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ANSWER 【A子シリーズ 番外編】

長編14
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ANSWER 【A子シリーズ 番外編】

大学卒業まで残りわずかの日々を慎ましく過ごしていた頃のこと。

講義を終えた私が帰宅すると、唐突に電話が鳴りました。

着信画面に表示された電話の主に、珍しいと思いつつ電話に出ると、相手は切羽詰まっている感じで話し出します。

「先輩!!さや子ちゃん知りませんか?」

「いさ美さん?どうかしたの?」

電話の向こうのいさ美さんは不安感いっぱいの声で言いました。

「さや子ちゃんが連絡もなく3日以上も大学を休んでるんです……さや子ちゃん、電話しても電源が切れているのか、出てくれないし……」

「心当たりはないの?」

いさ美さんを落ち着かせようと、私は穏やかなトーンで話しますが、いさ美さんはだんだん泣きそうな声になっていきます。

「何処かの井戸とかでしょうか……」

いさ美さん……冗談だよね?

そう思いましたが、いつも真面目な、いさ美さんがジョークを言う訳がありません。

ガチめのトーンで言ったので、私は「それはない」と即答しました。

「とりあえず、月舟さんの家に行ってみよう?私、A子も連れてくから、ね?」

そう言って いさ美さんを安心させてから電話を切ると、私はすぐさまA子に電話します。

「何?」

A子は私からの電話にだいたいワンコールで出てくれますが、「もしもし」は絶対に言いません。

私が事情を話すとA子は一言「分かった」と言い、電話を切ろうとしたので、私は慌てて言いました。

「迎えに行くから、何処にいるか教えて」

遅刻されると困るので、待ち合わせは何としても避けねばなりません。

私はA子の所在を聞くなり、すぐに向かいました。

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A子を拾い、月舟さんの家に行くと、いさ美さんは既に到着しています。

「先輩!!」

私達に気づいたいさ美さんは私達に駆け寄ると、さらに衝撃的な一言を呟きました。

「先輩……雪先輩もいなくなってるらしくて、雪先輩の同期の方が部屋を訪ねていました……」

雪さんまで!?

それを聞いた瞬間、私の背筋に冷たいものが走ります。

「どうやら、ツッキーもユッキーも同じことに巻き込まれたみたいだね」

ユッキーって……。

嫌な予感の上に、A子が不穏なことを言い出しました。

「まずは月舟さんの家を訪ねてみよう!話はそれからだよ」

私達三人は月舟さんの家に行き、ご両親に理由を話すと、月舟さんのお母さんが部屋を見せてくれました。

お母さんは娘がいなくなったのに、全く心配している様子もなく、カラカラ笑っています。

何でも、月舟さんは小さい頃から割りと迷子になるタイプだったそうで、今では迷子になることはありませんが、フラッと一人旅に出ることが多いらしいです。

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月舟さんの部屋は、落ち着いた感じのインテリアが並び、当たり前ですが魔導書や水晶玉などはありませんでした。

私達は散らかさないように手分けして手掛かりを探し始めます。

いろいろ見て回りますが、手掛かりらしいものは見当たりません。

「一人旅に出たのかな」

軽い私の呟きを、いさ美さんが強めに否定します。

「さや子ちゃんは黙って何処かに行くような子じゃありません!!」

「ごめん……」

私が謝ると、いさ美さんは我に返って土下座の勢いで私に頭を下げました。

「申し訳ありません!!わたしったら先輩に何て口を……」

「いいんだよ」

私のセリフを私より先にA子が言います。

「うん、気にしないで」

セリフを取られた私は、A子に乗っかる形になってしまっていることに、些か納得いきませんでしたが、良しとしました。

「いるね……間違いなくココに……」

A子が月舟さんの部屋のパソコンを見つめながら言いますが、私には意味が分かりませんでした。

「そこのアンタ、コレいじれる?」

A子がパソコンを指差しながら、いさ美さんに言うと、いさ美さんは「はい」と返事をしてパソコンを立ち上げます。

手慣れた感じでキーボードを叩くいさ美さんの背中を私が頼もしく見つめていると、いさ美さんは何かに気づいて振り向きました。

「先輩!!コレ見てください!!」

いさ美さんに促されて画面を覗き込むと、とあるサイトが表示されています。

「ログ解析して、さや子ちゃんが一番最近開いたサイトを調べたんです」

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『コワバナ城からの脱出』

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何かのゲームかな?

