俺には4つ年上の姉がいる。名前は玖埜霧御影。私立小倉第一高校3年生。「3歩歩けば牙を剥く」との異名を持つ、壊滅的に人見知りで異常なほどに人間嫌いな、どこにでもいそうにない女の子だ。
姉さんの人見知りかつ人間嫌いは、ある意味病気に匹敵する。姉さんの人見知りかつ人間嫌いは、恐らく先天的なものではない。生まれ持っての性格が著しく歪んでいるわけではなく、幼少期によるトラウマが大きく関係している。つまり後天的なものであり、姉さんが育ってきた環境が大きな原因だと思う。
今更のように言うが、姉さんは玖埜霧夫妻、つまり俺の両親に当たる人達の養子である。幼少期、身勝手な大人の都合により、姉さんは住む家どころか名前さえも失う羽目になった。玖埜霧の苗字になったのは、玖埜霧夫妻の養子に入ったからであるし、御影という名前も本来の名前ではない。本来の名前を改正したのだ。
姉さんの本来の家族や親戚の人達は、揃いも揃って幼い姉さんを養育することを拒んだ。そこには色々な事情があって、やむなくそうしたのかもしれない。子どもには分からない理由や考えがあってのことかもしれない。だが、それはあくまでも大人の主観だ。子どもは大人の言い分には逆らえないし、文句があっても立場的に言えないだろう。幼い姉さんもきっと色々思うことはあったのだろうが、その全てを呑み込んで玖埜霧家に来た。血の繋がらない両親と、そして弟を暮らすことを余儀なくされたのだ。
姉さんにしてみれば、そりゃ溜ったものじゃないだろう。不満が溜っていくことはあったかもしれないが。言いたいことはたくさんあったと思う。吐き出したいこともやるせない気持ちも。住む家や名前を奪われた挙句、見ず知らずの他人を親と慕い、弟と呼ばなくてはならないなんて。あまりといえばあまりな話である。
姉さんがある程度の年齢に達していて、自分で生計が立てられるというのであれば、間違いなく1人で生きていく選択肢を取っただろう。だが、まだあの時の姉さんは小学生だった。年端もいかない少女だったのだ。どう足掻いても、大人の介入なければ生きていくことは出来ない。生きるために、最低限必要なことは衣食住だ。身に纏う服、食事、そして住む家。衣食住のみを求めて、姉さんは玖埜霧家に身を寄せたのかもしれない。
家族になるためではなく、居候で構わない。愛されなくとも、大切に想われなくてもいい。出来ることなら、自分に関わろうとしないで貰いたい。姉さんが玖埜霧家に来た当初は、そんな心境がひしひしと伝わってきていた。玖埜霧家にも、両親にも、俺にも。そう簡単に馴染めなかったのだろう。少なくとも、この時点から既に姉さんの人見知りで人間嫌いな性格は構成されつつあったのだから。
それがどういう風の吹き回しか、何が良かったのかは分からない。だが、姉さんが玖埜霧家に来て1カ月ほど経った時、急に俺と打ち解けたのだ。きっかけが何だったのかはよく覚えていないのだが、俺の友達が家に遊びに来た時に姉さんに会って・・・・・・それくらいしか覚えていない。だが、その日から少しずつ俺や両親と口を聞くようになり、笑顔を見せることも多くなった。一時期は感情がないのではないかと疑うほど、表情の少なかった姉さんだが、よく笑うようになった。
姉さんの社交的な性格は、未だ家族間にしか発揮されてはいない。いや、両親や俺に対して慣れてくれただけでもめっけものじゃないだろうか。それくらい、姉さんが幼い頃に受けたトラウマは根強いのだと思う。身勝手な大人に振り回された姉さんは、他者に対して異常なまでに懐疑的だ。住む家を失い、名前さえも奪われたのだから、当然と言えば当然なのだが。
犬に噛まれた子どもが大人になっても犬を怖がるように____例え傷は癒えても、傷跡は残るのだから。血が止まり、傷口が塞がっても。傷を受けた記憶と傷跡だけは、完全に消えることはないのだ。
○○○
「欧ちゃん欧ちゃん。ちょっと聞いて。ちょっとがダメなら長く聞いて。最近、ネットで見つけた面白い話があるんだよ。これはもう欧ちゃんに語って聞かせようと意気込んでたの」
「ちょっととか長くとかじゃなくて、話自体を聞かないっていう選択肢はあるか?」
「選択肢はあるよ」
「ほう。ショコラ、お前にしちゃ珍しく寛容だな」
「選択肢はあるけれど、却下するまでだよ」
「分かった。じゃあ、話は聞こう。でも右から左へと聞き流すぞ」
「それも却下するよ。てか、何でそんなにやる気ない発言をかますの。私が昭和のカミナリオヤジだったら、頭に来て卓袱台引っくり返してるよ」
