中編4
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被害妄想

「最近、誰かに見られてる気がするんだよね…」

出た…

僕はこんなことを言う彼女にウンザリしていた。

彼女の名前はミコ。

僕の交際相手だ。

初めて会ったのは大学の食堂。

テーブルが空いていなくて、食べ物のトレーを持ったまま慌てている彼女を見て、僕のテーブルの空いている所に座らせてあげたら、その時メアドを交換して、そのまま親しくなって付き合うことになった。

ミコは可愛くて料理もうまい。

でも、一つだけ欠点があった。

被害妄想だ。

最初は誰にでもあることだと思っていた。

でも、あまりにもひどいため、普通ではないことに気が付いた。

言う台詞はいつも決まって「誰かに見られてる」こと。

現実味があるならまだしも、どれも意味がわからない。

「聞いてる?」

「あ、うん聞いてるよ。でも今日は帰ってもらえないかな…。」

「いいけど…。私の話信じてないの?」

「そんなこと無いよ!」

「ふ〜ん。」

その日は彼女には帰ってもらった。

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それから一週間。

彼女から電話がかかってきた。

「はい。〇〇です。」

「〇〇君?ごめんね、こんな時間に。でも、言わなきゃいけないことがあるの。」

そう言う彼女の声は震えていた。

泣いていたのかもしれない。

「どうしたの!何かあったの!?」

僕は彼女の様子からとても心配になった。

何かあったのか…

「私の家の中から、知らないカメラが…、出てきたの…」

すぐに被害妄想だと分かった。

そう分かると、安心と同時に怒りが込み上がって来た。

心配したのに。

「そんなことのために、こんな夜遅くに電話をかけてきたの?はっきり言うけど、嘘でしょ?被害妄想でしょ?」

「違う!違うよ…。被害妄想なんかじゃ無いよ…。」

ミコが泣きながら呟く。

「じゃあなんなんだよ!カメラなんてあるわけねえだろ!」

僕の怒りはMAXだった。

謝ってくれるかと思いきや、罵声が飛んできた。

「本当だって言ってるじゃない!ほら、ネットにも私の映像出回ってるよ!〇〇君は信じてくれるかと思ったのに!自殺してやる!死んで、お前にも同じ思いさせてやるよ!」

「ちょっと、お…」

僕の話終わる前に電話は切れていた。

自殺なんて嘘に決まってる。嘘に…。

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それからしばらくして、彼女が自殺したということを聞かされた。

ネットには、誰が犯人だかは分からないが、彼女の映像が流されていた。

信じられなかった。

僕のせいだ…

葬儀の最中で、彼女の母親は号泣していた。

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葬儀が終わり、家に帰ると、すぐに異変を感じた。

誰かに見られている気がしてならない。

人間、目に見えなくても気配は感じる。

誰かに相談しようにも、被害妄想と言われればおしまいだ。

彼女もこんな気持ちだったのかな…。

気配は翌日も、その翌日も続き、毎日続いた。

僕は頭がおかしくなりそうだった。

家にいるときの大半は頭を掻きむしっていた。

精神科に行き、治療してもらおうにも、診断結果はいつも「重度の被害妄想」だった。

この家が悪いと思い、引っ越しをしてみたが、変わらない。

僕は逃れられないという絶望感に襲われた。

そんなある日、僕は彼女の家に行くことにした。

彼女の家族に謝罪し、罪を償えば、この視線も無くなると思った。

ピンポーン

彼女の家のチャイムを押す。

「はい…」

彼女の母親が出てきた。

「ああ、〇〇君。どうしたの?とりあえず入って。」

家に入った瞬間に異臭が鼻をついた。

リビングに入るとありえないものがそこにはあった。

死体だった。

男性の死体のようだった。

「驚いた?」

後ろで母親の声がした。

「あの子の映像流した犯人誰か知ってる?あの子の父親よ。信じられないでしょ。あいつは自分の娘で金儲けしたってわけ。だから殺してやったわ。あなたの感じている視線は全部私の仕込んだカメラよ。葬儀が終わった後、すぐにあの子の持っていた合鍵を使ってカメラを仕掛けた。簡単だった。あなたがあの子にあんなこと言ったから…。あなたにもあの子が死んだ責任がある。あの子と同じように狂って欲しかった。」

僕は彼女の父親の死体を見ながら聞いていた。

頭がぼんやりして何も考えられない。

「どうしてこんなベラベラ喋ったと思う?私にも分からない。でも、一つだけわかることは…」

母親はキッチンに近づくと包丁を握った。

「お前を殺す!」

母親はそう叫ぶと包丁を持って走ってきた。

終わりか…。

時間が止まって見えた。

ふと、天井を見ると彼女が笑っていた。

満面の笑顔だった。

あの視線がカメラのものか、分からなくなった。

彼女も僕の死を望んでいたのか。

これも「被害妄想」だな…

Concrete
コメント怖い
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追記…エッ!私の周りにもって…(汗)。
怖いな…はとさん…

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ホント、お久しぶりです( ´ ▽ ` )ノ。
はとさんの意見、すごく参考になります!本当にありがとうございます!
これからも頑張ります(笑)

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