そう思った瞬間、グラリと体の中から世界が揺らいだと思ったら、部屋のレイアウトがガラッと変わっていました。

「何?ここは何処?」

西洋アンティークで統一された室内に困惑していると、いさ美さんが壁を指差して言います。

「先輩!!アレは……」

いさ美さんの示した壁には重厚な扉がありました。

扉に近づくと、扉の脇にテンキーが埋め込まれているのが見えました。

「よしっ!!ぶっ壊そう!!」

名案みたいに言うA子を私は慌てて止めました。

「そうやってすぐ壊そうとするの止めてよ!何かあったらどうすんの!?」

烈火の如き私の剣幕に、ばつ悪そうに頭を掻くA子の後ろから、いさ美さんの援護射撃が入ります。

「先輩方!!コレを見てください!!」

いさ美さんの手にあるA4サイズの怪しい紙、そこには赤黒い文字で何やら書いてありました。

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『ここは現世と夢の間の世界。

ここから出るには五つの門を通らねばなりません。

扉の前の謎かけを解き、全ての門を開きなさい。

回答は一度だけ、謎かけのヒントは全て周りにあるはずです。

回答を間違えれば、この世界は閉じられ、永遠に出ることは叶いません。

注意力、洞察力、時には知識を駆使して、この世界から脱出してください。

あなたに神のご加護があらんことを。

案内人 6comment』

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手紙の主の意図は分かりませんが、要するに五問の暗号を解けば、私達は外へ出られるらしいです。

「なるほどね……ツッキーは暗号解読に失敗したってことか」

緊張感のない半笑いで言うA子に、いさ美さんが半ギレで言いました。

「状況はわたし達も同じなんですよ!?」

焦るいさ美さんの肩をポンと叩いてA子が言います。

「大丈夫だよ、こっちには謎解きオタクのネクラなメガネがいるんだから」

「それ、私のことだよね?」

黒ぶちメガネを軽くクイッとさせながら、A子を睨みつけると、A子は苦笑いで「半分正解でしょ?」と言いますが、どっちにしても悪口です。

リズミカルに私をディスったA子に構っている状況じゃないことは重々承知なので、お灸を据えるのは無事に出られた時に考えるとして、まずは暗号の解読に専念することにしました。

私達は扉に貼られた注意書きに目をやり、暗号を声に出して読みます。

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FIRST GATE

扉の鍵

『最初の門 から【二つ以上の贈り物】を受け取れ』

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私が考え込んでいると、A子が声を上げました。

「分かった!!※※※※だ!!」

自信満々のA子に、いさ美さんが訊ねました。

「えっ!?どうしてその番号なんですか?」

いさ美さんの疑問に、胸を張ってA子が答えます。

「アタシの暗証番号」

薄々分かってたけど、A子ってバカでしょ?

呆然とするいさ美さんの何とも言えない表情が忘れられません。

戦力外のA子を無視して、私といさ美さんが考えることにしました。

しばらく注意書きを見つめていると、私に文殊菩薩が降りてきました。

「分かった!!」

私の歓喜にも似た嬌声に、いさ美さんは驚いています。

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「これは最初の門【FIRST GATE】から【二つ以上の贈り物】を抜き出せばいいんだ」

