ふくおいさんと人間

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いらっしゃいませ おでん屋でございます。

大根、牛すじ、ちくわにはんぺん...各60円で販売しております。

60円がないお客様には特別に、おでん1つにつき怖い話1つで販売しております。

今日はお金なんて持っていない、ふくおいさんのお話です。

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いやいやいや！すびませんね！

私ふくおいって言いまして、福の神みたいな仕事してるんですわ。

お地蔵さんから派遣されてましてね、派遣先の人間におぶさって幸せにするんですわ。

まぁ私なりたてでございまして、まだ誰も幸せに出来てないですがね！だははは！

前は横山さんっちゅう人の担当だったんですわ。

ちなみにこれ私の初めての仕事。

まずは挨拶。基本ですなぁ。

「初めまして、ふくおいです。よろしくお願いしますね。」って。

だのに横山さん無視するんですわ。

記念すべき初仕事のパートナーがこれかってちょっとガッカリですわ。

でも仕事は仕事。

しっかり幸せにしてやりまひょって心に決めて、横山さんにおぶさったんですわ。

そすたら、まぁまぁまぁ...

私が背中にいるっていうのに、勢いよく椅子の背もたれにドーンですよ。

私ね、びっくりしましたわ。腰強打ですわ。

その後もね、立ってる時いきなり壁にドーン。

両手塞がった状態でドア開ける時にいきなりドアにドーン。

寝る時いきなり布団にドーン。

最悪ですわ。

そんなひどい仕打ちを毎日されましてね、

「もう少し気を使って欲しい」て言ったんですが、これまた無視されましたわ。

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派遣されて約２週間、横山さんが私を殴るようになったんですわ。

木の棒に殴るための球体がついたもので殴ったり

彼女の真理子さんに殴らせたりするんですわ。

私悲しぐって悲しぐって...。

「頑張って幸せにするから暴力はやめでください」って言ったんですが

日に日にエスカレートしていきましてね…

３週間目には塩をかけてくるようになったんです。酷いでしょう？

おかげで私の背中と頭部が焼けただれちゃったんですわ。

痛みに耐えて耐えて１ヶ月後

横山さん、家に変な人を呼んだんですわ。

その人私を見るなりすごい顔で睨んでバンバンバンバンたたき出したんですわ。

「痛い痛いやめでください」ってお願いしても

「うるさい」って。

挙句の果てに塩を大量にこすりつけられて、

無理やり横山さんの背中から剥がされましてね。

私、その人の数珠に閉じ込められちゃったんですわ。

数珠の中は暗くて、ひとりぼっちで...

１日に何度も低い怖い音が聞こえるんですわ。

目を開けてても閉じてるんじゃないかって思うくらい真っ暗なのに

時々怖いオバケみたいなのが見えるんですわ。

「お地蔵さん助けでください」って叫んでも無駄でした。

じっとしていてもどうにもなりませんので、

背中の痛みにもがきながら辺りを歩いてみることにしたんですわ。

「誰かいませんかー」って。

居たら居たで怖い気もするんですがね。だはは。

まぁ、案の定誰も居なくてシーンとしてましたわ。

あてもなくさまよってどれくらい経ったでしょ。

時々ガンガンって大きな音が聞こえるようになったんですわ。

その音がどんどん大きくなっていって

数珠の中が地震のようにガタガタ揺れだしたんですわ。

いやぁ、この世の終わりかと思いましたわ。

揺れがしばらく続いて、

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バンって音が聞こえたと思ったら急に辺りが明るくなりましてね

ゆっくり目を開けると、元の世界だったんですわ！

地面には割れた数珠が散らばってましたわ。

誰が私を出してくれだのかわかりませんが、今までで一番嬉しかったなぁ。

そしで、その日から私決めたんですわ。

私を数珠から出してくれた人を探し出して、

生涯その人だけの福の神になるって。

だはは。ちょっと照れくさいですけども、本気なんですわ。

酷いことをする横山さん達のような人間もいましたが

私やっぱり福の神ですから、誰かを幸せにしたくなるんですわ。

いやぁ、語っちゃって恥ずかしいなぁ。だははは！

それじゃ、探しに行ってきますわ。

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そう話し終えると、ふくおいさんは大根を手づかみで食べて帰って行きました。