「お前、平成生まれじゃん」
「平成生まれと見せ掛けて、平安生まれだよ。何を隠そう、紫式部に源氏物語を書かせたのは、この私」
「お前、今年幾つになるの?」
「女性に年齢を軽々しく聞かないで。マナー違反だよ」
「千年以上生きていても、そういうことは気にするんだな」
てか、14歳だろ。中学2年生なんだから。
お莫迦な掛け合いが繰り広げられたのは、冬休みが終わって新学期初日のこと。この日は午前授業のみで生徒は下校するのだが。俺とショコラは日直当番であるため、机や椅子の整頓、掃除用具室の点検、黒板消しや学級日誌の記入等を行わなくてはならず、他のクラスメートが帰った後も2人で居残っていた。俺が主に整頓や点検作業を引き受け、ショコラに至っては教卓に学級日誌を広げ、今日の時間割や連絡事項等を細かく書き込んでいた時だった。
ショコラが急に顔を上げ、シャーペンを持つ手を止めて話し掛けてきたので、俺は顔だけそちらに向けて応答する。無論、早く帰りたいこともあって俺は手を休めなかったが。ガタゴトとずれている机を元の位置に戻し、窓の錠前をチェック。掃除用具室はさっき確認したし、あとは黒板を綺麗に拭いて、黒板消しをはたいておしまいだ。
黒板を消し始めた俺を、ショコラは横でじいっと見つめている。因みにショコラというのは、帰国子女でもハーフでもなく、れっきとした日本人の女子である。本名は日野祥子といい、名前の祥子をもじったのとチョコレート類に目がないことからショコラと呼ばれている。彼女はクラスのムードメーカー的な存在であり、男女問わず友達は多く、成績も良ければ教師受けもいい。常に日陰者の俺とは対照的に、クラスの人気者だった。
だが。ショコラは一見無害に見えて、実は有害である。どこで仕入れてきた情報なのかは不明だが、オカルトに纏わる噂話や都市伝説などを俺に持ち掛け、相談事と称して厄介ごとに巻き込んでくるのだ。毎回、なし崩し的にショコラの相談に乗る俺もまたアホなのだが。断ろうと意気込んでいても、何故か最後には口車に乗せられてまんまと引き受けてしまうのだ。
「ねえってば。面白い話があるって言ってるんだから、聞くだけ聞きなさいよ」
「・・・・・・お前が面白いって持ち掛けた話が、今まで本当に面白かったことある?」
「え?面白くなかったって言いたいの?」
「え?自覚してないの?」
これには素で驚いた。人をあれだけ面倒事に巻き込んでおいて、自覚がないとは。どれだけ幸せな奴なんだろう。羨ましいよ、その性格。なりたいとは思わないけどさ。
黒板を消し終えた俺が振り向くと、ショコラが両手を伸ばしてドンと黒板に手を付いた。俺は黒板を背に立っており、ショコラがその前に立ち、俺の顔を挟むように黒板に両手を付いている。俗に言う壁ドンというやつだ。但し、本来であれば男子が女子にやるものなんだろうが。女子が男子に壁ドンするというのも、あまり見ない展開である。
「いいから聞いときなさいって。世の中に無駄なことは何1つとしてないんだから」
「お前が話すのはいつだって無駄話だよ・・・・・・」
だって、実りがないもん。ショコラは悪意の種は撒くけれど、刈り取らされるのはいつだって俺だ。溜息を噛み殺す俺を知ってか知らずか、ショコラはにへら、と気の抜けた炭酸水みたいな笑みを浮かべる。
「欧ちゃん、非通知さんって知ってる?」
「非通知さん?変わった名前だな。誰だそりゃ」
「名前じゃないよ。非通知設定で電話が掛かってくるとか言うでしょ。あの非通知だよ」
「冗談だよ。でも、何で非通知にさん付けなんかするんだよ」
そう尋ねると、ショコラは待ってましたとばかりに黒目がちな目を細める。
「非通知さんっていうのは、ゲームの名称だよ。まだ全然有名な話でもないし、浸透してはいないんだけどね。あるネットで見つけたんだ。やり方は簡単。非通知で電話が掛かってくること、欧ちゃんもあるでしょ。非通知で掛かってきてるんだから、相手が誰だか分からない。そういう時、自分から掛け直すことって普通はしないじゃない?」
「まあな。相手が誰だか分からないし、とりあえずはほっとくだろうな」
「でもね、着信履歴を開いて【非通知】を選択して電話を掛けると、繋がることがあるんだよ。それが非通知さんっていうゲーム。物理的に不可能だし、まず非通知設定の電話が掛かってこないと試せないから、条件が揃うまで試せないんだけどさ」
「・・・・・・あのさあ、1つ言っていい?」
俺はショコラに壁ドンされたまま、呟く。
「面白くも何ともない」
ガンッ!!
