残業が思いのほか長引き帰りがだいぶ遅くなってしまった。
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疲れ切っていたのか、仕事から帰ってきて私は風呂も入らず、着替えもせずにベットに倒れこむようにして眠りにつく…
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「お風呂は明日の朝でいいやぁ…」
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誰に話しかけるでもなく自分に言い聞かせる。
こんな事では肌に多大な悪影響があることは、承知している。
しかし、疲れ切っている私は部屋に辿り着いた安堵も相まってか、身体がいう事をきかないのだ…
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朝…
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酒の飲み過ぎで二日酔いに苦しむサラリーマンのような深い反省をしながら眼を覚まし、顔を洗いに風呂場に向かう。
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飼っている猫が餌をねだりに足元を一回りする。
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それをなだめながら浴室へ。。
全身に少し熱めの湯を浴び、顔面の化粧を落とし、シャンプー、コンディショナーを済ませ、ふと顔を上げ浴室にある鏡を見る。
案の定そこに映るのは、くっきりとクマの浮き出る疲れ切った我が顔面…
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最悪だ…の言葉すら出せずに身体を洗い浴室を出て朝食の準備に台所へ。
猫が待ち受けているので、棚に立てかけてあるキャットフードをお椀に移して与える。
あ…しまった…
私のお椀と猫のお椀を間違えてしまった…
とがっくりと肩を落としながら、朝食の準備をする。
冷蔵庫の残り物をさっとレンジで温めて、皿に盛り付ける
茶碗を少し濡らしおかまを開ける。
あ…そうだった
昨晩はお米をセットせず寝てしまったんだった。
仕方なしにオカズだけを居間のテーブルへと運び口をつける。
レンジにかける時間が足りなかったのか生暖かい…というよりか中心部が冷たい。
自分の粗忽さに怒りすら覚える。
それを、かき込むように食べてテレビをぼんやりと観ると時刻はすでに出勤まで20分前…
慌てて着替えのためにクローゼットから洋服を出して身にまとい、メイク道具に飛びつく。
このままではとても間に合うはずがないので目元だけ仕上げて、マスクをしてウチを飛び出す。
三メートルほど走った時カラスの鳴き声が…
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何故かわからないが、そのおかげでゴミ出しのことを思い出す。
慌てて玄関に戻る。鍵が何故か開かない…あっ…さっきかけ忘れて出たのか…逆に鍵を掛けてしまったらしい…って!そんなことどうでもいい!
慌てて玄関を開けゴミを鷲掴みにして、鍵を掛け猛ダッシュでエレベーターへ…
幸い私の階にエレベーターが停止していたために直ぐに乗り込むことが出来た。
なんて慌ただしい朝だ。
と、しかしこれが私の毎日サイクルなのだ…
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『ガコン』
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扉が閉まる。ここからがいつもと違う悪夢の始まり
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私の階は4階
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4…
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3…
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…ガココン…シュー…ンン
は?
止まる。
嘘だろ…
ちょっとぉ!!
最悪だ…
仕方なく非常ボタンを押し警備へ連絡を取ろうとした。。。が…
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なんの反応もない。
連続で何度押しても反応はみられなかった。
もう、遅刻は決定だ。
慌てたところで馬鹿馬鹿しい。バッグから携帯を取り出そうとバッグに手を突っ込む……
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しまった…
部屋に忘れてきてしまった…
焦りがMAXに跳ね上がる。
当然だ。
外部との連絡を完全に断たれたのだ。
な、なんて日だ!
呪われてるのか?!私が何をした??
