中編3
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タイムカプセル

ユウキ(自分)、ケイタ(男)、アズ(女)…

僕達は3人とも幼稚園からの幼馴染で、親同士の付き合いがあったのでかなり仲が良かった。

そんな僕達3人は、小学校卒業前にタイムカプセルを埋めた。

「20歳になって成人式が終わったら掘り起こそう」

そう決めて3つ箱を用意し、それぞれ自分に当てた手紙と大事なものを入れて、遊び場だった広場の木の下に埋めた。

しかし中学生になり、僕達は疎遠になっていった。ケイタとは時々会っていたけど、アズとは殆ど会わなくなった。その後、僕は地元の公立高校に。ケイタは県外の結構良い高校、アズは女子高にそれぞれ進学した。

高校2年になった時、タイムカプセルを埋めた広場にマンションが建つらしい、という事を知り、僕はタイムカプセルを避難させようと広場に行った。ケイタとアズに知らせようとも思ったが、2人の連絡先を知らなかった。

親に聞けば分かっただろうが、当時の僕はめんどくさかったのだ。

広場に行くと幸い工事はまだ予定の段階らしく、看板があるだけ。僕は埋めた3つの箱を回収し、家に持って帰った。

成人式の時に空ける予定だったが、小学6年の時に自分がどんなことを書いたのか忘れていたので、自分の箱を開ける事にした。

中には汚い字で書かれた自分宛の手紙と、無くしたと思っていた漫画キャラのキラキラしたカードが何枚か入っていた。

「20歳の僕へ。大学を卒業して立派なエリートになっていてください。年収は1000万くらいだとうれしいです。」

我ながら馬鹿な事を書いたもんだ、と笑いながら読んだ。

そしてふと、僕はケイタとアズの箱が気になった。開けてはいけないと分かってはいるが、好奇心には勝てなかった。

2人に「ゴメン」と心で謝りながら、始めにケイタの箱を開けた。

中には当時高かったヨーヨーと、中々上等なロボットのプラモデル、そして手紙が入っていた。

「20歳の僕へ。立派な大人になっていますか?辛い事もあると思いますががんばってください!」

ケイタらしい、小学生の時から真面目なやつだったもんなぁ…と関心した。

そして次にアズの箱を手に取った。

アズは可愛らしい女の子で、小学生・中学生の時は男子から結構人気はあったけど、誰かと付き合ってるという話は聞いた事無かった。そんなアズが何を入れ、どんな事を書いたのかウキウキしながら僕は箱を開けた。

…中には果物ナイフと手紙が入っていた。

果物ナイフは木の鞘に納まっており、手紙もその横に折りたたまれて置いてあった。もっと女の子的なモノを期待していた僕は、訳が分からなかった。

(でもまぁ、よく考えると果物ナイフも料理を作る時に使うし、女の子らしいといえば女の子らしいかぁ…)

そんな事を思いつつ、僕は手紙に手を伸ばした。「アズ、ごめんね」そう思いながら手紙を開くと、そこには。

「20歳の私へ。まだ続いているならこれでお父さんを殺してください。私は絶対にお父さんを許せません。絶対に殺してください、絶対にです。」

あのアズがこんな事を書くなんて、思ってもいなかった。

アズの家は確か、お母さんが早くに死んでお父さんと二人暮しだった。何度も会った事のあるアズのお父さんは、優しくていい人だったと思う。アズがなんでこんなにお父さんを恨んでいるのかは分からない。

今これを書いている僕も今年で20歳。

3つの箱は未だに実家の僕の部屋にあるけど、成人式で二人に会った時はあの場所にはマンションが建って、タイムカプセルは掘り起こせなくなった、と言うつもりだ。

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