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中編5
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動物愛護

「うちの猫をどこにやったんですか!」

「知らねえよ。そんなに心配なら首輪つけてつないどけよ!」

「あなたがやったってわかってるんですからね!」

「知らねえっつってるだろうが!

だいたいね、あんたんところの猫が、うちの畑を荒らして困ってたんだよ。

いなくなってせいせいするね!」

「うちのみいちゃんはおりこうなんですよ?そんなことするわけないじゃないですか!」

「はあ?所詮猫だよ?悪さするさ。あんたんとこの猫はしつけがなってないんだ。

ところかまわず掘り返して糞をする。」

「証拠でもあるんですか?うちのみいちゃんだって!」

「証拠って、俺がこの目で見てんだから間違いねえよ。

ほじくりかえしてるから、こら!って追い払ったんだ。」

「見間違いじゃないんですか?」

「いんや、お宅の猫だね。あんた、あの猫に青い首輪に鈴つけてただろ?」

「・・・・・・。確かにそうですけど、青い首輪なんてどこにでもあるわ。」

「バカこくなよ、毎日見てんだから間違いないよ。それに何で

俺があんたんとこの猫をどうにかしなきゃなんないんだよ。」

「だって、うちのみいちゃんをほうきで叩くところ見たことあるのよ!」

「あんたんとこの猫が悪いんだろうが。人が折角植えた作物の苗をほじくるから。

言えば泥棒と同じじゃねえか。他の人の敷地に入ってそういうことするんだから。」

「相手は動物ですよ?仕方ないじゃない!」

「あれ?あんた、さっきはみいちゃんはおりこうだって言ってたじゃねえかw」

「・・・・・・。とにかく、みいちゃんに何かしたら承知しませんから!」

「だから知らないって言ってるだろ!いい加減にしないと警察呼ぶぞ?」

なんだか外が騒がしい。

ご近所の三宅さんが、興奮状態でこちらに歩いてくる。

「どうしたんですか?三宅さん。」

 私は声を掛けた。

三宅さんは涙目になって、私に待っていたように打ち明けてきた。

「うちのみいちゃんが居なくなったんです。

絶対にお隣の山口さんが何かしたに決まってるんです!

みいちゃんは、夕方私が呼べば必ず帰ってくるのに、夕べから

帰ってこないんです。」

「どうして山口さんが何かしたって思うんですか?」

「だってあの人、うちのみいちゃんをほうきでぶってるんですよ?

私、偶然見ちゃったんです。あの人、すごい猫嫌いなんです。

いくら自分が猫が嫌いだからって酷いと思いません?」

「そうなんですか。それは酷いですねえ。」

「そうですよ。うちのみいちゃんは、おりこうで大人しいから

誰にも迷惑なんてかけるはずないんです!」

「そうですよねえ。あんな可愛い猫ちゃんを叩くなんて。

酷いですよね。」

「時田さんもそう思うでしょ?ああ、みいちゃん、どこに行ったのかしら。」

ついに三宅さんは泣き出した。

「まあ、落ち着いてください。

もしみいちゃんを見かけたら、すぐにご連絡しますから。」

三宅さんは私にお礼を言った。

「ありがとうございます。ホント、時田さんみたいな優しくて動物好きな人が

お隣だったら良かったのに。」

三宅さんはしょんぼりと肩を落として、帰って行った。

ほんと、お可哀想。

次の日の朝早く、女性の高く長い悲鳴が近所に響いた。

三宅さん宅からだ。

玄関のポストの前で、三宅さんが震えながらしゃがみこんでいる。

「どうしたんですか?三宅さん!」

私はすぐに三宅さんに駆け寄った。

震える指で、三宅さんはポストのほうをさした。

私は「あっ!」と声が出た。

ポスト口から、みいちゃんの首が出ていたからだ。

体の方から無理やり押し込んだらしく、頭が入らなくて

血まみれの首だけがポストから出ていたのだ。

三宅さんは怒りに震える足で、山口さんの家によろよろと歩いて行った。

そして引き戸の玄関を思いっきり叩いた。

「何だよ、こんな朝早くに。非常識な。」

「ひどいじゃない!なんてことをするの!非常識なのはあんたよ!」

「はあ?何のことだよ。」

「うちの、うちのみいちゃんを殺したでしょ!

