絵里の姿が見えなくなって1週間
彼女は夢にも出てくることはなかった。
(結局俺には何も出来なかったのかな。)
待っていれば戻って来ると思っていたが絵里は気配すら感じさせてくれなかった。
窓の傍に置かれた木彫りの像を見てため息をつく。
(絵里は何でこの像に興味を示していたのだろうか。)
像を手に取り観察してみる。
どこにでもあるような観音様の木像。
ふと足の裏を見てみる。すると〇〇神社と刻印されていた。
(ここで作られた像なのか?…見覚えがあるような気がするが…)
気になった私は夕飯の準備をしている母に聞いてみる。
「あの木彫りの像、どこから持ってきたの?」
「あぁ、あれね。優が捕まってる間部屋の整理してたら押し入れから出てきたのよ。あんた、もう少し大事に扱いなさいよ。山本さんから預かってるものなんだから」
「山本さん?だれ?」
「覚えてない?優が7歳の時。家に知らない人が居るって言って毎晩泣いてたのよ?それで困ったお父さんが調べて山本さんていう神主様のところへ行って借りてきたのよ。あの木像は。」
nextpage
「ふーん。覚えてないな。」
(とゆうか小さい頃にも幽霊見えてたんだな、俺)
「ま、それからその知らない人は家に出なくなったみたいだけどね。だから大事にしなさいよ。」
「わかったわかった。ありがと」
結局何も思い出せなかったが、あの像が何かしら力を持ってるのは確かなようだ。
もしかして絵里もそれで消えてしまったのかも…
そう思い部屋に戻ろうとした時、
nextpage
「あー、そういえば」
私が振り返ると母が顎に人差し指を折り当てた。
「山本さんとこの子、元気かしら。覚えてない?優の二つ下の女の子。名前何て言ったかしら…」
nextpage
私は続きを聞きたくなかった。もちろん何も思い出してはいない。
しかしこの悪い予感は家畜小屋の時感じたものとよく似ていた。
勘が鋭いのをこんなに憎んだことは無い。
「そんな子知らないよ。」
母は怪訝そうな顔をしたがキッチンに振り返り言った。
「あんなに仲良く遊んでたのにね〜。山本さん家行くといつも冷蔵庫から炭酸水勝手にとって「子供の飲むものじゃない!」って二人共よく怒られてたじゃない。」
nextpage
この時何故私があの子を救ってあげたかったのかわかった気がした。
nextpage
続く
作者amane