念のためもう一度非常ボタンを押してみる。やはり反応はない
どうすることも出来ずへたれこむ。
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どれ位の時間が経過しただろうか。
普段よりも少ない朝食だった為か腹が減る。
味噌煮込みのおでん…
味が濃いめだったからか…喉が渇く。
ああ…風太(ネコ)に水やるの忘れた…
でも大丈夫か。
あの猫、私と違って賢いから蛇口を開ければ水が出ることを知ってるし……でも…締め方は知らないから水は出しっぱなしになるなぁ…
一人ぼうっとしていると、いろいろなことが頭をよぎる。
もう一度非常ボタンを押す。
反応無し。溜め息が漏れる。
どうしよう会社…
プロジェクトリーダー怒ってるだろうなぁ…
『副リーダーが来ないってどゆこと!?』
とか言って私の携帯に何度も連絡いれてる姿が目に浮かぶ。
幸いなのは明かりが点いていること。
これで暗かったりしたら本当に最悪だ…
その時、エレベーターのボタンプレートに小さな鏡が設置されている事に気付いた。
最初よりは落ち着きを取り戻し、取り敢えず目以外の化粧も仕上げる為、マスクを外し鏡を覗き込んだ。
朝、目元を重点的に化粧をしたはずなのにクマがくっきり…
ひどい顔…
「疲れ…た…」
shake
その声に驚き座り込む。
その声は確かに私の耳元で囁かれた。
馬鹿な…
エレベーター内は私一人
いくら疲れがたまっているからって、それぐらいの事は分かる。
周りを見渡しても、いや、見渡さなくても此処には私一人だ。
背筋に寒気が走る。
あ、も、もしかして非常ボタンが警備室に繋がった?カメラとかが付いてて私の疲れた顔を警備員さんが見た?
慌てて立ち上がり非常ボタンを押す。
「スイマセーン!!閉じ込められてるんでぇす!助けてぇ!!」
反応なし…
「ちょっとぉ!聞こえないのぉ!?」
反応なし…
なんだよ。
じゃ、さっきの声は誰?
ちらっと鏡に目をやる。
shake
私の顔が映るはずの鏡に見知らぬ顔が映る。
顔面蒼白
髪は艶を失い今にも抜け落ちそうなほど頼りなく、焦点のあっていない眼は何処か不気味に笑みを帯び、半開きの口からヨダレのような液体を零している。
思わず自分の頰に手をやる。
鏡に映る『ソレ』も同じように頰に触れる。
これが自分の顔?さっきとはえらく違う…
どうなっているのか?
鏡に顔を近ずける…
『ソレ』も同じに顔を近ずける…
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遠目できがつかなかった…
鏡に映る『ソレ』の首から下に眼をやると…
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見なければよかった…
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無いのだ…身体が…
裂けちぎれた首から紅黒く粘り気を帯びたような液体が垂れ落ちている…
恐怖のあまり眼をそらそうと再び鏡に映る『ソレ』の顔に眼をやる。
すると、半開きの口が笑みを浮かべ不気味な声を上げる
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「ああ…あなたぁ…の…かぁ…らだ…ち…ょう…だ…ぁい」
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悍ましい声がエレベーター全体に響く…
かすれたその声を上手く聞き取る事は出来なかった…
いや、怖ろしさのあまり耳を塞いだため、全て聞き取る事が出来なかったのだ…
耳を塞ぐ格好のまま鏡を見る。
鏡の『ソレ』は今度ばかりは同じ行動をしていなかった…
やはりこの鏡に映る顔は私では無い。
このエレベーターに取り憑く『何か』が鏡に映っているのだ…
恐怖のあまり身体が硬直して動かない…
眼だけかろうじて動かす事ができる…
怖る怖る、もう一度『ソレ』の首から下を見る。
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私は驚愕した…
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私が今朝着てきたスーツを身に纏った身体が写り込んでいるのだ…
何だこれは…?
やはりこの酷い顔面は私の顔なのか?
と、、、自らの身体を見下ろす…
嗚呼…
私は疲れてるに違いない…
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酷く汗をかき飛び起きると、時刻は既に出社30分前…
大変だ…まだ風呂にも入っていない…メイクすらおとしていない…
慌てて洗面所、鏡の前に行く…
鏡を見た…
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誰だこれは…?
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作者ナコ