両手を黒板から話したショコラは、俺の両足の間に右膝を食い込ませるようにして割り込んできた。これぞ俗に言う股ドンという奴である。
「欧ちゃん、一昨日のニュース見た?」
にへら、と。ショコラは人懐っこい笑みを浮かべ、そう言った。返答次第で、次は股間を蹴られそうな気がしたので、俺はこくこくと頷いた。一昨日のニュースって何をやってたっけ。ええと、人気アナウンサーが結婚したとか、他県で地震があったとか、大雪警報が発令があったとか・・・・・・嗚呼、あとは都内の中学生が変死したってニュースでやってたっけ。
「それそれ。中学生が変死したってニュース」
ショコラはビンゴと言って、右手の親指を立てた。
「ニュースじゃさらっとしか言ってなかったけれど・・・・・・あれ、ネットでは結構騒がれてるんだよ。非通知さんをやったせいだって」
「はい・・・・・・?」
そういえば、ニュースでは変死とは言うものの、具体的な内容までは触れていなかった。都内で某中学校の生徒が自宅で変死していて、警察は自殺か他殺、両方の可能性を視野に入れて捜査している、だっけか。その子の両親も事情聴取を受けているとか何とか言ってたけれど、せいぜいそれくらいだ。ニュースを見た当初は、変死という言葉にぞっとしたが、あまり気に留めていなかった。だが、ショコラに言わせれば、非通知さんというゲームをやったことにより、死人が出たということらしい。
「どういうことだよ。非通知さんが何だって?」
「噂によれば、その子は非通知さんに嵌っててね。非通知設定の電話が携帯に掛かってくる度に非通知さんをしていたらしいよ。失敗が続いてたんだけれど、ある日成功したんだって。非通知に電話を掛けたのに繋がったっていうことね。で、その子は電話で会話したらしいんだけど。それからというもの、変なこと言い出すようになったの」
「変なこと?」
「電話が煩い、着信音がひっきりなしに聞こえてくるって訴えてたみたい。その子があまりにも言うから、母親が携帯を見たんだけど、着信履歴を見ても履歴がないんだよ。それを幾ら言っても、その子は納得しなくてさ。煩いから早く電話を切ってって騒ぐんだって。母親が電源を切ってもダメ。その子は煩い煩いって大騒ぎ。しまいには携帯を解約したんだけど、ずっと騒いでるんだよ。電話が煩い、着信音がうるさいって」
「空耳とかじゃないのか?だって履歴がないなら、電話なんてきてないってことだろう」
「でも、その子の怯え方は尋常じゃなかったの。母親や父親がそれぞれ自分の携帯を手にしてるだけで、煩いって騒いで暴れたみたい。学校にも行けなくなって、自分の部屋にずっと引きこもりがちだったんだけど。ある日、物凄い絶叫が聞こえてきて、驚いた母親が駆けつけたら____その子、死んでたんだよ」
ショコラはここでいったん言葉を切った。ごくり、と生唾を呑み込む音が自分でも分かる。ショコラは薄く笑ったまま、声のトーンを若干下げて続きを語った。
「その子、右耳にコンパスの針、左耳にシャーペンを突っ込んで死んでたの。コンパスもシャーペンも、その子がぎゅっと握り締めてたから、一応は自殺だってことになっているけれど・・・・・・幾ら自殺を図るって言っても、異様だと思わない?」
確かに異様と言われれば異様だ。近年、若年層による自殺が多く、小学生や中学生の自殺が目立ってきている。だが、大抵は首吊り自殺とか3階から飛び降りるとか、定番のものが多い。大人のように練炭自殺を行うとか、薬を大量摂取などといった複雑な工程は使わず、長く丈夫なロープ(または紐状のものであれば何でも可だろう)1つ用意すればいい首吊り自殺や、身1つを窓から躍らせるだけで済むといった飛び降り自殺を選択するのが普通だ。右耳にコンパスの針、左耳にシャーペンを突き刺して自殺する、なんていうパターンは初めて聞いた。
ん?ここでふと、疑問が思い浮かぶ。
