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初めて投稿します。文章力、信憑性、怖さに欠ける部分があると思いますがご了承ください。
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7年程前の冬、俺は派遣で守衛のバイトをしていました。
守衛↔︎警備なんですが、普通はビル、マンション、病院などで仕事するのが主ですが俺のやってた仕事はちょっと特殊で、街の離れにある閉鎖された病院の警備でした。
噂では昔その場所は無医村で病死する人が多く、国、厚生労働省の思案の上設立された病院らしい。
ただ、場所が場所であったため立派な病院というよりもち
ょっと大きい診療所。二階建で入院設備はなし、内科、外科、小児科だけの病院だった。
で、閉鎖された理由だが本当に単純で時代の流れ、風化が進み村を出る者が多くなり自然と村の人数が減る。すなわち病院にかかるものがいなくなる、医師、看護師等は辞める者、他院に異動しただの様々。
その中で経営者だけが行方不明のままだとか。
それで閉鎖し、取り壊すことに決まった。ちなみに取り壊し日は年明けの春。
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そんな病院の警備をしてた俺が体験した怖い出来事ですがその日の当番日、俺、葛君の2人(メンバーは6人で24時間交代制)でやってたんですが、葛君はこの病院を担当して3年のベテラン。俺は2ヶ月半の新人(笑)
朝8時に2人で現場に行き、前当番の板橋、華木から鍵を預かった。
葛君『異常なかった?』
板橋『特になかったで!』
華木『閉鎖寸前の病院で何もないのも逆に変やけどな(笑)』
俺『何かあっても困るわ!』
華木『冗談やん(笑)じゃ、お疲れ!』
2人と交代し葛君と中に入った。警備室は病院の正面口のすぐ横にある。
閉鎖病院といえど、ちゃんとした仕事なので当たり前的に警備室は電気を通してくれている。
葛君『いつもの事やけど夜までは暇やな』
俺『やな!ってか前から思ってたんやけど、電気通してるんなら監視モニター付けといてくれたらいいのにな。そしたらいちいち巡回せんで済むのに(笑)』
葛君『前はあったで。』
俺『そうなん?何でなくなったん?』
葛君『知ったらお前辞めるやろうから言わへん。』
その後も教えるよう頼んだがスルーされた。
何かモヤモヤが残ったまま巡回の時間になった。
巡回時間は21時と2時の2回。警備室を出て受付→内科診察室→小児科診察室→トイレ→二階→外科診察室→喫煙所→トイレの順。
1人で巡回に行き、相方はその間仮眠出来るというもの。
病院自体小さいので巡回も20分もあれば余裕で終わる。
誰が先に行くかはジャンケンで決める(前からそうしてるかららしい)
結果俺が負けて葛君が先に行くことに。
俺『最悪や』
葛君『夜も夜中も一緒やん(笑)』
俺『お前にさっきの気味悪い話聞かんかったら良かった』
葛君『とりあえず行ってくるわ!』と言い葛君は懐中電灯を持ちスタスタと行ってしまった。
俺は葛君が出てから内側から警備室の鍵をかけた。
勤務上の決まりであり、巡回に行く者が別に鍵を持っている。俺はコーヒー片手にタバコを吸いながら葛君を待った。
20分〜30分〜40分… 葛君が帰ってこない。
俺『何で帰ってこうへんねん… 勘弁しろよ』
自分から気味悪い話を聞き出したといてこの状況、怖くないわけがない。
尚且つよくネットで怖い話を見てたことも思い出してしまう。
俺『あ〜、何か似た感じの怖い話読んだことあったな… 頼むで無事に終わってくれ。』と念仏のように独り言を言っていた。
そして1時間経った頃。《ガチャ》警備室の扉が開き、葛君が帰ってきた。
俺『遅いわ!何しててん!!』
葛君『ごめん、ってか意外なもん見つけて行こうかどうしようか迷っててん。んで時間かかった。』
俺『意外なもんって?』
葛君『地下があった。』
俺『この病院に⁉︎設計上ないはずやで?見間違いやろ』
葛君『俺も最初そう思ったけど、いつも巡回ん時トイレ見てから二階行くやん?んでトイレ出てから二階行こうとしたら音聞こえたしその方向にライト向けたら階段あってん。今まで確認なんかせんかったし気付かんかったんやろうけど』
俺『それほんまなら怖いけど確認しとかなあかんやろ』
葛君『お前もそう思う?じゃあ次の巡回は2人で行こか』
とにかく次の巡回まで2人で仮眠をとり、2時過ぎに警備室の鍵をかけ問題の地下へ。
葛君を先頭にトイレの先、突き当たりの左側に……
あった。下に続く階段が。
今まで誰も気付かなかったのか… にしてはそこまで汚くない。正直埃だらけ、カビ臭い、生き物の死骸は予想してたのだがそんな感じでもない。が、別の恐怖が頭をよぎる。
そう、行方不明の経営者のことだ。
葛君『まさか行方不明て言われてた経営者がこの地下室を?』
俺『んなアホな。経営者1人で無理に決まってるやん』
そう。誰が見ても設立前に予定されてた造りだった。
静かに階段を降り、5メートル程進んだ先に看板があった。その看板をライトに照らした俺らは言葉が出なかった。
《人体実験室》
人体実験室?何故?何のために?