「つまり、【FIRST GATE】の中から贈り物を取り出すということですね!」

「そう!贈り物はGIFT、さらに複数の【S】を付けて【GIFTS】それを数字に置き換えると……」

「62154!!番号は62154ですね!!」

いさ美さんも私の意見に同意したようです。

「アンタに命は預けたよ」

私が緊張しながらテンキーに数字を入力すると、扉の向こうで「カチリ」と錠が外れる音がしました。

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扉を開けると、扉の先はまた部屋です。

「また部屋だよ……」

半ば呆れたように呟くA子を押しながら中へ入るいさ美さんと私。

相変わらず薄暗い室内を所々浮かび上がらせる蝋燭の灯りの中で、いさ美さんが壁に貼られたポスターを指差します。

『エイリアン=ネイラ』

アメリカのB級映画のようなダサいタイトルに、緑色のおぞましい異形の生物が人々に襲いかかっているポスターが、私の背筋に冷たいものを走らせました。

その聞いたことのない映画のサブタイトルも目を引きます。

『頭は数多……なれど、意志は石、それは鉄よりも固く』

A子は首を傾げながら視線を逸らし、前に向けると、ダイニングテーブルにティーセットが載っています。

近くまで行くと、ティーセットには書き置きが添えられていました。

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『第一の門 突破おめでとうございます。

細やかですが、お茶を飲んで一服してください。

もちろん、毒など入ってはおりませんのでご安心を。

飲み終えたカップはお持ちください。

いつかきっと、あなたの役に立つでしょう。

第二の門の突破もお祈りしております。

案内人 6comment』

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いつの間に用意したのか、温かなティーポットからは、湯気と共に仄かに甘い香りが立ち上っていました。

「アールグレイの香りだ」

「いい香りですね」

私は備えてあったティーカップにポットから紅茶を注ぐと、その甘い香りは強く鼻孔をくすぐります。

「アールグレイのロイヤルミルクティとはシャレてるね……ちょっともったいない気もする」

「アールグレイよりアールコールの方がいいよ」

コールタールみたいに言わないでよ……。

バニラの香りのするロイヤルミルクティーを飲むと、この信じ難い状況を少しだけ忘れることができました。

一息ついた私達は、ティーカップを持ったまま第二の扉の前に立ち、気合を入れ直して注意書きに目をやります。

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SECOND GATE

扉の鍵

『【ウキチイシタハナン=?】』

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例によって、扉の横にはテンキーがあります。

「ウキチイシタハナン?何よコレ?」

だから、暗号だよ。

こういう意味をなさない言葉こそ暗号らしくて好きな私は、周りを見渡しました。

ヒントは必ず部屋の中にあるはず……。

私と同じようにいさ美さんも周りを注意深く見ています。

「先輩!!多分ですけどアレじゃないですか?」

いさ美さんは、あの変なポスターを指差して言いました。

私もそう思う。

「頭は数多……意志は石………か」

「分かりました!ATAMAはAMATA!!」

いさ美さんは扉の暗号を見つめて何か考え込んでいると、ニンマリと笑います。

「ウキチイシタハナンをローマ字変換して逆から読めばいいんですよ!UKITIISITAHANANですから、答えは78419です!」

「でかした!よしっ!!番号を入れよう!」

A子がテンキーに手を伸ばすのを遮って、私が代わりに入力しました。

もし、間違えて打ち込まれたら大変です。

テンキーを打ち終えると、少し間が空いてから「カチャン」と乾いた音がしました。

不満げなA子を無視し、私はホッと胸を撫で下ろして扉のノブをひねります。

扉はまたギィ~ッと耳障りな音を響かせながらゆっくりと開きました。

行く先は、また別の部屋に繋がっています。

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ウォールナット製の大きな柱時計の文字盤にはローマ数字が並び、色褪せた金色の振り子が心音のようにチクタクと定期的に振れていましたが、時計の針は動いていませんでした。

西洋のもので統一された家具、調度品に紛れて、ひっそりと壁に掛けられたカレンダーは何故か今年のものです。

「もう4月なんだね」

その傍らの暖炉では、くべられた薪がそろばんのようにパチパチと鳴っています。

「随分と凝ってますね」

部屋の真ん中に鎮座した円卓には、またもティーセットが置かれています。

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『第二の門、突破おめでとうございます。

あなたには簡単過ぎましたでしょうか?