「おい、ショコラ。ニュースでは確かに中学生が自殺したとは言っていたけれど、具体的な死に方というか死に様までは説明されていなかったぞ。お前、何でそんなに詳しく知ってるんだよ」
「だからー、ネットで騒がれてるって言ったでしょう。もしかしたら、現場に踏み込んだ警察官の誰かが、話題作りとしてネットに書き込んだのかもしれないしね。それか娘の不自然な死に方に疑問を抱いた両親が、どうしてこんな死に方をしたのか誰かに説明してほしくて、ネットで拡散したとも考えられる。ま、何にせよ今のご時世、個人情報なんて全て筒抜けってこと」
「そんなことしていいのかよ。個人情報をばらすとか、犯罪じゃん」
「警察官は罪を犯さないとか、そんなのナンセンスでしょ。最近じゃ警察官による詐欺や強姦犯罪が増加傾向にあるって言うしね。人間っていうのは、時に悪戯感覚で犯罪を犯すものだよ」
「それは・・・・・・いや、ともかくだ。ネットで得た知識を鵜呑みにすることは良くないんじゃないか。それこそ誰かが話題作りのためにでっちあげたデマかもしれないし、たまたまそれに食いついた奴らが騒ぎを大きくしている可能性だってあるだろうに」
「それも一理あるよね。だからこそ、噂の真偽を確かめることが必要なんだと私は思うんだよね」
ショコラはようやく右足を引っ込めると、制服のポケットからスマホを取り出した。慣れた手付きでスマホを操り、俺の顔面にスマホの画面を突き出した。ショコラが示したのは着信履歴の画面だ。幾つもの名前が縦割りに並ぶ中、1つだけ「非通知」と表示されている。俺はぎくりとしてショコラを見た。ショコラはふふふっと小さく笑う。
「昨日、偶然にも非通知で電話が掛かってきたの。私は登録している番号の人から掛かってきた電話にしか出ない主義だから、結局出なかったんだけどさ。これ、非通知さんを試せるのにうってつけだよね」
「・・・・・・止めとけって。懲りない奴だな」
「探求心を求めることは若者の特権でしょ」
「好奇心が猫を殺すって言葉、知ってるか」
俺達はしばらく無言で睨みあう。ショコラはあからさまに不機嫌そうに河豚みたいなふくれっ面をしていたが、ふんと鼻を鳴らし、スマホを操作する。やがてスマホを耳に当てた。どうやら俺の忠告など最初から聞くつもりなどなかったらしい。要は非通知さんを試しているのだ。
しばらくスマホを耳に当てていたが、落胆したように首を振る。どうやら非通知さんは成功しなかったらしい。そりゃ普通に考えれば、非通知できた電話に自分から掛け直すことなど出来ないに決まっている。俺はそれみたことかとほくそ笑むと、ショコラはがっかりしたように「あーあ」と肩を竦めた。
「やっぱりうまくいかんものねえ。つまんないの」
「ま、所詮は非通知さんもデマだってことだろ。これに懲りたら、ネットで得た情報を鵜呑みにしないことだな____さて、帰ろう」
黒板も拭き終わったことだし、あとは職員室に行って担任の百司先生に学級日誌を届ければ、日直当番の仕事はコンプリート。俺は自分の席に戻り、帰り支度を始めた。ショコラは「はあーあああ・・・・・・」と落胆しきったような溜息を吐き、書き終えた学級日誌を手にした。
「じゃー、これ職員室に届けてくる・・・・・・」
「あ、さよけ」
じゃあ、遠慮なく。
と、思ったけれど。トイレに行きたくなってしまい、鞄を机に置いた。ショコラは既に教室を出ており、残っているのは俺だけだ。ショコラの後を追うように教室を出たが、廊下に人影はない。
あいつ、歩くのはえーな。
○○○
トイレを済ませて教室に戻ってきた俺は、鞄を取りに自分の席へと向かった。すると、机の上には鞄と、それから見慣れないスマホが1つ。俺のスマホではない・・・・・・ということは、隣の席の奴が忘れていったのかな。でも、何で俺の席に・・・・・・さっき、1度帰ろうとして鞄を持った時にはなかったように思うのだが、見間違いか?
