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一人暮らしをしている俺は、夜、何かしら聞きながら寝ることにしている。
Ｉ集院のラジオ番組だったり、漫才映像だったり、音楽だったり。
ＰＣを点けっぱなしにして、y○u tubeで、それらを朝まで流しっぱなしにしているわけだ。
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もちろん寝るためだから、音量は抑えめにして、ＰＣの画面がまぶしくないよう、タオルで覆ったりして。
まったくの無音だと、なんか寂しくてダメなんだ。
ただ、トーク番組なんかを聞きながら寝ると、夢にその内容が出てきたりして、あまり疲れが取れた気がしなかったりする。
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そんな俺が最近ハマっているのは、「睡眠用ＢＧＭ」ってやつだ。
気分を落ち着かせるゆったりとした音楽や、川のせせらぎ、野鳥の鳴声、ひぐらしの合唱といった自然音などが、1時間から8時間くらいの長さで収録されている。
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特に、アカウント名「眠り姫」という人がアップしている睡眠ＢＧＭが、俺には合っているようで、実によく眠れる。
部屋を暗くして、ＢＧＭをかけ始めて、ものの2分で夢の中、なんてことさえある。
寝つきの悪い俺にとっては、驚くべきことだ。
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ここのところ、毎日聞いているのは「波打ち際の音」だ。
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――ザザーン…ザザーン…
――サー…サラサラサラ…
――ザザーン…ザザザーン…
――サー…サラサラサラ…
寄せては返す波の音。
シュワシュワと弾ける小さな泡の音。
その背後に、薄く流れるヒーリング音楽。
脳裏に、空に月の浮かんだ、静かな夜の浜辺がイメージされる。
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長さは8時間ほどの動画だが、本当にすぐ寝付いてしまう。
俺が寝るのは大体、午前1時だが、朝までぐっすり……、
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と言いたいところだが、
なぜかいつも、夜中に一度だけ目が覚める。
ふと目を開けると、真っ暗な部屋。
時計を見ると、午前3時。
枕元から波の音が聞こえてきて、またすぐに眠りの世界へと落ちていく。
今度こそ、朝までぐっすりだ。
おかげで最近、すこぶる体調が良い。
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………
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………
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………
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ある雨の休日、俺はベットに寝ころんだまま、ダラダラと漫画を読んでいた。
何の気なしに、あの「波打ち際の音」をＰＣで流していた。
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――ザザーン…ザザーン…
――サー…サラサラサラ…
――ザザーン…ザザザーン…
――サー…サラサラサラ…
寄せては返す波の音。
シュワシュワと弾ける小さな泡の音。
その背後に、薄く流れるヒーリング音楽。
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――ペラ、
漫画のページをめくる音。
――シトシトシト…
窓の外の雨の音。
――チッ、チッ、チッ…
時計の針が進む音。
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――ザザーン…ザザーン…
shake
――ゴボッ！
――サー…サラサラサラ…
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――ザザーン…ザザザーン…
shake
――ゴボゴボッ！
――ンー！ンンー！
――サー…サラサラサラ…
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なんだ？
苦しそうなうめき声。
もがくような声。
波の音の合間に、明らかに異質な「音」が紛れ込んでいる。
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瞬間、何かの波長が合ったかのように、脳裏に映像が映る。
空に月の浮かんだ、静かな夜の浜辺。
その浜辺に、首だけを出した状態で砂に埋められ、口を粘着性のテープでふさがれた哀れな男の姿。
その、恐怖にゆがんだ顔まで。
はっきりと。
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shake
――ンー！ンンンー！
――ゴボゴボゴボ…
――ザザーン…ザザザーン…
――サー…サラサラサラ…
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――ザザーン…ザザーン…
――サラサラサラ…
――ザザーン…ザザザーン…
――サラサラサラ…
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それはしばらく続いた後、やがて元の静寂を取り戻した。
その間、わずか2分ほどだろうか。
俺は、呆然と動画の再生画面を見ていた。
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動画の再生時間は、スタートからちょうど2時間を指していた。
作者綿貫一
こんな噺を。