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中編4
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いたずら

ある小学生の話。

とてもいたずら好きな彼は、学校のトイレ掃除のときに、新しいいたずらを思いついた。

それは、掃除用具の中に必ずある、ゴム手袋を使ったものだ。

単純である。

便器の穴に、ゴム手袋を立てるように置いておく。

ただそれだけだ。

しかし、効果は絶大だった。

トイレのドアを開けたとき、便器の穴から、脱力したような腕が飛び出していたら、誰だって驚く。

しかも、ゴム手袋は大抵2組くらいあるので、ほとんど全ての便器に仕掛けておくことができた。

ちょっとした隙に仕掛けておくだけで、時々トイレから、誰かの絶叫が響いてくるのがたまらなくなり、病みつきになった。

いたずらは学校だけにとどまらず、人の集まるデパートや飲食店でもやるようになった。

隙をみて、女子便所に仕掛けると、より一層効果があった。

男性と違って、100%大便器を使うし、リアクションがいい。

女性の甲高い悲鳴には、快感すら覚えた。

しかしある日、たまたま見たテレビのニュースで衝撃を受けた。

いつも行っているデパートの女子便所で、女性がショック死しているのが発見された、というものだ。

「悪質ないたずらによる可能性…」というキャスターのフレーズ…。

その瞬間、身も心も凍りついた。

さすがに罪悪感を覚え、それ以来、そのいたずらをすることはなかった。

しかし、いたずらの主が自分であるとは、怖くて誰にも言えなかった。

ある日の放課後、学校に忘れ物をしてしまったことに気づいた彼は、その日のうちに取りに行かなければならなくなった。

日はすでに暮れかけていて、気は進まなかったが、やむを得ない。

自転車にまたがると、急いで学校に向かった。

ようやく学校に到着した頃には、すっかり日も暮れ、辺りはすでに暗くなっていた。

自転車を降りた彼の目の前には、不気味にたたずむ夜の校舎が…。

残業している先生はいなく、正面玄関も職員玄関も施錠され、照明も全て消されていたが、幸運にも校舎裏の通用口だけは開いていた。

どうやら、教頭先生が見回り中らしい。

「ちょうどいい。今のうちに」と、忘れ物を取りに、大急ぎで教室へ向かった。

校舎に入ると、あちこちにある非常灯が、緑色の淡い光を放っていて、照明がなくても、廊下を進んでいくことはできた。

しかし、その仄かな明るさが、夜の校舎の不気味さを、より一層際立たせ、彼にとっては、決して頼もしい明かりではなかった。

なんとか教室に到着した彼は、無事に忘れ物を手にすることができた。

すると、少し緊張がほぐれたためか、急にトイレに行きたくなってしまった。

しかも、よりによって、大の方…。

当然、躊躇したが、家に帰るまで我慢できる自信もなく、仕方なくトイレに向かうことに。

トイレに入ると、冷えきったタイルが放つ、ヒンヤリとした独特の冷たい空気が、彼を包み込んだ。

寒々しさを感じたことによって、尿意も加わり、もともとあった便意も、ますます加速することとなった。

襲ってくる便意をこらえながら、片手でズボンを下ろす準備をして、もう一方の手をドアノブにかける。

そして、ドアを開けた、その瞬間…。

「!!!!!!」

心臓が止まる、とは、このことだ。

フタの開いた便器の穴から、人間の腕が飛び出しているのだ。

まるで、死人の手のように、生気を失い、不気味に脱力している人間の腕が…。

しかし、彼にとっては見慣れた光景だった。

なにせ、彼自身が考案し、一時は病みつきになっていた、あのいたずらだったからだ。

「一体誰だよぉ!しかもこんなときにぃ!」

間の悪いいたずらに怒りが込み上げてきたが、ここで腹を立てていても仕方がない。

いたずらにビックリしたせいで、便意が限界に達してしまったのだ。

急いでゴム手袋をどけようと手を伸ばす。

「!!!!!!」

再び衝撃が彼を襲った。

ただのゴム手袋だと思っていたその手…。

急に動いたかと思うと、次の瞬間、彼の腕を掴み返してきたのだ。

あまりの恐怖に、声すら出すことができない。

とにかく逃げようと、彼は必死にもがいた。

みじめにも、糞尿を漏らしながら…。

しかし、腕の力はあまりに強力で、まともに身動きすらできない。

なんとか引き剥がそうと、もう一方の手で抵抗をしたとき、彼は気づいた。

ゴム手袋だと思っていたそれは、よく見れば、人間の腕だった。

指先には、長く伸びた爪もあり、抵抗すればするほど、指先が深く皮膚に食い込んでいった。

彼の腕から滴り落ちる鮮血。

彼は完全にパニックに陥っていた。

そのとき、便器の穴の底深くから、女性のうめき声のようなものが…。

その声は、怨めしさを込めて、彼に向かい、絶叫した。

「お前かぁぁぁ!!!!!!」

Concrete
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