「あ、これもしかして」
ショコラの、か?さっき、非通知さんを試していた時に操作していた機種と同じ物だった。ショコラの席を見るが、鞄はない。俺がトイレに行っている間に帰ったのだろう。何故、俺の席にスマホを置いていったのかは知らないが・・・・・・。
「うまく追い付ければいいけど・・・・・・」
今から走れば、昇降口か正門で捕まえることが出来るだろう。俺は鞄を背中に背負い、ショコラが忘れていったであろうスマホを片手に教室を出て行こうとした。
ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・
電子音がした。この音・・・・・・携帯の着信音か何かか?はっとして振り向く。すると、異様な光景が目に飛び込んできた。
俺以外、誰も残っていない教室内____のはず。だが、席が全員分埋まっていたのである。
「えっ、えっ、えっ。な、何これ」
無論、下校したクラスメートが全員教室に戻ってきたとかそういうわけじゃない。それに最も異様なのは、その顔触れだ。席についているのは至って普通の人間に見える。黒髪に痩せ形の男子中学生。詰襟の学ランを身に着け、上履きに入っているラインは黄色だ。
うちの中学校では、学年別に違うラインの入った上履きを履くというシステムがある。1年生は赤、2年生は黄色、3年生は青というように。因みに毎年そうだと決まっているわけではない。例えばの話、俺は来年3年生に進級するが、上履きはそのまま黄色いラインの物である。繰り上げで今の1年生は2年生へと進級するが、上履きは赤いラインのまま。そして新入生である1年生が赤いラインの上履きを履くことになる。
閑話休題。上履きのラインが黄色いことからして、「そいつら」が全員2年生だということは理解出来た。顔も知っている人間の顔だ____というより、見慣れた顔であり、見飽きた顔である。知り尽くした体躯であり、使い慣れた体躯だ。つまり、
「俺だ」
そう。全ての席に座っていたのは、全員俺だった。
トッペルゲンガーの話を聞いたことがあるだろうか。ある日、何の前触れもなく、自分以外の「自分」に出逢ってしまうという怪談話である。世界には自分と同じような顔の人間が3人いるとはよく聞いた話であるが、この場合は「同じような顔」ではない。まるっきり同じ造りの顔を持つ、もう1人の自分に遭遇してしまうのだ。
もう1人の自分に出逢ってしまうと、近いうちに死が訪れるとか不幸になるだとか、そういったオチも付いてくる。オチ自体も勿論怖いが、もう1人の「自分」という存在ほど気味悪いものはない。自分であり、自分ではない何か。正体不明の「自分」。そんな人間が本当に存在するかどうかは定かではないが、仮にいるのだとすれば耐え難い真実である。
トッペルゲンガーであれば、もう1人の「自分」だけで済むのかもしれない。だが、俺が目の当たりにしている光景は、トッペルゲンガーの存在を凌駕していると言っても過言ではないだろう。何しろもう1人どころか、クラスの席が埋まるほど____俺が所属しているクラスは37人。つまり、37人もの俺が存在しているということになるのだから。
「は、ははは、ははは・・・・・・」
人間というものは、極限状態に陥ると笑うように構造されているのだろうか。俺は乾いた笑い声を立てながら、呆然とその場に立ち尽くす。37人もの俺は、そんな俺にお構いなしにある動作を繰り返していた。やや俯き加減の姿勢のまま、スマホの操作をしているようだ。
ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・
ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・
ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・
ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・
ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・
そこここから一斉に電子音が鳴り響く。37人もの俺充てに一斉に電話が掛かってきたのだろうか。だが、37人中、誰も電話に出ようとはしない。電子音は鳴り止まず、次第に音量が大きくなってきた。
「うるせえ・・・・・・!」
流石に耐え切れず耳を塞ぐが、まるで効果はない。無機質な電子音が教室中に鳴り響く。教室を出て外部に逃げ出せば、或いはどうにかなったかもしれない。だが、あまりに電子音が煩くて、その場を動く気力が奪われる。その場を逃げ出す気力があるのならば、耳を塞ぐ両手に力を込めたいのだ。呼吸すら煩わしい。それくらい煩い。意識が全て電子音に支配されていく。
普段はあまり気にならない電子音が、今日に限って酷く耳障りに感じる。
ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・
ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・
ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・
ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・
「あ‘‘-っ、あ‘‘-っ、あ‘‘-っ、あ‘‘-っ」
煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。煩い。
「煩い!」
耳を塞いだまま、どたんばたんと転がるようにして自分の席へと向かう。ぱっと両手を離すと、ぐおんぐおんと大音量の電子音が脳髄に響く。鼓膜が傷付いたのか、耳の奥がジンと痛い。もう限界だ。気が触れたように鞄を開け、筆箱を取り出した。そしてシャーペンを2本取り出すと、左右両の手でしっかり掴み、耳の中に突っ込もうと勢い良く振りかざして_____
「だめえええええええええええええええっ!!!」
教室中に鳴り響いた大音量を遥かに上回るくらいの絶叫にも似た声。その声がしたのと同時に、がたんと乱暴に押し倒された。後頭部と背中を強く床に打ち付け、一瞬息が詰まる。激しく咳き込みながら見上げると、姉さんが俺に跨っていた。しかもバスタオル1枚という、凄まじく防御率の低い姿で。
「大丈夫!?大丈夫!?大丈夫!?生きてる!?」
「あ。はい・・・・・・。生きてます」
教室中に鳴り響いていた電子音が、若干小さくなった。少なくとも、姉さんの声と自分の発する声がかろうじて聞こえるくらいには。
「良かった・・・・・・、良かった・・・・・・、生きてた・・・・・・」
姉さんは泣いていた。目の周りが真っ赤だし、目も充血している。ぼろぼろと、大粒の涙を流して泣いていた。産声すら上げずに生まれてきたのではないかと疑うくらい、感動的な映画を観ても、絶滅危惧種の動物を特集したテレビを見ても、目頭を押さえずにはいられない感動的なストーリーの小説を読んでも泣かない姉さんが。滅多に泣かない姉さんが泣いている。それが凄く衝撃的だった。
こんな風に泣く姉さんを見るのは____いつぶりだろう。
嗚咽を漏らし、手の甲で何度も顔を擦り上げる。だが、一向に涙は止まらないようだ。その仕草があまりにも子どもっぽく、幼く見えた。少なくとも、いつもの姉さんとは明らかに違う。どんな時だって冷静沈着で、クールで、礼儀知らずで。ずけずけした物言いに無遠慮な態度。空気は読まないし、自分勝手だし、我儘だし、乱暴だし、凶暴だし、凶悪だし、寝起きは悪いし。
でも____弟思いだ。
「欧ちゃん、生きてた・・・・・・・。欧ちゃん、生きてた・・・・・・。良かった、生きてた・・・・・・」
「うん、うん、うん。生きてるよ・・・・・・」
大丈夫。生きてるよ。
○○○
姉さんが異変を感じたのは、ちょうどお風呂に入っていた時だったらしい。清めだか禊だか知らないが、姉さんは帰宅した後はすぐに風呂に入ることを日課としている。穢れを落とし、清浄を保つとか何とか聞いたことがあるのだが、よく覚えていない。
髪の毛を洗っている最中に、姉さんはふと嫌な予感がしたという。こうしたヤマ勘は、姉さんの場合に至っては外れたことがない。虫の知らせというか、言いようのない不安を感じたらしい。俺の身に何かあったのではないかと危惧した姉さんは、いてもたってもいられなくなり、シャンプーの泡を落とし切らないまま風呂場を出た。体を拭くことも髪を乾かすこともせず、タオル1枚を巻き付けたまま、俺に電話をしたらしい。
だが、肝心の俺は電話に出ない。何度か電話をしたらしいが、一向に繋がらない。ついに姉さんはタオル1枚を巻き付けたまま、靴も履かずにここまで走ってくるという暴挙に出た。そう言われて初めて気が付いたが、姉さんの髪には落とし切れていないシャンプーの泡が残っていたし、体もところどころ湿り気を帯びている。当然だが湯冷めしたのだろう、肌はひやりと冷たい。
赤信号にも関わらず、無我夢中で渡った時に転んだというので足を見れば、確かに右膝は擦り剥けて血が滲んでいた。靴すら履かないで来たため、足の裏も汚れて傷だらけだ。
どうしてそんなことをしたのかと問えば、姉さんは掠れた鼻声で呟く。
「欧ちゃんが心配だったからに決まってるじゃん」
全く・・・・・・本当にもう。
俺のために、タオル1枚というあられもない姿のまま、靴も履かずに駆けつけてくるだなんて。世間体とか、体裁とかあるだろうに。年頃の高校生が、ほぼ全裸姿で町中を疾走していたなんていう噂が立ったらどうするんだよ。しかもその理由が、弟が心配だったからというそれだけのことで。
本当____ただ、それだけのことなのに。
「・・・・・・心配掛けて、ごめんなさい」
素直に謝った。謝る以外に何も思い付かなかった。自分のために、ここまで尽くしてくれる姉さんに、今の俺が出来ることと言えば謝ることだけだ。全身全霊を込めて、心を込めて謝った。姉さんは俺に跨ったまま、すんすんと鼻を鳴らしていたが。「大莫迦者」と一言呟いた。
