短編2
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迷子の猫

数年前の話ですが、近所の小学校に通っているという低学年の姉妹とその母親に「子猫見ませんでしたか?」と聞かれた。

事情を聞いたらその家の猫が5匹子供を産んだんだけど、その5匹がいっせいに消えた、という。

妹は泣いてるし、可哀想になって私も一緒に探す事にした。

姉妹の友達なども参加して皆で探したが見つからず、時間だけが過ぎていった。

大人数で探してるとなにやら姉と、姉の友達の様子がだんだんとそわそわしていておかしい。

「どうしたの?」と聞かれても真っ赤な顔で「なんでもない…」。

どこ探してもいないので諦めムードが漂ってきた時、騒ぎに気が付いた近所のバーさんが来て

「猫?さっきお姉ちゃん猫連れて行かなかった?」と聞いてきた。

それを聞いて姉動揺「知らない!行ってない!!」、お友達は走って逃げてしまった。

母親がハッとした顔で「本当の事言いなさい!」と問い詰めると

「だってママが猫あげちゃうって言うから!!!」とワアアーっと泣き出した。

姉は生まれた猫がかわいくてならず、姉の友達は猫を貰いたがったが親に反対されていた。

「それならいっそ二人で外で飼おう!」となり、猫を拉致って行ったと言う。

母親が「子猫どこにいるの!?」と聞くと泣いて答えない。

子猫は母猫と一緒じゃないと生きていけないと説得し、何とか猫の場所へ連れて行った。

所がそこは何度も探した場所。

一体どこに隠したんだろうと不思議に思ったら、姉が指差したのは最近掘り返した跡のある地面。

静まり返る中、捜索してたうちの一人が黙って土を掘り返し始めた。

そしたらそこから子猫の死体がゴロゴロと…

うち一匹はまだかすかに息があったが、掘り返してまもなく死亡。

「どうして埋めちゃったの!」と聞くと「ぐったりしたから」「友達が埋めちゃおうって言ったから」。

母親がもうパニック状態、「何でこんな事したの!!」と言う問いかけに対して

姉は怒って「ママが飼って良いって言わないからでしょ!!ママが悪いんでしょ!!

死んだのはママのせいだからね!!ママが殺したんだからね!あたしのせいじゃないからね!!

なんであたしのせいにするの!!また生めば良いじゃん!!」

母親愕然として涙をボロボロ流し、両耳をふさいで座り込んでしまった。

そこに姉が一言。「もう帰ろうよ~疲れたしお腹すいた~」……

あまりの状況に皆黙り込み、母娘を置いて誰ともなく無言で帰って行った。

Concrete
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