ともあれ、ティーブレイクしてください。

そして、飲み終えたティーカップはお持ちになってくださいね。

必ず役に立つ時が来るでしょう。

ご健闘をお祈り申し上げます。

案内人 6comment』

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一部屋ごとにティータイムがあるのか、とカップに紅茶を注ぐと、爽やかなリンゴの香りが緊張を解きほぐしてくれました。

「今度はアップルティーなんだ」

一息ついて、私達は次の扉の前に立ちます。

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THIRD GATE

扉の鍵

『【軍神の 月に描いた 大十字 柱と梁と 神とを賭けて】』

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扉の横には、テンキーが当たり前のようについています。

「軍神か……」

「毘沙門天とかでしょうか?」

いや、毘沙門天はないでしょ?

いさ美さんと私がハッとして、同時に声を上げました。

「軍神マルス!!」

一人、蚊帳の外のA子は呑気に紅茶を飲んでいます。

「マルスの月は3月だから、そこに大きな十字を書くと……」

私はカレンダーをなぞりながら十字を書くと、A子がカップを持ったまま言いました。

「縦が75、横が105だね」

どうしたA子?

確かに計算は合っています。

「あとは柱と梁と神とをかければいいんですよね?」

いさ美さんと私が同時に暗算を始めた隙に、A子がツカツカとテンキーに数字を入力してしまいました。

「ちょっ……」

止めようとしたものの時すでに遅し、入力は完了しています。

「だから、75×105×3でしょ?23625じゃん」

A子はあっけらかんとしてますが、もう少し緊張感を持って欲しい……。

A子の言葉が終わると同時に、扉の奥で「カチャリ」と閂が外れる音がしました。

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ゆっくりと扉を押し開けると、今までの部屋より広い部屋に繋がっています。

部屋には幻想的な曲が流れていて、疲れた心を癒すようでした。

確か、この曲は『ゴルドベルク変奏曲』だと気づいた私は、部屋に堂々と置かれた物に近寄ってみます。

それは『チェンバロ』でした。

チェンバロの後ろの壁には肖像画が掛けられ、まるで私達を見つめているようです。

右から順に、『バッハ』『ベートーベン』『ブラームス』『メンデルスゾーン』『ワーグナー』。

何れも音楽室で見たことがありました。

チェンバロの楽譜台には、白紙の楽譜が置かれていますが、何やら書いてあります。

タイトルは『The Answer』。

その脇に小さな文字で『composed by 6』と書きかけてありました。

そしてまた、ご丁寧にティーセットが準備してあります。

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『第三の門 突破おめでとうございます。

ようやく半分を解き明かし、残る謎もあと少しです。

紅茶でその疲れが癒えると良いのですが、わたしから出来ることは、このくらいしかありません。

いつものようにティーカップはお持ちくださいね。

更なるご活躍をお祈りしております。

案内人 6comment』

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カップに注ぐ紅茶からは、バラのいい香りがします。

「ローズヒップティー……確か、これって」

一口含むと、鮮やかな赤の広がる庭園を思わせる風味が鼻を抜けていきました。

紅茶でリフレッシュした私達は、新たな扉に向き合います。

やはり、扉の横にはテンキーがありました。

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FORTH GATE

扉の鍵

『【CC0,CAF】旋律を奏でよ』

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「何かお茶ばっか飲んでると、腹がチャポチャポしちゃうね」

A子、状況分かってる?