「絶対許さない。土下座して謝っても赦さない。一生怨んでやる。人に心配掛けやがって、この大莫迦野郎」
「仰る通りです・・・・・・。何も言い訳はございません」
へっちん。姉さんがくしゃみをした。ともかく、バスタオル1枚のままでは風邪を引いてしまう。俺は何とか姉さんにどいて貰い、学ランを脱いで渡した。
「これ着て。何も着ないよりはいいから」
「・・・・・・」
姉さんは無言で受け取ると、バスタオルを巻き付けた上から学ランを羽織る。俺と姉さんでは身長差があるため、やや小さいのか窮屈そうだった。だが、着ないよりは幾分マシだろう。姉さんが学ランを羽織っている間、これまでの経緯をかいつまんで説明した。
ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・
ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・
ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・
ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・ピリリ・・・
姉さんはぐるりと教室内を見回した。そこにはあろうことか37人の俺がスマホを片手に操作している。電子音は、姉さんの来訪と同時にほんの少し弱くなった。だが、未だに大音量のままだ。こんなに大きい音がしているのに、何故誰も駆けつけてこないのだろう。
職員室には百司先生をはじめ、他の職員だって残っているだろうし。下校時間が過ぎたとはいえ、全校生徒が1人も校舎内に残っていないとは考えにくい。それこそ、俺と同じように日直当番の奴だっているだろうし。近隣の住民だって、近所の中学校から馬鹿でかい大音量が聞こえてきたのならば、驚いて様子を見に来るなり通報するなりするだろうに。この大音量は明らかに尋常ではないのだ。
そう話すと、姉さんは「怪異相手に常識を求めなさんな」と言った。
「怪異は存在そのものが非常識なんだから。怪異に常識は通じないし、常識は怪異に通じない。この大音量だって、私達以外の人間には聞こえていないのかもしれない」
それにしても、と。姉さんは床に転がる2本のシャーペンを構えて、1番近くにいた俺の顔を持つ「怪異」とやらに近付く。さきほど、我を失った俺自身が自分の両耳に突っ込もうとしていた物だ。
「非通知さん、ね。ふうん、初めて聞いた」
「え。姉さん、知らなかったの?」
いや、俺も非通知さんは今日初めてショコラから聞いたのだけれど。オカルトに詳しい姉さんなら、もしかして知っているのではと期待していたのだが。まさか知らないとは・・・・・・。
「多分、まだ出始めたばかりの噂だったんだろうね。スクエア、1人かくれんぼ、こっくりさん____今でこそこれらのゲームは浸透しているけれど、出始めたばかりはただの噂に過ぎなかった。根拠のない噂話も、拡散され、多くの人間が信じることによって力を持つ。誰かが試したことによって実際の被害を受けたともなれば、一気に加速してヒートアップする。【ただの噂話】から【本当】に昇格する。簡単にまとめると、噂が1人歩きするってこと。でも、」
完全体より不完全体のほうが厄介なんだよね。【本当】の現象として構成しきれていない分、怪異としても成立しきれていないから。
そこまで言うと、姉さんは2本のシャーペンを振り上げ、俺の顔をした怪異の耳にぶすりと突っ込んだ。ぐぐぐっ、と力を込め、ぐりぐりと押し込むようにシャーペンを回転させていく。しかし、怪異はぴくりとも反応しない。悲鳴を上げたりのたうち回ることもしない。ただ、両耳からはじくじくとした透明な液が垂れてきて、見ているこちらはいい気分ではない。
あのシャーペン、もう使えない・・・・・・。
「ダメか。物理的な攻撃は効かない・・・・・・なるほど。じゃあ、次はどうするかな」
姉さんはぽいとシャーペンを放り投げると、俺の顔を持つ怪異が手にしているスマホを奪おうとする。だが、それはすぐ止めた。そうして止めたのかは、近くで見ていた俺にもすぐ分かった。今になって気付いたのだが、俺の顔を持つ怪異の手とスマホは一体化していたのだ。一見すると手に持っているようだったが、よくよく見れば持っているのではなくてくっついている。どこからが手でどこからがスマホなのか分からないくらいに、溶け合って一体化している。
「これもダメか。うーん、どうしよう・・・・・・」
姉さんは落ち着き払っているように見えたが、やはりイラついたのだろう。俺の顔を持つ怪異にバチンと平手打ちを1発かました。そいつはぐにゃりと粘土のように、首が180度曲がった。それでも気が済まなかったらしく、姉さんは右手を水平に鋏の形にすると、ぶすうっ、と容赦なく目潰しをした。血こそ出なかったものの、やはりじくじくと透明な液が両目から流れる。俺は眩暈がした。
