今から20年ほど昔、四国のとある場所で珍事が起きた。
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土地の再開発で畑をショベルカーで掘り起こしているときだった。
「おーい!なんか埋まっているぞ!」
第一発見者の作業員が叫んだ。
それは鉄の巨大な桶で、人が1人収まるほどのものであった。
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地中から掘り起こし、よーく見てみると大昔の棺桶のようなものであると分かった。
ただし、その地方では木でつくられた棺桶は慣習であったが、
鉄のものは今までにあったことはなかった。
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中を確認するためには、バールが必要になった。
しかし、きっちりと溶接されていてこじ開けることはできなかった。
そうこうしているうちに、どこから嗅ぎつけたのか歴史学者やその筋の研究者が続々と工事現場にやってきた。
実に桶が発見されて1日も経ってはいなかった。
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桶はとある大学の研究室に移された。
中身をまずは赤外線や放射線で確認するためである。
しかし、中身は空ときたものだから、皆が拍子抜けした。
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期待倒れで研究者は溶接を外し、中を開けてみた。
・・・すると、中からミイラ化した人間がすっぽりとあぐらをかくように収まっていた。
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いわゆる即身仏かとも思われたが、驚くべきことに息をしている。
研究者がその吐息をよく確認しようと耳をミイラの口元に近づけた瞬間であった。
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「ガブッ!!!」
研究者の耳は嚙み千切られ、
「くちゃくちゃ」と音をたてながら、咀嚼された。
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痛みと恐怖で研究者はとっさに、ミイラの顔をはたいてしまった。
するとはたかれた顔のあごの部分が勢いよく宙を舞った。
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その後、ミイラは動くことはなかったが、今でもその大学では標本として飾られている。
ちのみご-完-
作者ジンジン