スーパー呑気なA子を無視して、暗号を見つめる私と いさ美さん。

「いさ美さん、楽器できる?」

「お琴なら少々」

音痴な私が いさ美さんに期待するも大和撫子な いさ美さん。

でも、知識だけならソコソコある私に、再び文殊菩薩から天啓が下りました。

「これ、引っかけだ」

私が呟くと、いさ美さんが後ろから覗き込みます。

「ほら!三文字目のトコ、これってオーじゃなくてゼロだよ……ってことは」

「先輩!!楽譜に書いてあったの覚えてますか?」

「タイトルの『The Answer』のこと?」

私が訊くと、いさ美さんは一度頷いてから言いました。

「その下に小さく『composed by 6』って書いてましたよね?あれは作曲者の名前を書きかけたんじゃなくて、『6で構成された』って意味だと思うんです」

「なるほど!それなら分かった!!この部屋、チェンバロ、肖像画の人物は全てドイツ出身、ローズヒップティーはドイツでよく飲まれている紅茶……これらは全てドイツを連想するものだから、これもドイツ音階に置き換えると……」

「110164……楽譜の通り6桁で構成された答えになりますね」

いさ美さんがテンキーを打ち込むと、扉の向こうで「ガチャン」と鍵が外れる音がしました。

ホッ……。

第四の暗号も無事に解き明かし、いよいよ最後の暗号までたどり着いた私達は、最後の扉を開けます。

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扉の先はエントランスホールになっていました。

もうお茶の支度はされていません。

吹きぬけの高い天井を見上げ、玄関である大きな両開きの扉に近寄ると、扉の注意書きを読みます。

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LAST GATE

扉の鍵

『【既に鍵は揃っている】合言葉で扉を開け』

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これだけ?

扉の横にはテンキーではなく、アルファベットだけのキーボードが置いてありました。

「今まで数字だったのに、今度はキーワードってこと?」

A子がキョトンとしていると、いさ美さんは頷いて言います。

「そうみたいですね……鍵は既に揃っているということは、もうヒントは出し終わっているということなんでしょうか?」

「多分……一発勝負でキーワードを導き出さなきゃダメみたい」

私は今までの部屋の中を思い出して、キーワードに繋がりそうなことを推理しましたが、西洋アンティーク以外、コレと言った共通点は思いつきません。

「これ、いつ使うの?」

唐突にA子がティーカップを振り回しながら言いました。

紅茶が飛ぶから止めなさい!!

いや……ちょっと待った。

各部屋の共通点、『ティーカップ』があった!

「いさ美さん、今までの番号を覚えてる?」

「はい、62154、78419、23625、110164です」

「A子!全部足して!!」

「あ、あぁ……274362だね」

「ありがと」

それを踏まえて私が頭の中で、ある単語を並べ替えます。

『TEACUPS』の文字を数字の順に拾い出すと浮かび上がるのは……『ESCAPE』だ!!

私は急いでキーワードを打ち込みました。

祈るような気持ちと共にエンターキーを中指で叩きつけるように押すと、扉から「ピピピッ」と電子音が鳴ると同時に、ゆっくりと扉が開きました。

扉の外から眩い光が射し込んで、私達の目の前は真っ白になっていきました。

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目が眩むような強い光が落ち着くと、私達は月舟さんの部屋に立っていました。

傍らのベッドには月舟さんが眠っています。

「さや子ちゃん!!」

いさ美さんが月舟さんの両頬に強めの往復ビンタを叩き込むと、月舟さんは意識を取り戻し、いさ美さんに抱きつきました。

「いさちゃん!!」

赤く腫れた頬が痛々しい月舟さんと いさ美さんは抱き合いながら涙を流して喜んでいます。

良かった……。

「ごわがっだよぅ!!ごわがっだよぅ!!」

「よしよし……もう大丈夫だよ」

泣きじゃくる月舟さんの頭を優しく撫でるいさ美さんを見ながら、私は安心からかペタンと床に座り込んで、大きな溜め息を吐きました。

「逃げられたか……」

そう呟いたA子を見上げると、A子はパソコンを見つめています。

私もパソコンに目をやると、画面には『404 NOT FOUND』と表示されていました。

そんなバカな……。

その後すぐ、いさ美さんも調べましたが、あのサイトは見つかりませんでした。

あれは月舟さんの好奇心が生んだ幻だったのか、はたまた誰かが仕組んだ罠だったのか。

今となっては分かりませんが、それからしばらくの間、私が暗号解読をしなくなったのは、また別の話です。

Concrete
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