「欧ちゃん。ショコラって子が非通知さんを試したのは欧ちゃんのスマホじゃなく、自分のスマホなんだよね?」
目潰しをしたまま、姉さんが聞いてくる。俺は首を縦に振り、力なく頷く。幾ら怪異相手とはいえ、自分と同じ顔をした奴が酷い暴力を受けているのを見るのは耐え難いものがある。暴力っつーか、普通の人間が相手なら死んでるよ。しかも、素手で目潰しって・・・・・・。
姉さんが両目に突っ込んだ人差指、中指をひゅっと引っ込める。俺の顔を持つ怪異は、それでも姿勢を崩すことなく、健気に席についている。目潰しをされたせいで、目があった位置にはぽっかりと穴が開いていて、じくじく液が垂れ流されている。場違いだが気の毒だった。
「スマホ貸して」
「スマホ・・・・・・」
「ショコラって子のスマホね。早く貸して」
そう言われて、そういえばどうしたっけかと気付く。確かショコラがスマホを忘れていったと気が付いて・・・・・・スマホを手にして、鞄を持って、教室から出ようとした時に電子音が聞こえてきて____あった。教室の扉付近に無造作に放り出されてあった。傷でも付けていたら、後でショコラに文句を言われるかもしれないが、そこはそれ。ダッシュでスマホを取りに行き、姉さんに渡す。
姉さんは無言で受け取ると、画面をスライドさせ、何やら操作している。と、電子音がぴたりと止んだ。その代わり、パソコンにバグを起こした時のようなビーっとした音が大音量で聞こえた。
37人の俺は急にがくがくがくがく・・・・・・と頭を小刻みに揺らし始めた。まるで痙攣を起こしているようである。それこそバグを起こしたように。そして、まるで気を失ったように、するすると椅子から崩れ落ち、床に這いつくばった。そしてここからが更に気持ち悪いのだが、磁石がくっつくように37人の俺達もくっつき始める。頭と足が逆様だったり、腕だけがくっついていたり、後ろ向きだったり。くっついていれば問題はないらしく、おしくら饅頭のように隙間なく身を寄せ合う。
そしてそのままごろごろとボールのように転がり、教室を出て行った。後を追う気力など微塵もない。どころか脱力して、へなへなとその場にしゃがみ込んだ。あはは・・・と無意味な笑いが零れる。
姉さんは「良かった。祓えた」と呟き、足早にこちらに来た。そして俺の前にしゃがむと、スマホの画面をこちらに見せる。それは電話設定の画面だった。見れば、ある設定が掛けられている。
「非通知で掛かってくる電話を着信拒否にしてみた」
なるほど。それがそういう理屈だったのかは分からないが、功を為したようだ。いや、怪異相手に常識が通じないのであれば、当然理屈も通じないのだろう。
非通知さんを非通知拒否にする。それは理屈というよりは屁理屈に近い。だが、それで事が丸く収まったのだから____よしとするべきなのだ。あまり深くは考えない。考えたくもない。好奇心が猫を殺すと言うやつだ。
○○○
翌日。俺は昨日の一件で風邪を引いた姉さんの看病のために学校を休まされた。それは姉さんの指図ではなく、両親の指図だ。勿論、両親には非通知さんや怪異云々の話はしていない。ただ、帰宅時間が遅い俺を心配した姉さんが、湯上りですぐに俺を探しに行って風邪を引いたということになっている。流石にバスタオル1枚で町中を疾走したことについては伏せておいたが。
両親は根っからの仕事人間であり、子どもが風邪を引いたくらいでは仕事を休もうとは思わないらしい。だが、俺は朝から両親にお小言とお説教を長々とくらい、尚且つこう言われた。
「御影が欧介のせいで風邪を引いたのならば、御影の風邪は欧介が治しなさい」
父さんも母さんも、姉さんにはとことん甘い。それは養子だからと気を使っているのではなく、自分の子ども以上に大切に想っているからだ。たまに姉さんを猫可愛がり過ぎやしないかと不満を抱く俺だが、姉さんは姉さんで両親のことは心から尊敬し、言い付けには絶対に背かないので、まあ、フェアなんだろう。
ということで、今に至る。姉さんが風邪には摩り下ろした林檎がいいと騒ぐため、さきほど近所のスーパーで林檎を購入し、慣れない手つきで摩り下ろしている。さっき部屋を覗いたら、お風呂に入れなくて気持ちが悪いと騒いでいたから、洗面器にお湯を張ってタオルで体を拭いてろう。風邪薬はあったかな。冷えピタはあったっけ。寒いから添い寝しろとも言われているし・・・・・・今日は徹夜になりそうだ。
その時、ポケットに入れていたスマホが鳴った。誰だよこんな時に、と思いながら画面を確認する。
それは非通知で来た電話だった。俺は迷うことなく即答で切る。もしかしたら、昨日スマホを教室に忘れたショコラからかもしれない。だが、今は非通知で来た電話に出たくはない。ショコラのスマホは、姉さんが回復して俺が学校に登校出来るようになったら返そう。勿論、ショコラ以外の誰かかもしれないが・・・・・・誰だか気にならないと言えば嘘になるが、止めておく。
好奇心が猫を殺すとは、よく言ったものだ。
作者まめのすけ。