【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

中編3
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長い旅

「もしもし、出前お願いします。中華そば一人前、大盛りで。え?こちらスパゲティ屋?すみません間違いました!」

ガチャッ

おっと、これは失礼。

お久しぶりです。恐怖の案内人キム・コンボです。

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世の中には電話を使った様々なサービスが存在します。

モーニングコールをしてくれるサービス。

指定時間に無言電話が来るサービス。

占いをしてくれるサービス。

果ては、アニメのキャラクターの声が聞ける、なんていうのもあります。

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もし、電話の内容を聞き、その通りにすれば自分の願いが叶うサービスがあるとしたら…

あなたは、やってみたいと思いますか?

プルルルル

「もしもし?」

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「あなたは長い旅に出なくてはなりません。おそらく困難な旅になるでしょう。しかし、その旅の中であなたは今まで知らなかった「新しい自分」に出会う事が出来るでしょう。

旅の中で、あなたが守らなければならない事は、ただ一つ…」

ガチャッ

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「!?」

「タケル!」

不意に電話を切ったのは、母親だった。

そのためタケルは電話を最後まで聞くことができなかった。

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最近小学生の間で密かに流行っている、「最後まで聞き、その通りにすれば願いが叶う」という秘密の番号。

数日前、いやそれよりも前から、タケルはこの番号にかけて、メッセージを聞き続けていた。

しかしフリーダイヤルではなくナビダイヤル。

長時間の通話で、通話料は異様な額になっていた。

それに怒った母が、電話をやめさせたのだ。

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タケルは母親に説教され、二度とあの電話をしないことを固く約束させられた。

しかし、タケルの心は既にここに非ずだった。

毎日、勉強勉強とひたすら言ってくる両親。

愛想のない先生。

自分のことをいじめてくるクラスメート。

もうこんな人生まっぴらだ。

僕は旅に出て、新しい自分を見つけるんだ。

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深夜、両親が寝静まったのを見計らって、タケルは家を出た。

いつもの町、いつもの道、いつもの山。

見慣れた光景が次々に通り過ぎていく。

しばらくして、見知らぬ街にたどり着いた。

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ここはどこなんだろう。

とりあえず、誰かに道を聞こう。

しばらくすると、男性の後ろ姿を見つけた。

タケルは一目散に駆け寄った。

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「すみません、道を聞きたいんですけど」

しかし男性は振り向かない。

無視してそのまま去っていった。

「なんだよ、不親切な人だな」

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しばらくして、今度は女性の後ろ姿が見えた。

「すみません、このあたりにご飯が食べられるところはありますか?」

だが女性もそのままタケルを無視して去っていった。

「まったくもう…なんなんだよこの町の人たちは」

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次は必ず、何か聞いてやろう。

タケルはそう思った。

しばらく歩くと、また人の姿が見えた。

自分とあまり変わらない、幼い少年だ。

「すみません、道を聞きたいんですけど」

だが、少年は答えない。

「すみません!」

タケルは少年の前に立ちふさがった。

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だが、その瞬間タケルは愕然とした。

少年には顔が無かった。

正確には後ろ姿と前の姿が全く一緒だった。

「うわあああああああああああ!!!!!」

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タケルは目を覚ました。

夢だったのだ。

昨晩荷作りをしていて、そのまま疲れて眠ってしまったのだ。

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だが、あまりにも恐ろしい体験をしたせいで、タケルは旅に出るのが怖くなってしまった。

僕には無理なんだ。

いろいろつらいこともあるけれど、今の生活が一番だ。

今を精一杯生きて行こう。

タケルは階段を下りて、食卓へと向かった。

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台所ではお母さんが食事の支度をしていた。

もう既に仕事に行ったのか、父の姿はない。

「お母さん、おはよう!!!」

しかし、振り向かない。

黙々と調理をしている。

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そ、そんな…まさか…

慌てて母のもとに駆け寄るが、一向に振り向かない。

「お母さん!」

思わずタケルは、力を振り絞って母の体を裏返した。

「うわあああああああああああ!!!!!」

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「この旅においてただ一つだけ守って欲しいこと。それはこの旅の最中、ほかの人とはだれ一人口を効いてはいけないということです。

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この旅は新しい自分を見つける旅。自分の力だけで先に進んでいってください。そうすれば、あなたは新しい自分を見つけることが出来るでしょう。それでは、ご武運を…」

ツー…ツー…ツー…

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