「今年の冬は本当に寒かったな」
近所の繁華街を歩きながら雄一は独り言で呟いた。
家に帰るまでの間にしょぼくれた公園がある。
調度アパートとアパートの間に隠れるように設置されている。
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公園の前まで差し掛かり、
「昔はここでよく遊んだなぁ」
と過去を思い出しながら感慨にふけっていると、
「私とよく遊んだよね」
「!?」
「忘れちゃったの?美紀よ」
突然、後ろから女に声をかけられた。
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美紀・・・美紀と言えば確かに昔ガキの頃によく遊んだ記憶がある。
「その、確かに覚えてはいるけど、いきなりで驚いたよ」
「それもそうね、それにもう十年以上経ってるからね」
雄一はさらに思い出しながら美紀にいった、
「昔はよくあの滑り台で一緒に遊んだよな」
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・
・・
・・・「そうか・・・」
雄一は何かを納得したように呟いた。
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今日は美紀の命日だったことに雄一は気づいた。
調度15年前、滑り台で一緒に遊んでいるときに美紀は台から落ちて死んだ。
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美紀の方に顔をやると既にその姿はなかった。
「大丈夫、忘れてないから。俺が美紀を好きだったことも、美紀が俺を好きだったことも」
また独り言を呟いて家路に着こうとしたときだった、
生ぬるい風が頬をかすめ、耳元で囁かれた。。
「助けてほしかった・・・」
と。
滑り台-完-
作者ジンジン