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中編5
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Sの悲劇 ~悪癖~

前回に引き続き、後輩のSに起こった悲劇をご紹介します。

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とんでもない悪女と結婚し、多額の借金を背負わされ離婚したS…

悪いことって続くようで、離婚の傷も癒えないうちに、また新しいトラブルに巻き込まれてしまったんです…

まぁ、自業自得の面はありますが…

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6月ももうすぐ終わる頃だった…

Sから電話が来た。

俺『もしも~し、珍しいな電話なんて。』

S「イカさん… オレ、ヤバいことになってるかも知れないッス…」

俺『はっ?』

S「なんか変なもの連れて帰っちゃったかも…」

俺『お前、また変なとこ行ったんか?…』

S「………………」

俺『おいっ、S!

……とりあえず、行くわ… 今、家か?』

S「はい…」

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このおバカなS… もともと心霊スポットとかに行くのが趣味だったんだ…

1度、俺と一緒に釣りに行った時に恐ろしい目に会い、それ以来その悪癖に別れを告げたはずだった…

それなのに、何故?

そんなことを考えながら、俺は車でSが独りで暮らしているアパートに向かった…

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駐車場につき車を停めて、Sの部屋に向かう…

玄関脇のチャイムを押そうとしたとき、全身に電気が走ったような感覚に陥った…

息が苦しい…

ここに入ってはいけない…

本能がそう言っている気がした…

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だけど、俺の中にはSに対する負い目があった…

離婚の件に関してだ…

結婚式に視たことを正直に伝えていれば…

そんな後悔の念から、もしSに何かあったら親身になって協力をしてやろうと決めていた…

今がその時なのかも知れない…

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ピンポーン…

S「…誰?」

俺『S、大丈夫? 俺だよ。イカだ…』

S「!?、イカさん、ありがとう、来てくれたんですね… 今、開けます…」

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玄関を開け、顔を出したSの目は真っ赤に腫れ上がっていた…

(コイツ… 泣いてたんか? ついこの間もこんな顔を見た覚えがあるなぁ…)

なんて思いながら靴を脱ぎ、Sに続いて部屋に入った…

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…異様だった…

見た目はいつもの独り暮しのSの部屋だ…

…だけど…、寒い…

梅雨真っ盛りの、高温多湿なこの時期に…

…そして…、ひどい匂いだ…

ゴムが焼けているような、むせるような匂い…

目と鼻の奥にツンッと来る…

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俺『外で話そうか…』

S「えっ…、でも外は怖くて…」

そう答えるSを睨み付け、有無を言わさず外へ連れ出した…

自分の車に乗り込むと、Sも観念したのか落ち着きなく周りを見回しながら助手席に乗り込んできた…

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車を発進させ、タバコに火を着けてSに話しかけた…

俺『何があった?…』

それに答えるようにSは、その日の出来事を語り出した…

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その日は、朝から湿度が高く蒸し蒸しする日だった。

ただ、雨は降ってなく、時おり太陽も顔を出す梅雨には珍しい日だった…

海専門の俺とは違い、川釣りもするSは鮎釣りの支度を整え意気揚々と車に乗り込んだ…

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お気に入りのポイントに入り、釣りを始める…

ウェーダーと呼ばれる胸まで一体となったゴム製の胴付き長靴を着込んで川の流れの中に入って行った…

…全く釣れない……

少しずつ移動を繰り返して、いつの間にか水深の深いところまで来たようだ…

流れも結構強い…

ヤバいかな?そう思って再び移動しようとしたときだった…

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不意に足下をすくわれた…

視界が回転する…

川岸の方角を見ていたはずだった…

何故か今は水面越しに空が見える…

慌てて足をついて立ち上がろうとする…

右足は付いた… だけど…

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左足が川底に付くことはなかった…

それどころか、何かに引っ張られているように水深の深い方へと流されていく…

Sの感覚では、流されていくのではなく、左の足首を掴まれ、そちらへ引きずり込まれていく感じだったらしい…

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左足を掴まれ、引っ張られる。

右足一本で川底をケンケンするようにして必死でバランスをとりなんとか水面から顔を出す…

急に引っ張られる力が強くなり、ついにバランスを崩した…

顔も川に浸かり、視界に入ってきたのは川底だった…

必死にもがき顔を出そうとするが、相変わらず強烈な力で足を引っ張られていた…

…水深の深い方へと…

…そして川底の方へと…

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顔が川底の砂に当たった時、不意に足を引っ張っていた何かが足首を離した…

最後のチャンスだと、必死に浮上しようともがく…

ウェーダーの中にも水が入ったんだろう… 重くて自由が効かない…

(オレ、ここで終わるんだ…)

覚悟したらしい…

次の瞬間… 今度は背中の辺りを掴まれた…

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『おい! 大丈夫か?』

背中を掴んだのは、近くにいた釣り人だった…

深場に向かうSに何度か声をかけたが、全く反応がなく、独り言を繰り返すだけだったので、気にしていたら急に沈んだので助けに来てくれたらしい…

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助けてくれた釣り人に丁寧にお礼を言って、Sは帰宅しようとした…

土手に停めてある車まで帰り、ウェーダーを脱いだとき…

左足にハッキリと付いた手形を見つけた…

よくみると、丈夫なはずのゴム製のウェーダーの左足の部分には、何かに裂かれたように穴が開いていた…

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そして、家に帰ると再び痛みに襲われ、水ぶくれのように腫れ上がって熱を持ち始めた…

その上、窓の外から人の声が聴こえ始めたらしい…

…運のいい男だ… 悔しや… 悔しや…

と繰り返し…

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俺『ホントにそれだけか? 他にもなんか心当たりがあるんちゃうん? あそこから連れ帰ってしまったかも? とか…』

S「………………」

俺『今さら、隠してもどうもならんやろ!』

S「…実は……、この間……」

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ようやく話し始めたS…

それによると、飲み会で知り合った女の子を連れて友人と男女4人で出るって噂の廃ホテルに行ったらしい…

いい格好しようとして、室内に転がっていたサッカーボールを蹴った途端に誰かの声や、原因不明の物音がしだして慌てて逃げ帰ったらしい…

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知り合いの寺へSを連れていった…

何かはハッキリと分からないが、何体か憑いてるようだと言われた…

特に茶髪の女の怒りの念が恐ろしいと…

自分にも手におえないと…

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俺は、この忙しい時期に仕事を3日ほど休み、知り合いの坊さんに紹介された京都のとあるお寺にSを連れていった…

Sの会社への休暇の手続きも代わりに俺がやった…

結局Sはその後、そのお寺に預け、俺は独りで地元へ帰った…

1週間後、Sももう大丈夫だからと言ってこちらへ帰って来た…

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当然、帰って来たSには俺からの説教が待っていた…

Concrete
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