私の住む世界は、いつから変わってしまったのだろうか。
淀んだ空気、汚れた水、枯れ果てた草、腐った食糧。
天を仰げば、四角い空がただそこにあるだけであった。
初めは、家族や仲間もたくさんいたが、随分と減ってしまった。
生きるのは困難だが、それは世の中の道理であり、そんな中でも普段の食事にも困らず、悠々自適な生活を送っていたのに。
世界が汚れ、食糧も無くなりかけると、当然争いが起きた。
家族や仲間同士で殺し合い、自分が生き延びる為にその肉を食べた。
ーーー殺して、食べて、生き延びる。
自然の摂理ではあるが、私はそんな世界を呪った。
ーーーいつからだろう、
こんなにも世界が汚くなってしまったのは。
こんなにも、食糧が無くなってしまったのは。
こんなにも世界が狭くなってしまったのは。
そして、私が最後に食事をしたのはいつだっただろうか。
ギリギリの所で理性を保っていたが、もう我慢の限界であった。
気づけば、我が子を必死に貪る自分がそこにいたのだ。
誰かの犠牲の上に立って、また明日を迎える事ができるこの世界で、私はいつまで生きなければならないのだろうかーーー
ーーーそれから何日経っただろうか。
周りを見渡しても私以外、誰もいない。
あるのは腐った水と草、そして我が子の骸だけである。
限界だった。
身体も既に動かせない。
しかし、これで良かったのかもしれない。
もうこの世界で生きていくのに疲れ果てた私は、四角い空を見上げながら静かに目を閉じた。
その時、薄れゆく意識の中、空から声が聞こえたのを、私は確かに聞いた。
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ーーーお母さん、お母さん、また死んじゃったよ。
ーーーだから、生き物は嫌なのよ。酷い匂いね、捨ててきちゃいなさい。水槽は洗っておくのよ。
ーーーはーい。
作者タカミヤ