〈コックリさんやるから見張ってて〉
友人のKはいつもそう。唐突に言ってくる。ついこの間、彼女の後輩の件(お土産の小瓶)で私を巻き込まないと言っていたはずなのに。どうやら、いつものその場しのぎだったらしい。
『何故、私に頼む?』
〈Faust、そういうのに強いじゃん〉
(そういう問題じゃない)と内心、突っ込む。
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“見張る”というのは、つまり、“もしかした時に何とかしてくれそうな奴”ということだ。そんなに不安なら、やらなければ良いのにと思う。
『Nは?』
〈Nは、忙しいから無理だって。〉
…逃げた。そう思い、さり気なくNを見ると楽しそうにこっちを見て笑っていた。
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『やめとけ、やめとけ。子供じゃあるまいし。好奇心でやるもんじゃn』
〈みんな!やるよ!〉
『聞いてんの⁇』
集まりだすKの友人方、5人。お馴染みの10円玉と50音表。
〈〈〈〈〈コックリさん、コックリさん、いらっしゃいますか〉〉〉〉〉
__彼女ら曰く“遊び”に付き合わされることになった。
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好きな人→あの子はどう思っているのか→失せ物探し→etc…
かたっぱしから質問攻めにしている。
やらないこっちは見ていて恥ずかしい。
…
…
不意に耳鳴りがした。いつもと若干違う耳鳴りが。
(マジかよ。誰だ?あいつは。)
Nも気づいたのか、そっとコッチに来た。
そこにいたのは、のっぺりとしたつかみどころのない男。正直、気味が悪いという一言では終わらない。完全に《無色》。呼んでしまった形だ。
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「アレ、まずくない?」
『ヤバい。』
「帰らないルートだよ。絶対。」
そうNが言うのに合わせるかの様に
〈何で帰ってくれないの⁉︎〉
Kの声がした。ありゃ、やっぱり。
男は相変わらず50音表を眺めている。
『落ち着け。指は絶対はなすな。そんで、質問を続けるの。』
〈もう、ないわ!!!!!!!〉
「『いいから!!!!!!!』」
____しばらく、確かにどうでもいい質問を続けていた。男は何処か楽しそうに答える。
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やがて、男は満足したのか、飽きたのか。雰囲気が変わった。
『もう…止めていい…』
K達は待ってましたとばかりに帰りを促し始めた。
次は直ぐに帰り、参加者は半泣きで皆帰った。残されたのは、Nと私。そして、もう一人の視線。
「うわっ」
『どうし…た…?』
視線に目を向けながら言った言葉はきっとNには聞こえてないだろう。視線。そこには、
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ニタァっと笑うアノ男がいたのだから。
作者Faust
帰って欲しかった…