警察を呼ぶから!」

そう言うと三宅さんは携帯電話で110番した。

「何のことかわかんねえよ。あんた、頭おかしいんじゃないの?」

「もしもし、隣の人がうちの猫ちゃんを殺したの!早く、早くこいつを捕まえて!」

「何言ってんだ、ばかやろう!俺はそんなことはしてねえ!ふざけんな!」

山口さんが三宅さんの携帯を奪って叩き付けた。

「何すんのよ!」

三宅さんが山口さんにつかみかかった。

私は慌てて止めに入った。

「や、やめて。落ち着いて、二人とも!」

しばらくして、サイレンを鳴らしながら警察が来た。

警察官二人が到着し、二人を引き離し、落ち着かせた。

それぞれが、やった、やってないの水掛け論を繰り広げたが、

結局、三宅さんが猫を殺されて、嫌がらせにポストに入れられたことには

間違いないので、警察は捜査すると言い、二人を別々に尋問した。

捜査の結果結局、山口さんの家からは、猫を殺した形跡は見つからずに

三宅さんの被害妄想ということで型がついたようだ。

それでも三宅さんは会う度に

「あのジジイが、どこか別の場所でやったに違いないのよ。

絶対に突き止めてやるわ。」

と山口さんへの疑いを解かないままだった。

私は家へ帰って、紅茶を飲んで一息ついた。

ふと、庭を見ると、一匹の猫が迷い込んでいた。

私は庭に出て、声をかけた。

「あらあら、どこの猫ちゃんかしらねー。

おいでおいで、いいこちゃんねー。」

猫はにゃーんとかわいらしい声で擦り寄ってきた。

たぶんおなかが空いているのだろう。

「ぼきっ」

鈍い音がした。

「ぶぎゃ」

っと鳴いて私の手の中の暖かい物がぐったりした。

わたくしはうつろな目で、庭のふみにじられた花たちを見た。

「悪い子ちゃんねえ。おばさんちの花をいたずらするなんて。」

次の日も、また別の猫が庭に侵入してきた。

私はあの猫の首が音をたてて折れる感触を思い出すと

異常な興奮と高揚感に包まれるのだ。

私は微笑を浮かべながら猫に近づく。

「あらあら、どこの猫ちゃんかしらねー。

おいでおいで、いいこちゃんねー。」

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ロビンM太郎.com様
コメント、怖い、ありがとうございます。
すっかりアイデアが枯渇してしまったよもつです。
これは苦し紛れに過去作をブログから引っ張り出してきたものです。
寒くて小さい脳みそがさらに縮こまってしまって何も思いつきません。
あ、そういえば、タクry

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コメント、怖い、ありがとうございます。
鏡水花様
猫は虚勢され、犬は吼えないようにされ、半ば自然の条理に逆らってまで人に飼われなければならないのなら哀れですね。かと言って、放置すれば、野良が増えてしまうし。
人との共存って難しいですね。
りこ様
ゆとり教育は関連あるかどうかはわからないのですが、意識が高すぎて、それが柔軟な考えを邪魔している方は多いですね。だいたい、子育てが終わった頃に、経験値が溜まってくるので、私、何故あの頃、小さなことにこだわったのだろう?と考える時が来ます。
にゃん様
恐ろしい事件を起こしている人のまわりに意見を求めると、「普通の人でしたよ?」って答えが多いですよね。普通に見えても、中にいろんな感情が鬱積していることはありますが、実行に移すかどうかが、理性の境目ですよね。

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