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短編2
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夜の卵 其の五

【ウミツケル】

いらっしゃい。

よくこの店にたどりついたね。

まあ、そこに座ってよくお聞きよ。

ここにたくさん、卵があるだろう?

いったいいくつあると思うね。

てんでバラバラに規則性もなく置いてあるから、数えても、頭がこんがらがってしまうよ。

答えは百八つ。

この卵がいつ生まれたかというのは、もう聡明なアンタにはわかるだろう。

そう、この卵は今年の元旦に産み付けられたものさ。

大晦日じゃあないのか、だって?

何故、毎年のように、除夜の鐘は鳴るのかね。

煩悩を祓い、心のけがれを洗い流し、新年を迎える。

それなのに、毎年同じように除夜の鐘は鳴らされるだろう?

それは、すでに穢れた卵がすぐに産み付けられるからさ。

除夜の鐘が鳴る頃に漆黒の闇に目をこらしてごらんよ。

うごめく蟲が空を跋扈しているからね。

そいつは祓われた穢れが好物でね。除夜の鐘と共に解き放たれた穢れを食い尽くす。

それだけなら、どんなにこの世は、綺麗になるだろうね。

しかし、食い尽くされた穢れは蟲の中で、さらに違う形で生まれてくるのさ。

人であるかぎりは、穢れというものは付いてまわる。

縁(えにし)がある限り、人と言うものは、目、耳、鼻、舌、身、意で物を感じ取る。

好き、普通、嫌い。感じ方にもいろいろあるが、意と嫌いが相まってしまうと、そこには闇がしのびより、目に見えぬ物が見えてくる。

今、アンタに、アタシが見えるようにね。

産み付けられた卵が百八つになった時に、丁度闇がしのびより、アンタをこの世界に誘ったのかもしれないね。

人だもの。

煩悩があって当たり前だろう。

さあ、一つ手にとってみないかね?

アンタの願いをかなえてあげるよ。

御代はいらないよ。

ただし、タダではないけどね?

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修行者様
コメントありがとうございます。
フフフ、お気をつけあそばせ。
話はまったく変わりますが、私の夏の思い出といえば、今の旦那とお付き合いしている頃に、百八つ地蔵様がある霊場で、旦那に置いて行かれたことです。突然、だーっと旦那が走って逃げるので、必死に追いかけました。悪いやつです。

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