生ぬるい風の吹く夜は… ~第二夜~

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生ぬるい風の吹く夜は… ~第二夜~

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不思議な朝だった…

相変わらずの曇り空…

そこにいる全ての人間の表情も、今日の空と同様に雲っていた…

キャンプに来てこういう体験をすることはよくある…

だけど、今までとは何か違うような…

誰もがそう思っていただろう…

でも、誰一人その言葉を口にしなかった…

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朝から気が重い…

だけど、組み込まれた予定はイッパイだ!

気を取り直して、今日という1日を始めなければ…

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朝食を終え、オレの受け持つグループを含めたいくつかのグループは出発の準備を始める…

今日はこのキャンプ場を出発し、山を越えた所にあるもう一つのキャンプ場跡地へ向かう…

昼食は、朝食の後で作ったおにぎり…

そして、夕食は今日1日山の中を歩いて食材を調達しなければならない…

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なかなか、大変な作業だが、うちの学校ではスタンダードな行事だ…

持って行けるのは米のみ…

飯ごうは持って行けないので、どこかで竹を見つけてそれを使って米を炊く…

後は、お好きなように…って感じかな?

蛇を食うグループも有れば、カエルを食う奴もいる…

嘘だろ?って思われるかも知れないが、こんな事を行事にしている学校が日本に存在する…

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なんやかんやドタバタがあって、なんとか夕食は取り終えた…

今は使われていないこのキャンプ場には電気が通っていない…

夜の闇に包まれると、なにもすることがなくなる…

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そんな時に行われるのは、ド定番の怪談話だ…

唯一の灯りの松明の周りに集まって恒例行事の幕はあがった…

昨夜、あんなことがあったのによくやるよ…

だけど、少々の事ならみんな慣れっこになってる…

何人目かの怪談が始まった時だった…

どこからともなく、生ぬるい風がオレたちの頬を撫でた…

一瞬訪れる静寂…

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shake

ガサッ… ガサ ガサッ…

不意に近くの斜面の木々が揺れた…

そこにいる全ての人間の目がそちらに釘付けになる…

オレたちのいる広場から、管理用の車両が通るための砂利道を挟んだ向こう側、人が登るのも大変なくらいの急角度の斜面を何かが、こちらに向かって降りてくる…

草木の揺れが、斜面の下まで辿り着いた…

息を呑む…

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shake

ジャッ… ジャッ… ジャッ…

砂利を踏みしめる音が3回…

何かがあきらかに、そこにいる…

目には見えない何かが…

斜面を下り…

砂利道を横切り…

この広場へ向かって来ている…

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『うわぁ~ッ』

誰かが最初に叫んだ…

周りもそれに呼応するように声をあげる…

恐怖に震え、その場にしゃがみこむ者もいた…

もうすぐ成人になる歳のくせに泣き出す者も少なくなかった…

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結局、その後何かが起こるということはなかった…

残ったのは静寂の山と、恐怖にすすり泣く学生たちの声だけ…

とりあえず、学生達を落ち着かせて早めに就寝するように指示を出す…

こんな事が起こっても、この行事が中断されることはない…

何度もいうようだが、我々上級生は恐怖に鈍感になっているらしい…

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学生達を落ち着かせる役目を他の指導者に任せ、オレは先生と二人で、車に乗り込む…

これから、オレと先生二人はここを離れ、丘の上の広場に向かう…

本隊のいるキャンプ場と、別動隊のいる旧キャンプ場を無線で繋ぐための、中継点を設置するためだ…

設置するためと言っても、何かをするわけではない…

この車で丘の上の広場に行けばいいだけだ…

この車にはそのためのアンテナが設置してある…

広場に車を停め、緊急時にも無線が繋がるように、そこに一晩いるだけ…

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イヤな役目だ…

不可思議な体験に慣れて、鈍感になっているオレたち上級生も、そして先生もこの役目は嫌がる…

一番よく出る… ってポイントがこの丘の上の広場だ…

くじ引きの末、オレとY先生がこの日の当番となっていた…

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目的地に到着し、ヘッドライトを消してエンジンを切る…

この役目を担う者だけの特権であるカップ麺を食べ終えて、しばらくした頃だった…

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ピー………

また、昨日の笛の音…

プップ~ッ!

クラクションがなる…

慌ててY先生の方に目を向ける…

オレ『先生、マジで勘弁してくださいよ… クラクションは先生ですよね?』

Y先生『いや、俺じゃないぞ…』

おどけた様子で、オレの顔の前に両手をかざす…

ー本気なのか冗談なのかわかりゃしない…ー

次の瞬間…

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shake

ププ~ッ!

また、クラクションがけたたましく鳴った…

Y先生『なっ、俺じゃないだろ…』

オレ『マジですか…』

「…の天気は… く…ち…晴れ…」

突然聞こえた声…

ラジオだ…

エンジンはかかっていない…

「全域に濃霧に注意が必要です。」

次第に大きくなるボリューム…

当然、オレもY先生も何にも触れていない…

ウィ~ッ、カシャッ‼

次はワイパー…

ご丁寧にウォッシャー液まで出してやがる…

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shake

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突然の光…

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車のライトだった…

繰り返されるパッシング…

Y先生は慌ててヘッドライトのスイッチに手をやるが、当然OFFになっている…

しかし点灯と消灯を繰り返すライト…

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いつの間にかラジオのボリュームもかなりの大きさになっていた…

shake

ブツッ!

突然ラジオの音が止んだ…

車のヘッドライトも消えた…

目の前には何事もなかったかのように広がる暗やみ…

あれだけ騒がしかったのが嘘のように静かな空間…

風が草木を揺らす音だけが聞こえていた…

ーもう、なにがなんだか…ー

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空が明るくなった…

なんとか夜を乗りきった…

オレは車を降り、もうすぐ起床時間を迎える後輩たちのいるキャンプ場に向かって山道を下り始めた…

Concrete
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裂久夜さん、コメントありがとうございます。
ホントにおかしな学校なんですよ(^_^;)
みんな何とも思ってないところが怖い(^_^;)

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