中編5
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池の淵にて

これは、俺が高校時代の時体験した、

一生記憶から消えることはない話だ。

高校の頃、受験に受かって浮かれてた俺は、

親友のAと、かなり悪(?)やってたんだ。

入るなって言われてるところ入ったり、

やるなって言われてることやったりしてたわけ。

夏休みに入るとAが田舎に行くって言うんで、ついて行った。

バス乗って、新幹線乗って、

そうしてるうちにAのお婆さんの家に着いたんだ。

「お腹減ったでしょう。今作るね。」

来た瞬間そう言われて夕食にした。

居間に入るとお爺さんがいて、

「おお、よく来たな。」

って言ってくれた。

夕食(豚カツ)を食べながら楽しい会話をしていると、

お爺さんが急に険しい顔でこう言った。

「この近くに金網で囲まれたところがあるが、そこは行ってはダメだ。」

話しているお爺さんの顔が怖くて、何で?と聞く気がしなかった。

十一時くらいになって寝ることになった。

お爺さんとお婆さんは寝室、俺は居間で寝ることになった。

布団を敷いて寝ようとしたらAがなぜか地図を持って来た。

A「爺さんに借りたんだけどよ…ここらへん調べても見つかんないんだ。」

俺「なにが?」

A「金網に囲まれた場所。」

俺「不思議だな。」

その日はそれきりで、すぐ寝た。

翌日、起きてみるとAが何か用意してる。

「何やってたんだ。」

気になって聞いてみた。

A「色々考えてみたんだけど、あそこ行こうぜ。」

俺「あそこって、金網の?」

Aがにやりと笑い頷く。

ここでやめとけば良かったのだが、

いつもの悪ノリで結局行くことになった。

釣りに行くと嘘をついて出発。

くだらない話で盛り上がった。

しばらく歩いていると金網が並んでいる所に突き当たった。

「本当にあったんだな。」

Aがつぶやく。

俺も無言で頷く。

そしたら、Aがいきなり金網登り始めた。

俺も置いて行かれるものか、って急いで登ったよ。

金網の内側に入った。

そこには森みたいなものが広がっていた。

「何もないんじゃないか。」

Aが言った。

「とりあえず進もうぜ。」

俺はそう言ってAと一緒に歩き始めた。

五分程歩くと森を抜けた。

そこには池があった。

池、て言っても湖に近くて向こう岸まで五十メートルくらいありそうだった。

「綺麗だなー」

Aが呟いた。

「しばらくここにいるか。」

一時間程ここでおしゃべりなんかをしていると、Aが向こう岸をじっと見始めた。

俺「どうした?」

A「あそこ(向こう岸)にある木の枝、さっきまでなかったよなぁ。」

言われてみればそんな気がする。

A「つーか動いてる!こっちきてるぞ!」

気付いた時にはもう遅かった。

体が動かない。

枝(?)はどんどん近づいてくる。

枝の姿がはっきり見えるくらい近くに来た。

それは枝なんかじゃなかった。

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痩せ細った人だった。

背が異常に高くて、二メートル以上、確実にあった。

目を見開いてニヤニヤ笑いながらこっちを見ている。

Aは失禁してた。

そいつが口を開けた。

「キキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキ」

聞いただけで気が狂いそうな声だった。

その瞬間、体が動くようになって、必死に逃げた。

でも追ってくんだよ。

そいつが。あの声出しながら。

「キキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキ」

俺達は小便やら汗やら涙を垂らしながら金網を登った。

すぐ後ろにあいつがいる。

金網から落ちるみたいにして降りると、

そこにはもうそいつはいなかった。

Aと二人で抱き合って泣いていると、

お爺さんと神主さんみたいな人が来た。

「馬鹿野郎!なんてことしやがる!アホンダラ!」

お爺さんにスゲー叱られた。

その後、神主さんが俺達を倉みたいな所に連れて行った。

そして俺達を倉の中に入れると、

「ここから絶対に出てはいけませんよ。」と言った。

俺は正直助かったって思ったよ。

これから儀式かなんかやって俺達を助けてくれるんだろうって。

でも違った。

しばらく中に入っていると暑くなってきた。

俺「おい、A、なんか暑くないか?」

A「俺もそう思ってた。」

そしたら急にパッと、明るくなった。

炎が上がってた。

これは死ぬと思った。

Aもそれは思ったらしくて、二人で必死に叫んだ。

でも何の返答もなかった。

これで、これは人間がやっているのだと気付いた。

扉を蹴ってもビクともしなかった。

絶望して、泣いてたら、急に扉が開いて、炎が消えた。

神主さんとお爺さん、お婆さんは松明を持ったまま死んでいた。

そしてその後ろに…奴がいた。

俺達は絶句した。

そしたら後ろから車が突っ込んできた。

ただの車じゃない。

霊柩車だ。

「二人とも乗れ!」

中に乗ってたお坊さんに言われ、俺達は急いで乗った。

奴は車に向かって手を振っていた。

車に乗っている間、無言だった。

お寺みたいな所で止まった。

中に入ると座るように指示された。

「君達が柱に憑かれてると知ってね、まさかと思って来てみたがやはりこんなことに…。」

お坊さんが言った。

「柱って何なんですか!?」

Aが尋ねる。

「ああ、君達には話してなかったね。」

お坊さんが話し始めた。

***************

今から約二百年前、この村では川がよく氾濫してたんだ。

そこで村の人達は話し合って、人柱を立てることにしたんだ。

そこで、普通の人の人柱では効力が弱いため、

霊力がある人を人柱にすることにした。

その人は海という。

しかし、人柱になるのを嫌がり、

海は抵抗したんだって。

だからいきなり人柱にするのではなく、殺してからにすることにした。

海を捕え、倉に閉じ込めた。

そうして餓死した海の死体を川に沈めた。

その日から川は氾濫をしなくなった。

というより、流れが止まって池になった。

村の人達はとても喜んだ。

しかし、ある問題が起きた。

池に近づいた人は必ず怪物を見て死ぬんだ。

人々は怪物を柱と呼ぶようになった。

明治になってからようやく金網ができてあまり人は池に近づかなくなったと言う。

***************

「お祓いはするけど、多分君達は長生きできないと思う。」

お坊さんは冷たく言った。

お祓いをした後、俺達は車で家まで送られた。

お爺さん達は警察が事故死として処理したらしい。

《追記》

Aが死んだ。

事故死だったそうだ。

俺もそろそろ死ぬと思う。

今、ビクビクしながら生きている。

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