意味がわからずその場に突っ立ってると、ちょっと先の方を見回していた葛君が小走りで戻ってきた。
葛君『なぁ、人体実験の意味何となくわかったかも』
俺『何で?』
葛君『あそこ。見てみ』
葛君がライトを照らす方向に目をやる。そこには精神科と書かれた部屋があった。しかも内科、小児科、外科は診察室なのに精神科だけ《治療室》と書かれている。
俺『来たらあかんとこに来てしまったかもな』
葛君『どうするよ?』
俺『とりあえず見回りだけするか』
そう言ってまずは精神科治療室へはいった。
中は医者が使ってたであろう机と、奥にベッドが3つ。
その1つだけカーテンがかかっていた。
そっとカーテンを開けた瞬間、俺らは驚きのあまり後ずさって尻餅をついた。
葛君『し…死体や…』
それは紛れもなく人間の死体だった。しかも最近なのか、
腐敗は進んでいない…が、首から下腹部まで真っ直ぐに切り開かれ臓器が取り出されていた。
死体の目はあったもののパッチリ見開かれてるのが余計怖い。
ただただ呆然と死体を見ていたその時。
【ピィーーーァーーー】と耳鳴りに近い音が。
咄嗟に音の方に振り向く。人体実験室からだ。
間違いない、誰かいる。
足音を立てず実験室手前でライトを消す。扉は引き戸だったので幸い音を立てずに開けれた。
そお〜っと辺りを見回す。
…………いた。
丁度中央のベッドに横たわる人。その人の前に白衣のような服を着た男。
さっきの耳鳴りのような音は恐らく白衣男に喉を裂かれた瞬間に出た音、いや声だろう。
その人の喉元から血が溢れ出し、【ピュフー、ピュフー】と音を出していた。
そのあまりに猟奇的光景に目が離せずにいると……
【ブチッ!クチャクチャ…】
⁉︎喰ってる⁉︎人の臓器を喰ってる!
じゃあさっきの部屋にいた死体の臓器もこの男が…
後ろで見ていた葛君があまりの光景に嘔吐した。
その音に気付き白衣男がゆっくり振り向く。いや、男と思っていたそいつは、毛がない上に何故か頭が所々凹んでいる。
そして異様に出っ張ったお腹。目は青い。
着ていると思っていた白衣は袖も通さずにただ羽織ってるだけだった。
そいつはジッと俺らを見つめている。地下室だから真っ暗なはずなのに、目が慣れたのか鮮明に見える。
《…た………す》
そいつがボソッと喋り出したがよく聞き取れない。
この時に逃げるという思考がなかった。冷静だったのか、どうかはわからないが。
《…た………ます》
相変わらずボソボソ呟いている。
そして、そいつはゆっくり、ほんとに一歩が3秒くらいかかってんじゃないかってくらいの速度でこっちに近づいて来た。
少しずつ距離が縮まり、呟いてる内容があと少しでわかるかと思った瞬間、背後から凄い力で引っ張られた。
葛君『逃げんぞ!!』
背後から俺を引っ張ったのは葛君で、俺の腕を掴み猛スピードで階段を駆け上がり警備室に入り鍵を閉めて電気を消した。俺の腕は軽く内出血を起こしていた。
葛君の行動に呆然としていると、葛君が静かに話した。
葛君『さっき、あいつ俺らに何て言ったかわかったか?』
俺『よくは聞き取れんかったけどもうちょいで…』
葛君『あいつ… 俺らを見て《いただきます》って言っとってんぞ!』
それを聞いた時全身に力が入らなくなりズルズルと座り込んだ。
葛君『こうなったら話さんわけにいかんな。』
俺『はぃ?』
完全に放心状態。
葛君『監視モニターの理由や。実はな、俺が新人やった頃に先輩が巡回行ったのをモニターで見ててん。で、一階トイレに入ってったし出てくんの待っててんけど、その出てきたのがさっきみた青い目のヤツやってん』
俺『…じゃあその先輩って人は喰われたってことか?』
葛君『多分な… 警察にも協力してもらって周辺の捜索もしたけど見つからへんくて、警察の1人がモニターを確認した後に何も言わずに記録テープ押収しよった』
俺『ちょ待てよ。前にそんな事が起こってんのに何で仕事さすねん!会社は全部知ってたんやな⁉︎地下があったことも』
葛君『最初はほんまに地下なんて無かったで。やから青い目のヤツの仕業とは誰も思わへんかってん。モニターの映り具合と先輩のライトの加減で先輩の目が青く見えたんやろうってな。やから先輩は行方不明というより職務放棄として処理されたはずやで。モニターもそん時に全撤去や』
葛君の話を聞き、うな垂れている時。
【いただきます… いただきます…】
ヤツだ!階段を上がってる!しかも呟いてた声がしっかり聞こえる。マジでヤバい。。
葛君『知り合いに強力な神主がいる。駄目元で電話してみるわ』
