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某国際ターミナルにて…。
計16台もの車が列をなして係員に誘導され地下に次々と入っていく。
車から降りてくる老若男女。
スーツ姿に身を包んだ男達が、その集団を囲みエレベーターに乗り込む。
エレベーターの階層表示には普通では考えられない数字が素早く切り替わる。
地下158…159…169…200…666。
エレベーターの扉が開くと豪勢な館の雰囲気を漂わせる広場に出る。
誰も一言も喋らないまま、ひたすら長い廊下を歩く。
「ようこそ!皆様!」
その声は大理石で造られた階段の上から聞こえる。
「いい趣味だな、カフマンよ。」
集団の先頭に立っている老人が辺りを見渡し褒める。
壁一面には、様々な人の肖像画が飾られている。しかし、目を凝らすと監視カメラが無数に設置されていることに気付く。
「だが…監視されているのは気に食わんがな。」
カフマンは階段を降りて、老人と後ろの集団を部屋へと案内する。
「さあ、こちらへ。ロス・イルムテラ!」
謎の言語を純金で造られた鷹に叫ぶ。
その言葉に反応してゆっくりと動き出した。
「ささっ!入って下さい。お好きな席へどうぞ」
集団の最後の一人が部屋に入ると
鷹は再びゆっくりと入り口を閉じた。
「それでは200年振りの会議を開催します。」
カフマンは手を叩くと突然、何もなかったテーブルの上に首輪らしきものが現れた。
それと同時に騒めく。
「安心して下さい、これを首に付けることによって言語が即座に翻訳されるんです。スムーズな会議をするために私が開発しました。」
老人が首に翻訳機を装着すると他の者達も、それに続く。
「あれほど機械音痴だったお前が開発したのか?」
その問いにカフマンは笑い
「ええ、45年も掛かりました。」
その45年も彼らにすれば100時間くらいだろう。
カフマンは書類を手に取りメンバーの紹介をしていく。
まず、私は”削除済み”の長であり、9代目のカフマンと申します。
そして私の種族と長年に渡って戦争をしてきた”削除済み”の王である、ドラキリ・アスエル。今では友好関係になりました。
その隣に居るのが今は亡き科学者が創り出した”削除済み”のフランク。
その向かい側に居るのが、”削除済み”のリーダーであるグールー。
そして数多の伝説を持つ、ドラゴン様。
そして私の最高の友人で家族でもある、”削除済み”とその夫である”削除済み”です。名は伏せておきます。
以後省略。
皆様にお集まりいただいたのは
精霊に属する怪物によって人間が殺される事件がこの国で多発している問題について。
ドラキリが食い入るように
「この国で?どんな怪物なんだ?」
カフマンは椅子に座り写真をモニターに映す。
「魂を喰らう鬼です。吸魂鬼、またの名をサイキック・ヴァンパイア。」
ドラキリは映し出された写真を睨み
「どういうことだ?ヴァンパイアだと?」
カフマンは話を続ける。
「この国にしか存在しない種族の怪物。ドラキリ様と同じ不死身の怪物です。」
ドラゴンは鼻から火を噴きながら
「聞いたことがある。人間が封印に成功したはずでは?」
カフマンは首を横に振り、
「超常現象調査委員会の調べでは封印を人間が解いたと。」
ドラキリは椅子に深く寄りかかり
「だから、人間は下等生物なのだ!ことの重大さを理解していない。」
グールーはドラキリをなだめるように「まあまあ、歴史を知らなければ仕方あるまい。どの種族にも間違いはある。カフマン…解決案はあるんだろうな?」
真剣な表情で
カフマンは周りが騒めくハンターの名を口にした。
「鉄仮面の男、ヘルシング、ダンピール。」
ドラキリは椅子から立ち上がる
「ヘルシング?ダンピールだと?冗談じゃない!奴らに頼めば我々も始末されるぞ!」
