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生ぬるい風の吹く夜は… ~第一夜~

中編3
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生ぬるい風の吹く夜は… ~第一夜~

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『チッ、まだ梅雨入り前だってのにじめじめしてんなぁ… なんとかもってくれればいいけど…』

ゴールデンウィークが明けたばかりだというのに、その日は朝から蒸し暑かった…

空を見上げる…

雨の降りだしそうな感じではない…

曇天の曇り空という訳でもないんだが、湿度だけが異様に高く感じた…

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今日はいつもよりも早く家を出た…

いつもよりも、大きなカバンにたくさんの荷物を詰めて…

3泊4日の宿泊研修が始まる…

オレの役目は引率だ…

この春に我が校に入学してきた1年生を引き連れ、山間のキャンプ場へ向かう…

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宿泊研修なんて呼ぶと聞こえは良いが、これはそんな生やさしいものでは無い…

オレたち、上級生の引率者の間では野外訓練と呼んでいる…

3泊4日の間、風呂には入れない…

(オレたち引率者は入るのだが…)

寝るのはテントに寝袋…

(これはオレたちも同じだ…)

食事は3食全て自炊…

そのうち1日は、食材の調達も自分達で行わなければならない…

コレが地獄だ…

新入生が? いや、オレたち上級生が…

できの悪いグループの指導役になると、まともな食事にはこちらまでありつけなくなる…

ー少しでも出来のいいグループに当たりますように…ー

指導役の上級生は全員同じ事を考えているだろう…

当然、オレも…

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何台かのバスに分乗して、野営地に向かう…

これから始まる過酷な4日間のことを知るよしもない新入生達は、いつもと違う環境にいつも以上にばか騒ぎをしてバスに揺られている…

目的の場所へは昼前にたどり着く…

まずはランチタイムだ…

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オレの受け持つグループのリーダーは、今で言う“チャラ男”っぽい奴に見えた…

こういうタイプが一番めんどくさい…

もしかすると、ハズレくじかな?

案の定、このグループの男どもは出来が悪かった…

口ばかりでテントの設営も一番時間がかかった…

昼食を作るための火起こしも結局出来ず、他のグループから火を貰ってきて調理にかかるというインチキが発覚…

さすがにオレも激怒した…

午後からのカリキュラムでも、とにかく他のグループの足を引っ張り続けた…

そして一夜目の夜を迎える…

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相変わらず手際の悪い晩飯を終え、自由時間となった…

だが、オレの指導するグループに自由時間はなかった…

昼飯のインチキの罰として、トイレ掃除を申し付けていた…

終わった頃を見計らって、顔を出す…

反省の色も見えた…

彼らを連れて、テントに向かう…

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途中まで歩いて来た頃だった…

「…なんか聞こえません?」

誰かが言った…

会話が途切れ、夜の林道を静寂が包む…

「…! ほら!なんか笛の音みたいなのが…」

???

………ピー……… ピー………

確かに聞こえる…

どこから?

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…ピー………

???

さっきよりも、はっきり聞こえた…

誰かが生唾を飲み込む音が聞こえた…

ピー… ピー…

「なんかあの音、近づいて来てませんか?」

確かに…

ピー… ピー… ピー… ピー… ピー…

また少し大きくなる音…

いや、そんな事よりも…

あっちからも… こっちからも… 周囲の色々な方向から聞こえる…

「ヤバいですよね…?」

顔を見合わせる… 緊張が走る…

・・・

・・・

・・・

音が止んだ… 辺りを再び静寂が包む…

また、顔を見合わせてホッと息をつく…

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shake

ピ~~~~~~ッ!!!!!

激しい光と共に、オレたちの真上で音は鳴り響いた…

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一斉に走り出す…

息を切らしてテントにたどり着いた…

怯える新入生達を、キャンプ場ではたまにあることだからと落ち着かせ、とりあえず床に付かせた…

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「おい、イカ君… なんかヤバいことになってる…」

朝起きたオレに声をかけて来たのは、同級生で、他のグループの指導役の友人だった…

昨夜、雨なんか一滴も降ってはいなかった…

満天の星空では無かったが、雲の合間から星も見えていた…

なのに…だ…

友人のグループのテントはびしょびしょに濡れていた…

まるで、雨に降られた後のように…

夜露じゃないかって?

夜露がテント周辺に水溜まりを作りますか?

他のグループのテントは全く濡れていないのは?

そのテントで寝ていた生徒達は口を揃えて言った…

「真夜中に、雨と雷が凄かった…」

そんな事実は全く無かったのに…

そう、キャンプ場ではよくある話し…

こうして第一夜は明けた…

Concrete
コメント怖い
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