そう言うと葛君は神主さんに電話をかけた。
葛君『あ、葛ですがこんな時間にすみません。実は仕事で〇〇市の閉鎖病院にいるんですが、地下があって巡回に行ったら青い目をして腹の出っ張ったヤツが… あ、はい。わかりました。お願いします。』
電話わ終えた葛君がバッグから食料に持って来ていたパンを取り出し、俺にも何か食料を出すように言ってきたので予めコンビニで買っといたおにぎりを出した。
神主さんが言うには各食料の中に自分の髪の毛、唾液を混入しヤツに投げつけろというもの。
葛君は自分のパンと俺のおにぎりを、ヤツめがけて投げつけすぐに扉を閉めた。
おとなしく食べてるのだろうか、こっちに近づいてる気配はない。しばらくして葛君の携帯が鳴った。
葛君『もしもし。はい、そうですか。わかりました』
俺『誰?神主さん?』
葛君『うん、今こっちに向かってくれてるって』
神主さんが来るまでの間、静かに身を潜める。
ちょっとでも目立った音を出せばヤツに気付かれる。
でもこういう時でも外がどんな状況なんかは気になるもので、ゆっくり扉に近づき聞き耳を立てた。
が、先ほどと変わらず物音一つなく静か。
さっき葛君が投げつけた食料に満足したのだろうか。
葛君『神主が教えてくれたやり方効果あったな。念のため近くにおらんか確認してみよ』
そう言って葛君がゆっくり扉を開け、3~4センチくらいの隙間から様子を伺う。と、その時
【バン‼︎ガチャーン‼︎】
一瞬。あまりに一瞬の出来事に俺は何が起こったのか全くわからなかった。
そのすぐ後、現状を理解した。葛君がいない。
ヤツは食料を与えておとなしくなったわけじゃなかった。
ずっと扉の前で待ち伏せしていた。
そこに様子を伺い扉を開けた葛君を連れて行った。
正直俺は足がすくんでいたが、葛君を見殺しには出来ない。自分の顔を思い切り叩き気合いを入れ扉を開け地下に向かおうとした時
【行くな!!】
ビクッ!とし振り返ると白装束に坊主頭のお爺さんと、50歳くらいの同じ白装束のおじさんが2人立っていた。恐らく神主さんだ。
【大丈夫か?一美は?←(葛君の名前)】
俺はさっきの出来事と葛君がヤツに連れて行かれたこと、役に立たんけど助けに行こうとしてた事を説明した。
【そうか… 残念だが一美にはもう会えん。これよりヤツを封印する。この地下もろとも。】
俺は葛君がまだ生きてるかも知れないと訴えたが神主は静かに首を横に振った。
【連れて行かれた時点で終わりだ。お前は部屋の荷物をまとめて病院の外にいなさい。】
俺は悔しさと申し訳なさが入り混じった気持ちを抑え、言われた通り荷物をまとめ外に出た。
どれくらい時間が経っただろうか。
【グギャアオォ…… ォオォン…】
もの凄い獣の悲鳴が聞こえた。こん時情けないが少しチビった。
それから神主さんらが病院から出てきた。
【封印は成功した。一美のことは私たちから会社に説明しておく。お前もよくここまで耐えたな。もう大丈夫だ。】
神主さんの言葉に張っていた緊張と全身の力が抜け涙が出た。
《葛君… ごめん》
これが1番の気持ち、後悔、そして俺が死ぬまで背負わなきゃならない。
帰りは神主さんの車で送ってもらった。
そして帰りの車内でヤツの正体を語ってくれた。
以後、神主さんの話
↓
ヤツの正体は餓鬼の怨魂であり、元々は米粒程度の大きさの餓鬼だったが何らかの理由で憎悪が増して大人の人間サイズになったという。
餓鬼というのは食べることへの執着、念が強いというのもこの神主さんから聞いて初めて知った。
で、病院にいた餓鬼だがやはり普通のやり方では全く歯が立たないというので神主さんが本堂で作った饅頭の中に特別な封印を施した数珠を入れ、それを10個作り餓鬼の前に転がした。
餓鬼は目の前の饅頭に釘付けになり数珠が入ってるとも知らず全てを頬張った。
結果、数珠の効果が体内で現れ餓鬼は叫び苦しみ地に沈んでいったという。
追加で俺は地下の死体の事を聞いた。
神主『あれも餓鬼がやったもので、死体の傷跡は餓鬼の爪によるもの。全てを喰わなかったのは保存食として残していたのかも知れん。』
俺『死んだ彼らは誰だったんですか?』
神主『恐らく肝試しとか遊び感覚で来た者達だろう。というよりこの場に踏み込んだ時点で餓鬼に呼ばれたのかも知れんな。贄として』
俺はそれ以上聞かなかった。
次の日迷う事なく会社に退職届を出し今は別の仕事に就き普通に暮らしている。
だからと言って7年前の出来事が消える事はない。
作者ともすけ