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中編3
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おいしいパン屋さん

「本場フランスのパン職人が丹精込めて焼き上げました」

今、いわゆる「お取り寄せ」で、とあるパン屋が人気を集めていた。

高温の焼き釜で一気に焼き上げられたパンは、ふっくらモチモチで、一度食べたら病み付きになる…という評判だった。

そのパン屋は店舗を構えず、通信販売のみで商品を取り扱うスタイルで、ほんの数ヵ月前に開業したばかりだった。

初めは口コミで評判が広まり、グルメ雑誌に紹介されたことがきっかけで、一気にブームに火がついたのだった。

都内の大学に通う、仲良し5人組の女子大生グループも、このパン屋の大ファン。

「私はフランスパンが一番好き」

「クロワッサンも忘れちゃいけないよね」

「君たちまだまだ甘いよ。通ならやっぱり食パンよね」

陽気な彼女たちのおしゃべりには、いつもこのパン屋の話題が上がっていた。

そして当然のごとく、いつしか話題は「小旅行がてら、このパン屋さん、見に行ってみない?」という流れに…。

ちょうど5人の予定が合い、次の週末に、その小旅行が決行されることとなった。

パン屋の詳しい住所は、いくら調べても分からず、車で5時間はかかる距離だったが、だいたいの場所は見当がついたため、楽天的な彼女たちは「行けばなんとかなるさ」と、車に乗り込んだ。

「本当にフランス人が作ってるのかしら?」

「江頭2:50みたいなオッサンだったらマジひくよねぇ~」

「ちょっとぉ~!私の大切なエガちゃんを馬鹿にしないでよねぇ~!」

「ひぇ~!アンタ、ファンだったの!?」

そんな他愛のない話題で車中は盛り上がり、長いはずの道のりも、目的地のそばまで来ていた。

「だいたいこの辺だと思うんだけど…」

周囲を見回すと、遥か昔は人が住んでいた集落の様だったが、今では全くその気配はない。

「こんな場所に本当にあるのかな?」

「今流行りのスローライフってやつ?」

「ここまで人っ気がないと、不気味なだけでしょ…」

嫌な予感を感じ始めた彼女たち…。

しかし、そんな彼女たちの鼻を、かぐわしい香りが、かすかにくすぐった。

「お!この香りはもしかして…」

香りが漂って来る方向へ、車を走らせる。

「あったぁ!!あれ、そうじゃない?」

目的のパン屋は、そこにあった。

ちょうどそのとき、仕事がひと区切りついたのか、建物の中から、パン職人らしき男性が姿を見せ、陽の光を全身で受け止めるように、大きく背伸びをしていた。

その姿は、いかにも本場フランスのパン職人という雰囲気を醸し出していた。

カーネルおじさんとジャムおじさんを足して2で割ったような風貌とでも言おうか。

決して、江頭的な要素はない。

パン職人は、彼女たちの視線に気づくと、いかにも優しそうな笑みを満面に浮かべた。

その表情に、彼女たちの不安や緊張も、一気にほどけた。

皆、お返しと言わんばかりに、若さ弾けるような笑顔で、パン職人のもとへ近づこうとした…。

が、次の瞬間、彼女たちの最高の笑みは、一瞬にして凍りつくこととなった。

なぜなら、パン職人が出てきた建物はどこからどうみても…

古ぼけた火葬場だったから…。

そして彼女たちは、車を降りることなく、来た道へ車をUターンさせた。

帰りの車中は、誰一人として口を開くことはなく、行きの何倍にも移動時間が長く感じられた。

Concrete
コメント怖い
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@五右衛門 さん古い投稿なのに評価していただき感謝です♪
あまり高い評価をもらっていませんが、自分の中では気に入っている作品のひとつです(*^.^*)

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過疎地の町興し
廃施設の再利用‥‥

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行きはよいよい、帰りは怖い

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