おもちゃの道」。
不意に、子供の泣き声がした。
声の聞こえてくる方角に目を向けると、やたらと背の高い黒い人影が見えた。
手も足も異様に長い。シルエットから男性である事がわかった。
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その男の片手に、何かが引きずられるようにして握られていて、バタバタと激しく動いている。
それが小さな子供であると認識した瞬間。
shake
「ママーーーーー!!」
空間を切り裂かんばかりの悲鳴が聞こえた。
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聞き覚えのある声、いや、いつも、何度も聞き慣れた声。
息子だ。
「○○君!!」
アタシが叫ぶのと同時に、その黒い人影がニヤリと笑うのが見えた。
弾かれたように走りだす。
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男の影は、嫌がる息子を引きずりながらどんどん歩いて行く。
「待って!息子を返して!!」
無我夢中で追いかけながら、声を限りに叫ぶ。
しかし男は泣き叫ぶ息子を引きずってずんずん離れていく。
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アタシの心はものすごい恐怖で支配されていた。
ー殺さないで!殺さないで!!ー
頭の中には考えたくもない予感が広がる。
あと数メートル。
あと数メートルで男に追いつく。
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もう少し!という所まで近づいた時だった。
男は不意に立ち止まり、アタシの方を見やると。
息子の手首を掴んでいる腕を自分の前にぐいっと突き出した。
下には何もない空間に、息子をぶら下げニヤニヤしている。
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息子の悲鳴。助けを求める泣き声。
「やめて!!!やめてーーーーーー!!!」
走りながら叫ぶ。
男の口がひときわ大きく歪んで。
その手を
ぱっ
と離した。
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スローモーションのようにゆっくりと、落下する息子が見える。
「いやーーーーーーーー!!!」
アタシは息子に向かって両手を伸ばし、飛んでいた。
落下するアタシの少し下を、泣きながら落ちていく息子。
はるか下には大きなレゴブロックで作られた柱。
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アタシはなんとか息子に追いついて、息子を抱きかかえたら自分が下になる事だけを考えていた。
あと少し。
あと数十センチ。
アタシの指先がもう少しで息子の手を捉える。
神様!!!
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その瞬間。
アタシの目の前で。
ぐちゃっ
いやな音を響かせて、息子の頭が、ブロックに叩きつけられた。
おかしな方向に曲がる首。
口から飛び散る血しぶき。
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「いやーーーーーーーー!!!○○くんんんん!!」
そこで目が覚めた。
体中が心臓になったみたいに、バクバクと激しく脈打っている。
呼吸もうまくできず、ガタガタと震えが止まらない。
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目が覚めて、周りを見て、今いる場所を確認し、夢だったのだとわかっても。
息子の泣き叫ぶ声が。
落ちていく姿が。
ブロックに叩きつけられた瞬間の息子が。
何度も何度も浮かんでくる。
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夢だとは思えないほどに、リアルな感覚。映像。
夢だったんだと言い聞かせて目を瞑るたびに、また最初から繰り返される夢。
パニックを起こし、アタシは泣き続けた。
今でも時折、あの夢の映像がアタシの脳裏にリアルに再生され、そのたびにアタシは恐怖に震える。
作者まりか
怖くはないかもしれません。
ただアタシは、ただの夢だとは思えなかったんです。
得体の知れない悪意を感じ、その日はその後眠る事ができませんでした。
「眠ればまた息子が殺される」
そう感じたから。
今回も画像をお借りしています。いつも感謝です。
怖いやコメントをくださる皆様、最後までお読みくださった皆様、いつもありがとうございます。
怖いに個別のお礼をしないアタシですが、いつも感謝の気持ちでいっぱいです。