ドラゴンは落ち着いた様子でなだめる
「始末されることはない。人間に危害を加えない限り始末の対象にはならん。100年も彼らの信頼と契約を守ってるからこそ、優々と地上を歩けるのだ。」
ドラゴンは釘をさすように周囲の者達にも告げる。
カフマンは周囲を見渡し
「ダンピールは今回の件が単なる偶発的に起きたのではないと睨んでいました。」
ドラキリはどっしりと椅子に座り
「どういうことだ?」
グールーはコーヒーを飲み
「計画的な復活だと?」
カフマンが頷き返事をしようとした時だった。
フランクが初めて口を開く
「魔女だ。」
周囲の者達がフランクを見つめる
カフマンが聞き直す
「魔女ですか?」
ドラゴンは手を顎に当てて
「確かに黒曜石の箱は魔女の手助けが無ければ開かない。」
カフマンは資料を眺めながら否定する。
「いや、黒曜石の箱を開けたのは
魔力すら持たぬ村人です。」
グールーは資料に手に取り
「では、魔女の手助けなしに村人が開けたと?」
ドラゴンは鼻から火を噴き
「それは無理だ。私の火力、カフマンの腕力を持ってしても傷付けることすらできん。」
「だが、”削除済み”の王なら開封できるだろ?」
声の主は暗闇から現れ
ドラキリの後頭部に銃を突きつける
「お、お前はヘルシングではないか!」
ヘルシングは葉巻に火を点けて銃を降ろす。
「これは魔女か”削除済み”になら開けることは出来る。だが、この国で復活させるメリットがわからん。」
カフマンは指を鳴らすと暗闇から椅子がヘルシングの後ろに現れる
ヘルシングは椅子にどっしりと座り
「怪物達のお偉いさんが答えを出せないなら、この問題は奴に聞く以外ないだろう。」
ドラキリは咳き込みながら問う
「ゴホッゴホッ!奴とは誰だね?」
ヘルシングはニヤリと笑い
「サンジェルマン伯爵だ。」
カフマンは紅茶を飲みグラスを持ったまま立ち上がる。
「それほど危険な問題だ、ということですか…」
ヘルシングは葉巻の煙を鼻からだし
「吸魂鬼自体は問題じゃない。誰が、何の目的の為に復活させたのかが問題なんだ。」
カフマンは、ため息を零し
「喚べますか?サンジェルマンを」
ヘルシングは笑いながら
「あぁ…呼べるぜ。それには金貨、ダイヤ、エメラルド、ルビーが必要だ。」
ドラキリはヘルシングを睨み
「そんな物で呼べるのか?第一にそれだけの財宝を持ってくるわけないだろ」
ヘルシングはテーブルに足を乗せて
「ドラゴンなら、持ってるはずだ。そうだろ?ドラゴンの兄貴。」
ドラゴンはポケットを探り
財宝を取り出した。
「これで足りるのか?」
ヘルシングはニヤリと笑い
それを掴み純金で作られた杯に入れ
燃やす。
「さて、もう少しで現れるはずだ」
3分間の静寂の後にテーブルの中央の空間に亀裂が走る。
ヘルシングは酒の入ったボトルを取り出し
「来たか…。カフマン、交渉するのはあんただ。」
ポッカリと空いた次元の空間の先には豪勢な椅子と様々な果物が並ぶテーブルが見えるが、そこにはサンジェルマン伯爵はいない。
ヘルシングが銃を取り出し
空間の部屋にある鐘に目掛けて発砲する。鐘の音が響き渡ると何者かの声が響き渡る。
「ちょっと待っててくれ!こっちは裸なんだ!」
ヘルシングは銃を降ろし
「早くしてくれ、サンジェルマン!お偉い方々がお待ちだぞ!」
サンジェルマンは慌てる様子で
「風呂に入ってたんだよ!なんなら裸でいいなら、直ぐだぞ?」
顔を空間の端っこから出し、こちらを覗きニコッと笑う。
「これは、これは、カフマン殿!少しお待ちを…」
To be continued…
作者SIYO
この作品は裏物語です。
表物語の投稿はまだまだ制作中なので
気長に、気長に、
あ、投稿された!見てみよ〜。のテンションで
待っていてください( ^ω^ )