私が勤めているお菓子工場の職場にはニコニコさんという、いつもニコニコしている寡黙な人がいた。
仕事内容は工場のラインが正常に動いているか確認し、問題が起きたときはその対処をするというものだった。
ニコニコさんは私の3つ上の先輩ではあったが、仕事はあまりできるという人ではなかった。
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勤務体系は工場が夜も稼働しているので社員のニコニコさんがメインで夜勤をし、もう一人はシフトで交代で夜勤に入るというツーマンセルをとっていた。
正直、私はニコニコさんが気持ち悪くて仕方がなかった。
いつもニコニコしているのに、その目の奥は笑っていないことは明白だったからだ。
なのでニコニコさんと夜勤をする日は、悪夢の日と自分の中で決めていた。やはり何を考えているのか分かりづらい人は怖い。
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ある日、夜勤中に製造ラインが止まるという問題が起きた。その日は私が夜勤だったので、ニコニコさんと問題解決のため製造ラインをくまなくチェックした。
どうやらプレス機が誤作動を起こして緊急停止したようだ。
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私は専用の工具でその原因を取り除き、後は稼働するだけとなったときに悲惨なことが起きた。
何を思ったのか、ニコニコさんが私がまだ作業している最中に稼働スイッチを押したのだ。
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shake
ぐっちゅり・・・・・・
「あ”あ”ああああああああぁあああっぁぁああっ」私は悲鳴にもならない声をあげた。
私の右手は見事プレスされてしまった。
プレス機から手を抜くと骨が飛び出していたり、血がぐっちょりだったりで惨劇の後そのものだった。
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ニコニコさんはすぐに駆け付けてきてくれたのだが、大丈夫か?という言葉に反して、いつものようにニコニコ笑っていた。
・・・・・私は見てしまった、その目の奥で本当にニコニコしているのを。
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病院に行くと、神経もやられておらず、複雑骨折ということで3か月の全治を言い渡されただけであり、不幸中の幸いだった。
ニコニコさんはというと、普段からの勤務態度等含め、今回の件で懲戒解雇となった。
解雇通達の際も、人事の人曰く、ニコニコとしていたそうだ。
にこにこぷーん-完-
作者ジンジン
リアルにこんな人いたなぁ